100話 勇者達の思惑
わざわざオークの集落から防御魔法をかけて、さらに洗脳させる。
あとはエルフの里を襲いにいくようにすればいい。
オーク達は痛みを感じている様子はなかった。
と言う事は、死ぬまで戦い続ける戦士が相手という事になる。
これは1番厄介な相手だった。
このままではエルフの里が全滅しかねない。
が、勇者をこのまま放置するのも、不安でしかない。
1番大事なのは人の命だった。
優先順位を間違えちゃいけない。
カイトは引き返すと急いで里の方へと向かった。
途中重症の者や、もう死んでしまった者が至るところに転がっていた。
オークに踏み潰されて圧死した者や、かろうじて虫の息の者。
少しでも生きているのならポーションとハイヒールで正常な状態へと
戻す事ができる。
本当なら、知られたくないが、今は一大事だった。
「んんっ………」
虫の息だったエルフが目を覚ますと、警戒するように身構えたのだった。
「僕は君たちの敵じゃないよ。まずはみんなを助けるのを手伝ってくれ」
「そんな事言って、世界樹の密売に関係あるんだろう?」
「警戒するのはいいけど、今がどんな状況か理解してる?仲間がすぐに
治療しないと死ぬかもしれないのに、悠長にしてていいの?」
「それは……もう、助からないだろ…」
「そんな勝手に決めつけてないで、一人でも多く助けなよ?」
そういうと、近くで足を失って蹲るエルフに手を差し伸べた。
ポーションをかけるとヒールをかける。
すると、無くなったはずの足が再生されていった。
奇跡としか言いようのない効果だった。
ヒールもハイヒールも、腕や足を生やす効果はない。
だが、目の前の青年は次々に治していく。
「エディは助からないのか?。
「エディって誰?」
「彼女だ」
そばで身体全部がひしゃげていた。
「死んでしまった人には効果はないんだ。少しでも息があれば助かる。
だから君も手伝ってくれ」
「……分かった」
今、1番必要なことは何か?
それを理解したようだった。
「里の長はいるかい?」
「あぁ、多分中心部で戦っているともう。」
「そうか……なら僕はそっちに向かう。後で来てくれ。それと、この
ポーションを飲ませるだけで命は助かるはずだ。仲間を見つけたら
すぐに飲ませるんだ、いいね?」
「どうして人間がそこまでするんだ?」
「たまたま通りかかっただけだよ。ほかっておくには目覚めが悪いだ
ろう?」
カイトは足早にかけると世界樹の根本までいく。
そこには数人の戦士が倒れていた。
どれも無惨に引きちぎられていた。




