評価Dの底辺VS天才殺し屋
うい
その日の午前授業も特に分からない所は無く、終わった。
なぜか授業をやった事あるように感じるのだ。
そして、昼食を食べ、少し散歩に行くことにした。なぜならこの学校の昼休みは一時間あるからだ。
森に入っていき、少し歩いた所で俺は止まった。
次の瞬間上から人間が降ってきた。俺は来る事を予想していたかのように、容易く避けてしまった。
完全に背後を取っていたためか、相手は驚き、後ろに後ずさる。
「お前か…」
俺は身体と視線を驚いている者に向ける。
その者は、銀髪、肩までの髪、百七十ありそうな身長…
「光莉か。」
俺が静かにそう告げると彼女は、
「完全に背後取ってましたよね…」
「一瞬、木の軋んだ音がした。それで気が付いた。」
と、でまかせの嘘をついた。
気配なんて音が無くてもいくらでも察知出来る。
「お前殺し屋かなんかだろ?手を抜いてDに落ちて、注目されずにターゲットを殺すつもりだったんだろう?」
俺の言葉は図星だったようだ。
「そうです。私は殺し屋です。貴方を半殺しにして情報を出せって。依頼者は知りません。匿名でした。」
しれっと彼女はこの島でしか使えないSNSの話をする。
この島でしか使えないSNSで殺し屋の仕事でも募集していたのだろう。
「貴方だとしても依頼は依頼。殺りますよ」
と、短く言い、突っ込んできた。こいつが本気になればAぐらい容易く行けたのだろう。
ナイフで俺を刺そうと何度も突いてくる。俺は全て避けているが、相手の体力切れまでは遠いだろう。
でも一気にボコそうとした時、緊急脱出装置とかを持っていた場合、俺の実力が知れ渡る危険性がある。
彼女の能力は、速さ。スピードを上げる事の出来る能力。細かい事は分からないが、上限とかあんじゃね?知らんけど。
その速さに俺は能力不使用で付いていく。ギリギリっぽい演出をしているが全く汗をかいてなかったりしてるからバレるのも時間の問題だろう。
俺はまた避けた瞬間、深く刺しすぎたせいか、大きな隙が出来た。そこに一撃を叩きこむ。
背中の辺りを殴ったので地面に落ちる。
彼女は何も言わずに俺と距離を取ったが、信じられない痛みだろう。
なんだか申し訳ないな。
「貴方も、実力を隠していたのですね」
この数十秒の戦いでそこまで気付いたのか。
「でも、A止まりって所ですか?」
光莉は更に速度を上げ、俺に突っ込んでくる。周りが木で彼女も少し動き辛そうだ。
だがそれでも十二分に速い。本気出せばS行けただろ…
今度は突きではなく、横にナイフを振っている。もう、半殺しではなく本当に殺すつもりにも見える。
「速いな…」
俺が独り言を漏らしながら避けていると、
「いい加減左腕もポケットから出してあげたいのですが。」
そう。俺は今右腕一本で戦っている。左腕を出すまでもない、と煽っているのだ。
「出すまでもない」
「まだ、貴方本気じゃないですよね」
気付かれた。全然涼しい顔をし過ぎていた…
「お前もな」
俺が静かに返し、脚で一発。ナイフを持っていた右腕に当てる。
まだ全速力で蹴らなかったとは言えども常人には理解できない速さだろう。レベルで言うとBぐらいかな。
それも彼女はギリギリで後ろに跳び、被害を最小限に抑えている。
「まともに喰らえば危なかったです。」
目の前に光莉はいた。流石に速すぎやしませんか。
今度はしゃがんで避けたが、一つの仮説が脳裏をよぎった。
身体が壊れるまではどんなスピードでも出せるのでは?という物だ。
それでもまだ目で追える程だ。更に速くできるのだろう。
光莉は困惑していた。ずっと斬っているのに、彼の服にかすりもしないからだ。
俺は、光莉がナイフを斬っても全てを避けている。さっさと心が折れればいいんだよ…
次の瞬間、ナイフが三本飛んできて、光莉はナイフを一本、斬りつけてきた。
ナイフを素手で全て落とした。
俺は静かに懐から包丁を取り出した。
先生に言われていた。
『得物を使ってくる奴にはお前も使ってやれ。ほら、これやる』
と、俺はな包丁を一本貰っていた。
「そっちがその気ならこっちも使わせてもらおう。」
俺は光莉に殺傷する気は無かった。圧倒的な実力を見せて、包丁以外で倒すつもりだ。
「貴方も、ようやく本気で戦うよ…」
彼女が言い終わる前に俺は彼女の後ろに立って、彼女がこちらを向く時間を待った。
彼女は不服な顔をしていたが俺の右腕に握られている包丁に集中していた。
「こんな状況、前にも無かったか?」
俺はそう言って、彼女の腹部を蹴りつけた。
威力は大分抑えたつもりだが、蹴られるとは思わず、受け身を取りそびれた。そんな所だろう。
「俺と先生の戦いで見てただろう?」
彼女は木にぶつかったがそれでも少しずつ立った。
「見ましたね。貴方は、Dでの評価も最悪なんですよ。なのになんでここまで…戦えているのでしょう。」
光莉は俺が実力を隠していたことに気付いていた。
だが皮肉をこめた言葉、なのだろうな。
「お前、俺を殺すつもりで来いよ。本気でな」
俺は簡単に挑発する。
案の定、簡単に乗った。
自分がギリギリの状況になっていると人間はすぐにキレる。
更に、速くなった。本当に上限がないんじゃないか?
次の瞬間、頸の前にナイフが来ていた。ナイフを包丁で一発、彼女の手から落とす。
姿勢を崩して俺から距離を取る。
「戦略、頭良すぎですね…」
と、彼女は素直に賞賛の言葉を俺に送るのであった…
あああ★