1話 始まり
同じ村出身でパーティーを組んではや5年。
ダンジョンにも度々入っては討伐数を増やし、ランクも上げてきた。
いつか有名になって、『名もなき村の名前を知らしめるんだ!』と
誓い合った仲間だったが、最近不調に陥っていた。
それは、どうにもダンジョン5層の攻略に着手してからというもの
10日が過ぎていた。
一向に先に進めないのだった。
道は確保した。
が、先が見えないのだ。
何度通っても先がない。
たまに大きな穴が空いているだけで、変わったものはない。
魔物は相変わらず蜘蛛が湧いて出るだけだった。
ただ、問題はその蜘蛛にあるのだ。
大量に湧いて来て、対応ができないのが実際の現状だった。
毎回そこで撤退を余儀なくされる、それさえ超えればきっと次の階へ
の糸口が掴めるとおもうのだが…。
「やっぱさ〜、もっと強い奴入れた方がいんじゃね?」
「それもそうね。」
幼馴染みの前衛ダルカが言うとそれに賛同するように魔法師のレイア
も頷く。
職業盗賊のナノは当たり前の決断だと納得してしまう。
「ちょっと待ってよ。僕もちゃんとやってるよ!回復ポーションだっ
て僕が用意してるし……」
「そんなの当たり前でしょ?弱いんだから。お荷物が出すのが当たり
前よ!」
レイアの言葉に誰も反論をしない。
カイトの役目は地図を見ることと、その作成。
それからダンジョンへ入る前の荷物の用意、魔石回収。
戦闘では後方からの弓での援護なのだが、あまり役に立っていない。
魔法は多少の傷の回復程度。
これは神官がいれば事足りる。
それに神官がいればポーション入らずと言われるほどに有能なのだ。
前衛の斧使い、イルギは常日頃から神官を引き入れたいと欲していた
ほどだった。
「なら、明日は教会へ行くか!」
「そうだな、やっぱり神官だろ!こいつ回復に時間がかかり過ぎんだ
よな〜」
リーダーのダルカに続き、魔法師のレイア、斧使いのイルギ、盗賊の
ナノは全員の一致だと言い放ったのだった。
「明日から来なくていいぞ、カイト。」
「それって……でも、ギルドで登録してるし……」
「そうだ、言い忘れてたけどな…お前の名前登録してねーから。だって
荷物持ちに名前なんてないだろ?」
ダルカの言葉に愕然となりそのまま店を出た。
とぼとぼと歩き宿屋に着いた。
今日はいつも以上に疲れた。
「明日からどうしよう……」
戦いに参加していなかったせいで冒険者ランクも低い。
みんなが上がっていくなか、ずっとFのままだったのだ。
これでは一緒に組んでくれる人はなかなかいない。
気が重いと考えながらベッドで眠ったのだった。