2話 スキルの恩恵
物語りの始まりは5年前に遡る。
「このまま王都のダンジョンに行けばもっと稼げるかもな〜」
「いいわね〜!だったら、今のダンジョンクリアしたらボスの報酬
貰ってそのまま王都まで旅しましょ!」
リーダーのダルカは今、絶好調だった。
名も無き村の出身で構成されたパーティーで、『金色の翼』と名乗
っていた。
昔村に来た冒険者のパーティーが強く、かっこよかったから、それ
にあやかってつけた名前だった。
僕達の村は森の最北端にあった。
そこでは毎回冒険者が訪れて来ては、森の奥にあるダンジョンの間
引きをしてくれていた。
たまに、ダンジョンボスを倒してやらないとスタンピードと言って
中で溢れた魔物達が一斉に出てきて近くの村々を襲い始める事があ
るからだった。
そんな冒険者達を見て育った僕らも、当然のように冒険者に憧れた。
そして、14歳を迎えると、皆んなで冒険者登録をした。
スキルは神殿で授かったので、あとは経験を積んでいくだけだった。
有り金をはたいて武器を買って、初めての冒険は近場の森だった。
「そっち行ったぞ〜!」
「おーし、任せとけ!」
斧を大きく振りかぶるとストーンラビットを追い込む。
数匹で生息しているので、脅かすと一気に反対方面に走り出す。
そこにナノのナイフが数匹仕留める。レイアの魔法が飛ぶと飛び
上がった数匹がまるこげになった。
横をすり抜けたのをダルカが切り裂いたのだった。
あとは、残骸を集めてカイトが魔石を取り出す。
この時から荷物持ち兼雑用をやっていた。
「カイト終わったか?」
「ちょっと待って、すぐに終わらせるから。」
「私達先に行ってるわよ〜」
「うん、すぐに追いつくよ」
カイトの武器は小刀だけだ。
ここでは戦闘も出来ない為、解体を一人でやっている。
死体となっても硬い部位は変わらず、手惑う事も多い。
それでも、戦闘に加わって傷つくよりはマシだと思う。
カイトの母親は毎日薬草を摂ってはポーションを作って納入している。
領主様に納税の代わりに多めにポーションを提供しているのだ。
ダルカは剣術スキルを保持しており、レイアは魔法師スキル、ナノは
隠密スキルで、相手が気づかぬうちに攻撃を当てる事ができた。
イルギは重戦士スキルで、重い武器全般が使える。
しかし、カイトときたら戦闘には向かない絶対回避スキルだったのだ。
回避とはそもそも避ける為のスキルで、攻撃ではない。
だから、どう足掻いても攻撃が当たらなければ魔物は倒れないわけで、
冒険者には全く意味のないものだった。