107話 ひとときの眠り
エルフの里は大部分が崩壊していたが、木の上にある
家屋は半数が健在だった。
「今日はまだ壊れておらぬ家で泊まっていきなさい」
「いえ、僕も先を急ごうかと……」
「恩人に、もてなしもできぬとは思われたくないのじゃ、
せめて宴だけでも参加してはくれぬか?」
「はぁ……まぁ……はい」
「それはよかった。さぁ、今日は盛大に祝うぞ」
多くの犠牲者を出しながらも生き残れた事を祝って盛大
に祝うと言う。
カイトは面白いものを目撃する事になった。
エルフ達は、常に木の上で生活をしている。
だが、宴となると地面に降りてくる。
そして、何もなかった地面にいきなり植物が迫り出して
きて、机と椅子を作っていく。
蔦が絡み出来上がっていく様は面白いとしか言いようが
なかった。
こんな魔法見たことがなかった。
じぃーっと眺めていると、笑われてしまった。
「そんなに珍しいですか?」
「あ、君は長老さんの?」
「はい、ハーベスと言います。あの時は助けていただい
て、ありがとうございます。仲間もこれだけの数が生
き残れたのも一重にカイトさん のおかげです」
「助かってよかったです。毒も効いてたので、一時はど
うなるかと思いましたが……よかった」
「それと、私からも聞きたい事が…」
「ポーション……ですよね?」
「はい。私達はこの里から出る事はないので、人間達の
ポーションがこんなに性能がよかったなんて知らなか
ったんです」
あ、やっぱり勘違いしていそうだった。
「その事で話しておかなければならない事が……」
カイトはそのポーションを作ったのはかつてこの世界
最強と名高いリリークライゼンであるとあかしたのだ
った。
そして、自分はその弟子の弟子で、その時譲り受けた
のだと説明したのだった。
もちろんリリーの名を出すのは反則かもしれないが、
誰もが知っている有名な魔法使いで、こんな奇跡的な
ポーションを作れるもの彼女だけだと、信じてくれる
威力はあったからだった。
今も、魔術師の中では最高峰と言われる王都の魔法魔術
学校では、彼女の再来と言われたのがそこで捕まってい
るイーサだったのだ。
「ってわけなんです。だから、この事は口外しないで欲
しいんです」
「分かりました。里の恩人の事を言いふらすような不埒
な輩などいませんよ」
長老の言葉に、その場にいたエルフたちは一斉に頷いた
のだった。
夜通しで酒盛りをすると、朝方にはその場に眠りこける
者も出てきていた。
カイトは先に失礼して借りた部屋にはいった。
もちろん、警戒を怠らないようにはしながらひととき眠
ったのだった。




