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最弱冒険者はパーティーから捨てられる  作者: 秋元智也
旅の始まり
16/163

15話 第5階層

足元に貼られた蜘蛛の巣を見つけた。


「近くにいるっ!」


カイトの声に一斉に見えたのはこちらに気づいて向かってくる数匹

の蜘蛛だった。

Dランク冒険者のメンバーにとって脅威ではなかった。


松明を掲げて、怯んだ隙に切り裂く。

次々に倒すと、後ろでカイトが魔石を取り出す。


やっている事は今までと同じだった。

だが、違うところといえば、周りが薄暗い事と、たまにある光苔で

視界があまり良くない事だった。

そして蜘蛛は縦横無尽に飛んで攻撃してくる事だった。


解体しながらカイトは周りも見なくてはならない。

気を緩めているとあっという間に糸が飛んできて絡め取られてしま

うからだった。


前からだけとは限らない分、上や横の壁など、いつもなら見もしな

い場所に注視しなければならない分、少数といえど難敵だった。


硬いわけではないし、剣が通らないわけでもない。

短剣が当たれば刺さるし、毒でも死ぬ。


が、先に敵を見つけるという面で大変なのだ。

それだけで疲れて、先へと進めない。

たまにぽっかり空いたような穴が足元に空いているので不用意に進

めないというものある。


「ちょっと、ところどころ穴だらけじゃない〜」

「足元を確認しながら進まないとやばいな…」

「そっちの道は穴が多い…こっちのが少ない気がする」


ナノが盗賊の勘…だろうか分かれ道で道を示したのだった。

休憩を挟みながら何度も別れ道を進んだが、一向に辿りつかないかっ

た。

下に降りる階段もないし、ボス部屋らしい場所もない。


時折り魔獣の叫ぶような大きな音が風に乗って下から聞こえて来てい

るように感じた。


「この穴に飛び込むなんて事ないよな?」

「あったら困るわよ!どれだけの高さか知らないけど戦う前に怪我でも

 したら戦いにもならないわ。それに…無事に降りれるかもわからない

 じゃない」


レイアの言う通りだった。

さっき落ちていた石を穴に放り投げたが、いつになっても落ちた時の音

がしなかったからだ。


まるで底なしのような気さえしたのだ。

こんな場所に飛び降りるなんて選択をする冒険者は居ないだろう。

ダルカ達のパーティーにもそんな勇敢な猛者はいなかった。


それにもし、下にたどり着いたとしても、上がってくる道がないのだ。

退路を絶たれたようなものだった。


半日も持たずにすぐに前の階層に戻る事になった。

階層を戻ると蜘蛛の魔物は追っては来なかった。


階層ごとに、縄張りがあるのだろう。

魔物同士での干渉を避けているようだった。


「流石にあのまま狩りは無理ね〜」


レイアがため息がてらに愚痴をこぼす。

それもそうだろう、数匹単位で向かってくるのだが、動きが一定じゃな

い分魔法は当たらないし、剣も蜘蛛の糸に当たるとベタベタの粘着が付

いてしまって、振れなくなってしまう。


思うように先へは進めないのだ。

一回、前の階へと戻ると休憩を挟んで数回挑戦した。


が、結局あまりに効率が悪いとあって、街へと帰る事に決めたのだった。



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