34話 決意
ボスを生き埋めにしてしまったせいでボスのコアを取り出す事
はできなかった。
だが、ダンジョンクリアの情報はギルドまで届いていたのだっ
た。
それはこの街ロイエンならではなのだろう。
ダンジョンが攻略されるといち早く門番している衛兵からギルド
と領主へと連絡が行くのである。
なぜならば、ダンジョンボスのドロップは貴重な物が多く、領主
自ら買い取る為でもあった。
このロイエンの街の領主オデンは数十年ぶりの攻略に胸踊らせて
いた。
「今回はどんな冒険者が攻略したんだ?褒美と買取り価格をアッ
プしてやってもいい、絶対にドロップアイテムを回収するんだ!
いいな?」
「はい、しかし……冒険者が売らないと言ったらどうしますか?」
ロイエンのギルド長タークはオデンに伺いを立てる。
もちろん、冒険者はお金目当てなので売らない選択はないのだが、
たまに、せっかくの戦利品だしといって、記念に持つ者もいるのだ。
前に一回勇者パーティーがそうだった。
スタンピード前で、忙しなくなった時に、たまたま通りかかった勇者
パーティーがダンジョンボスを倒して事なきを得た際、戦利品を売ら
ず、自分の武器とした事があった。
三俣の槍だったが、攻撃力が高く、性能がいいと言っていた。
「なんとしてでも奪い取れ。売らないなら…冒険者証の剥奪だと言え
ばいいだろう」
「それは………承知しました」
この街で領主のオデンの言う事が絶対だった。
いくらギルド長と言えど逆らう事はできない。
タークはお辞儀をするとすぐに出て行った。
向かうはギルド会館だ。
クリアしてからもうすぐ1時間は経つ。
攻略したのならすぐに来るだろうと考え、職員にも別室へ通すように
伝えたのだった。
ダンジョン内にいた冒険者全員が一旦外へと出された。
ダンジョンが一回クリアされるとまずは出口へと出される決まりだっ
たのだ。
何人もの冒険者が鉢合わせする中、カイトの姿はそこにはなかった。
「ここは………あれ?どうして出られないんだ?」
ーなんじゃ。挨拶も無しに出ていくつもりじゃったのか?ー
「リリー師匠!そんな事は……でも、どうして僕は出られないんです
か?」
疑問符を投げかけるとリリーが笑いながら説明してくれた。
出口に繋がるポータルを弄ってカイトだけ、はじめにリリーが眠っ
ていた場所へと転移させた事。
そして、ここを出たらすぐに領主の手によって確保されるであろう
事を話したのだ。
「そんな……なら、今出たら強制的に捕まるって事ですか?」
ーそうじゃな〜、助かったじゃろ?ー
「そうですけど………」
ーそれにな、カイト。言っておかねばならん事があるんじゃ。お主
治癒が使えるじゃろう?外に出て他人の前で使うで無いぞ?それ
とじゃ………ポーションももう売るで無いわ。ー
「それじゃ〜どうやって稼げばいいんですか!」
ーなんじゃ?そんな事決まっておるじゃろう。魔物を倒せば良いの
じゃ、どれだけ強くなったと思うておるのじゃ?私の弟子じゃぞ?ー
リリーの言葉に少し納得が行った気がする。
言われてみれば、もう前のカイトのままではないのだ。
魔法も使えるし、剣だって振るえる。
今からどんどん魔物を倒して魔石を交換すれば遊に武器と防具が買える事
だろう。
父親が用意してくれた長年使っていた短剣を武器屋で修理する為に折れた
刃先と共にしまうと立ち上がった。
まずは街へ戻って装備を整え、ダンジョンへと潜ろう。
それから………。
これからやれる事が増えるであろう事を考えると、少し期待をしてしまう。
前のように逃げるだけにスキルじゃない。
師匠によって爆上がりした戦闘力を活用して、これからは自分だけで戦っ
ていこうと決意を固めたのだった。




