42話 仲間
開けた場所に来ると周りの安全を確保してからお互い武器を構える。
セオドアは女性にしてはゴツイ剣を背負っていた。
引き抜くと重量もさることながら長さもある。
振り回されただけで周りにいる敵が一気に薙ぎ払えるのだろう。
「凄いですね?」
「何そんなに悠長にしてるんだい?あんたの武器はその剣かい?」
「えぇ、まぁ。そんなところです」
もちろん、話しているうちにこっそり鑑定をかけて相手の攻撃
特性や、得意な手法を何度か覗き見ていた。
もしこれが神官などならば、きっと鑑定をかけただけですぐに
見破られていた事だろう。
「その剣は特注品かい?それともダンジョンドロップなのか?」
カイトの手に持っている一見普通の剣に見えるものをメンデが
じっくりと観察してした。
そして…バチッ何かが弾ける音がしたのだった。
「なんとっ!君、魔法師なのかい?」
戦闘が始まる直前にいきなり驚きながら言うメンデにセオドアが
眉間に皺を寄せて睨みつけてきた。
「あんた私を馬鹿にしてるのかい?魔法師が剣を構えるのかい?」
「それは戦ってみればわかるんじゃないんですか?」
カイトが言い放つと、ニヤッと笑い、一気に踏み込むと駆け出して
いた。
動きが見える。
薙ぎ払われる剣の先から全体がどう動くのかが分かるのだった。
魔力の量で次にどんな攻撃が来るか予想もつく。
そして、地面に叩きつけるような攻撃の直前、魔力が一気に膨れ上
がった。
「これはっ……」
すぐに距離を取ると、その場から退いたのだった。
ドォーーンっと地面が割れて、前方に石礫が飛び散った。
その頃にはカイトは前にはいなかった。
素早く後退し、回り込む。
土煙りが上がっているうちに、背後に回ると剣をセオドアの首元に
ひたりと当てがった。
「これで、僕の勝ちですね?」
「なっ……どうやって………まぁ、そうだね。私の負けだ!」
完全なまでの、セオドアの敗北だった。
冒険者は一対一で戦う場面なんて滅多にない。
が、実力を図るにはそれが一番簡単な方法だった。
「それにしても、あんた強いね〜。それで魔法まで使えるんだろ?」
「まぁ、少しですが……」
「それは心強い!メンデも見習いな?」
「はぁ〜、そうですね。ですが、カイトさんはどうやってここまで
強くなったんですか?誰かに教えを乞うたというか……そこまで
教えられる人なら、きっと有名人でしょうね〜」
「あ……ははははっ……はい、師匠はいるにはいるんですが……」
「ん?」
「ちょっと偏屈な人なんです。」
そう言うと不思議がられたのだった。
洞窟の最奥ではリリーが盛大なくしゃみでもしている事だろう。




