3話 冒険者
先に進んでいく仲間を羨ましく思いながらも、自分の受け持っ
た事をしっかりこなす。
これも、同じパーティーとしての義務だと思っていた。
いつまでも、一緒にやっていくものだと信じきっていたのだ。
「ただいま〜」
「あら、おかえりなさい。ちょっと待ってね…」
母親の手には摂って来たばかりの薬草がある。
それに魔力を流すと、淡い光がしてからポーションが出来上がる。
どう言った原理かはわからないけど、瓶に詰められた液体がたっ
ぷりと入っている。
いつ見ても見事な出来だった。
「どうしたの?カイト?」
「それって僕にもできるかな?」
「ポーション作りの事?なら、一緒にやってみる?」
「うんっ!」
母親の手を握ると手を重ねるように薬草を握った。
「そうよ、そのままゆっくり魔力を流してみて……ゆっくりね〜」
母の手の温かい魔力に自分の魔力を重ねていく。
パァーっと光が収縮すると、コロンッと手の中にポーションが生
まれた。
「出来たぁ〜」
「そうね、でも…ちょっと魔力が足りなかったわね……」
にっこりと笑って見せた。
母親の作ったものと比べると色が濁っている。
回復の効果が劣っている証だった。
冒険のない日は毎日採取をして来てはポーション作りに励んだ。
少しでも家計の足しになればいいと思いながら作ってはいるが、
どうにも上手くいかなかった。
劣化版でもポーションは、ポーション。
ないよりはマシなのだ。
カイトの作ったポーションはパーティーで活用していた。
まだ駆け出しだというのに、ポーションを雑に使えるパーティー
はここくらいだろう。
大怪我した時は母親のポーションを使うが、それ以外はカイトが
自作したやつを使うようにしていた。
「おい。ポーションよこせ!」
「はいっ。」
「荷物持ちなんだからもっと早く来いよ!」
「そうよ、遅いわ!」
皆は戦闘だけしているだけなので勝手に先に進んでいくが、カイト
はそうではない。
皮を剥いで、お金になる部位は分別する。
丁寧な作業にギルドでの買取り価格もだいぶんとはずんで貰ってい
たのだった。
「もっと早く出来ねーのか?」
「ごめん、すぐにやるから…」
「ちょっとカイト、このポーション治りが遅いわ」
「ちょっと待ってて……」
カイトが行くと粗雑なポーションをレイアの腕にかけると手をかざ
す。
魔力を流すとゆっくりと光が集まっていく。
「ヒール…」
「遅いわね…もっとちゃんとしたやつ持って来てよ」
「ごめん。母さんのは納品前だから……」
簡単な怪我ならヒールとポーションの同時使用で綺麗に無くなる。
カイトが唯一使える魔法だった。
カイトの父親はただの農夫だった。
いつも畑を耕し、痩せた土地でなんとか作物を作ろうと頑張っていた。
それでも収穫量は増えず、母親のポーション頼みで生計を立てている。
それでも、畑の野菜は見た目は悪いが、食べられないほどではない。
カイトが冒険者になりたいと言った時から頑張ってせめていい武器位は
とお金を貯めてはいるが、結局買ってもらえたのは小刀程度だった。
今では解体に重宝しているのだから、悪くはない。