11話 ロイエンのダンジョン
王都に続いて栄えている大きな街、ロイエン。
ここには冒険者達を待ち受けている大きなダンジョンが存在する。
そこのダンジョンはかつて昔勇者パーティーにいた大賢者が試練を
与えた場所としても有名で、そのダンジョンの名を『賢者の試練』
と呼ぶ人も多い。
「大層な名前がついてるよな〜」
「そうね〜。サクサク行って綺麗な宿屋に移りたいわ〜」
「ん?なんだ、それ……買ったのか?」
「あぁ、これ?カイトが似合うからってくれたのよ〜、綺麗な石
でしょ?」
レイアが自慢げにダルカに見せびらかす。
「俺のやったやつはどうしたんだよ?」
「あぁ…あれはちょっとね……、ほら、もう昔じゃない?この街
ならもっと私に似合うのがあると思うの?ダルカ〜買ってく
れない?」
「今は無理だ。まずはダンジョンで稼いでからだな」
「そうね。」
酒を飲みながら目の前にある食事を口に入れた。
「ダンジョンの入場許可は取れたの?」
「あぁ。もちろんだ。4人で金も支払った。出費分は元を取ら
ないとな。」
「荷物持ち物いるんだし、たっぷり稼ぎましょ!」
このダンジョンには入場料が必要だった。
栄えた街だからこそなのだが、無尽蔵に入れて死体を増やさ
ない為と、中での揉め事を避ける為でもあった。
一度入ると次の日は入れない。
なので普通入ったら一日はダンジョンに潜って次の日はゆっ
くり宿で休む事が多いのだ。
人数に応じて料金も違う。
なのでダルカはいつも4人で申請している。
もちろん、カイトはいつも荷物を持って深くフードをかぶっ
ている。
隠蔽スキルを使っているナノを誤魔化す為だった。
朝一で、出発してダンジョンの中へと入った。
いつものように森で魔物を狩っている時とは違って閉鎖的な空間
なせいか動きが限られてしまう。
「前からスライム2体!」
「おっけー、任せとけ!」
ナノの声にイルギが斧を持って振り回す。
ドーンッという風圧で一匹が消滅し、その横にいたのが壁に打ち
られると弾けた。
「簡単じゃん?魔法の出番ないじゃない?」
「あぁ、まだ一層目だしな…」
「おい、カイトしっかり魔石拾っとけよ」
「う…うん。」
最初の一匹は魔石ごと粉砕したのか割れていて取り出すのも大変
だった。
壁に当たったのは綺麗に取り出せたが、小さくて売ってもお金に
はそうならないだろう。
まだ始まったばかりだった。
ダルカが人数を詐称している分、出費は抑えられている。
このダンジョン『賢者の試練』は王都に近いせいかスタンピード
が起きると大変だということで毎年、勇者パーティーがダンジョン
コアを破壊している。
普通のダンジョンならコアが破壊されると中で生まれる魔物が一気
に弱くなる。
そしてまた魔力が溜まってきて、勝手にコアが生成されるという仕
組みなのだ。
が、ここでは少し違っていた。
コアを破壊されてもモンスターレベルは変わらず、いたって平常的
に狩りができるのだ。
外に湧き出てこないだけという事だった。
その為、安定的な収入を求めて入る冒険者が後を立たない。
このダンジョンは第五層からが難しくなる。
全く別物になると言ってもいいほどであった。




