第9話 待ち人
雪夏はずっと窓を見て、天青が来るのを待っている。
いつ来るか分からないので、テレビも見ず、ご飯もお風呂も超特急で済ませて、じっと窓を見る。
暗くて窓の外の様子は分かりにくいが、全然来る気配が無い。
待つ時間ってこんなに長いんだと思った。
ばあちゃんが雪夏の部屋を覗き、
「宿題したの?」
と声をかける。
雪夏はすっかり忘れていた宿題を慌ててやるが、全く集中できない。
でも、なんとか宿題は終わった。
寝る時間になったが、まだ天青は来ない。
電気を消して、暗闇の窓をまた見続ける。
夜10時を過ぎ、さすがに眠くなってウトウトする。
今日はもう来ないなー。
そう思って雪夏は眠りについた。
朝目が覚めて窓の外を見たが、スズメも妖精らしきものもいない。
雪夏はがっかりした。昨日の出来事は夢かなにかで、現実じゃなかったんだと思った。
それでも今日は月曜日。重い身体をやっと動かす感じでランドセルを背負い、トボトボと歩く。
チュンチュンと鳴くスズメについ目が行くが、天青ではなさそうだ。
どうなったかくらい、言いに来てくれればいいのに、とちょっとムカッとしてきた。
でも、帰りになる頃には少し気分も変わって、どうせダメなんだろうし、どうでもいいや、っていうくらいの気分になった。
友達と別れ、1人で家に帰っている途中、山道に差し掛かると、一羽のスズメが飛んできた。
「雪夏さん、ボクです、天青です。」
とスズメが喋る。
雪夏は諦めていたので、天青が突然来てびっくりした。
雪夏は辺りに人がいないかキョロキョロと頭を振って確認し、
「遅いよ!ずっと待ってたんだよ!」
と言った。
「すみません。昨日、雪夏さんの家まで行ったんですけど、近くに行くことが出来なかったんです。多分ですが、強い結界が張られています。」
「結界って、バリアーのことだよね?何で?」
「分かりません。でも、雪夏さんの家まで来て気付いたんですけど、雪夏さんの家は木守なんですね。」
「ううん、ウチは“こもり”じゃなくて“樹守”だよ。」
「名前のことじゃなくて、代々、木を守っている家ということです。」
「あー、お父さんがそう言ってたかも。ご神木を守ってきたから樹守っていう苗字になったって。」
「やっぱり私達の神様の木を守ってくれてる人達なんですね。」
「神様って、“木”なの?ウチが守ってるっていうご神木?」
「はい。なので、木守の方だから結界も張れたりできるのだと思います。」
「えー?じいちゃんとばあちゃんが?そんなことできるように見えないよ。違うんじゃない?
それより、木が神様って、木が喋るの?神様が変身してるの?」
「神様が喋る…んー、頭の中に声が聞こえてくるという感じです。
神様は変身しないし、ずっと木のまま、そこにおられます。」
「そうなんだ。そういえば、その木の周りに妖精がいるって言ってた。それって本当だったんだ…。」
「そうですね、本当です。
それで、神様の言葉をお伝えしますね。」
雪夏はゴクッと唾を飲んだ。