18話 切り捨てられる
まずは王都へ向かう前にと訪れたロイエンの街。
ここには大きなダンジョンが隣接していた。
ダンジョンの名は『賢者の試練』。
ここで最低でも5層を制覇できなければその先は無いと言われる程
の難易度らしい。
そこに今、ダルカ達のパーティー『金色の翼』が挑んでいたのだっ
た。
しかし、そう簡単なわけはなく5層で苦戦を強いられていたのだっ
た。
「今日も先に進めないじゃない!どうなってるのよ!」
「苛立つなよ、レイア!」
ダルカが冷静を装おうとしたが、レイアが捲し立てるように吠えた。
ここ数日、ずっと同じように5層で止まっている。
先に進めたのは最初の日だけで、それ以外はずっと5層入り口付近で
撤退を余儀なくされていたのだった。
この日もすぐに数匹の蜘蛛を退治した瞬間奥からわらわらと沸いて出
て来たのを見ると、すぐに前の階へと逃げ戻った。
「あんなの戦えるわけないじゃない!」
「ならさ〜全部燃やしちゃえばいいじゃない?」
レイアにナノが口を挟んだ。
確かに高火力の炎を出せるレイアならそれも可能だと思われた。
が、レイアの魔法は何発も打てるものではない。
その度に魔力切れでポーションで補充しているのだ。
最後にはお腹がたぷたぷになってくるらしい。
これはレイアだけが知る苦労だった。
「そんなに魔法ばっかに頼らないでよ!」
「なら…神官を雇えばいい」
「あら、それはいいわね。私もそれは賛成よ。だって荷物持ち
なんてノロマ抱えてるよりは常にエリア回復出来る神官の方
がいいじゃない?」
イルギも頷く。
ダルカは少し考えるとカイトを見た。
「ちょっと待ってよ。僕もちゃんとやってるよ!回復ポーション
だって僕が用意してるし……」
「そんなの当たり前でしょ?弱いんだから。お荷物が出すのが当
たり前よ!」
レイアの言葉に誰も反論をしない。
カイトの役目は地図を見ることと、その作成。
それからダンジョンへ入る前の荷物の用意、魔石回収。
戦闘では後方からの弓での援護なのだが、あまり役に立っていな
い。
魔法は多少の傷の回復程度。
これは神官がいれば事足りる。
それに神官がいればポーション入らずと言われるほどに有能なのだ。
前衛の斧使い、イルギは常日頃から神官を引き入れたいと欲してい
たほどだった。
「明日はみんなで教会へ行来ましょ!」
「そうだな、やっぱり神官だろ!こいつ回復に時間がかかり過ぎるん
だよな〜」
リーダーのダルカに続き、魔法師のレイア、斧使いのイルギ、盗賊の
ナノは全員の一致だと言い放ったのだった。
「明日から来なくていいぞ、カイト。」
「それって……でも、ギルドで登録してるし……」
「そうだ、言い忘れてたけどな…お前の名前登録してねーから。だっ
てさぁ〜荷物持ちに名前なんてないだろ?」
一瞬何を言われたのか、頭が真っ白になった。
冗談で言っているのか?
かつての仲間はそれでも自分を必要としてくれていたと思っていた。
なのに…こんなにあっさりと切り捨てられるとは思いもしなかった
のだった。




