第8話 雪夏の願い
雪夏は叶いそうな願い事を考えているが、何も思い付かない。
「好きな人と付き合いたいとか、頭が良くなりたいとか、何かほしい物があるとか、思いついたもの、ありませんか?」
なかなか願いを言わない雪夏に天青も戸惑う。
「うーん、好きな人はいない。頭は良くなりたいかなぁ。欲しいものは今のところ、無いかな。あっても、魔法で出してくれるわけでもないんでしょ?」
「ええ、まあ。
あ、じゃあ、頭が良くなるお手伝いをします!」
天青はテヘッとした顔をした。
「どんなお手伝い?それなら魔法が使えるの?」
「いえ、そんな高度な魔法はまだ使えないので、雪夏さんがお勉強するのを応援します!」
「えー?それって、“フレー!フレー!”的なやつ?」
「はい。イメージとしては合ってます。」
「ヤダ!そんな応援されたら、余計に気が散ってダメだよ。
やっぱり別のにする。」
「すみません。」
天青は恐縮して体をすぼめる。
「…あのさ、お母さん探してくれない?それも応援だけかな?絶対ムリ…?」
「お母さんですか?迷子になったんですか?」
「迷子じゃないよ。あー、そうだね、迷子なのかも?10年前に消えちゃったんだ。」
「そうなんですね…。それは難しいですね。」
「やっぱりそうだよね。魔法が使えないんならムリだよね。」
雪夏はがっかりしてため息をつく。
「本当に、それが願いですか?」
「うん。本当は、お母さんに会いたい。他に何もいらない。頭も良くなりたいけど、今のままでも別にいい。
でもお母さんには、ずっと会いたいって思ってる。」
雪夏はちょっと涙目になった。
「分かりました!でも、ボクにはちょっと難しそうなので、神様に相談してみます。」
「神様っているの?会えるの?神様に頼んだら願い叶えてくれるの?」
「私の神様は、願い事を叶えるとかはしてないと思いますが、知恵を授けてくれます。あまり期待はしないでほしいですが、相談してみますね。」
「うん。誰も魔法なんて使えないんだね。期待しないけど、でも期待したい。いつ?今?ここで待ってればいい?私も行きたいとこだけど。」
「そうですね…。神様はあのロープの先の奥にいらっしゃいます。一緒に行きますか?」
「それが…ダメなの。そこへは10歳になるまで行ったらダメって言われてる。もうすぐだけど、まだなんだ。」
「じゃあ言いつけは守らないとですね。
雪夏さんのお部屋は1人ですか?窓はありますか?」
「うん。私だけの部屋で、勉強も寝るのも自分の部屋でしてるよ。」
「それじゃあ、雪夏さんの部屋の窓をコンコンと叩くので、開けてください。神様からどう言われたか伝えに行きます。いつとは約束できないけど。」
「その妖精の格好で来るの?見つかっちゃうよ。それに、私の家分かるの?」
「鳥に変身します。スズメなら大丈夫かな?
家は雪夏さんの波動を読み取りますので、大丈夫です。」
「へえー、なんかよく分かんないけど、すごいね。じゃあスズメだね、待ってる!」
雪夏と天青はそれで別れ、天青は山の奥へ、雪夏はばあちゃんのいる畑へ戻った。
「雪夏遅かったね。心配しとったよ。今探しに行こうかと思っとったけど、戻ってきたから良かった。何しとったん?」
ばあちゃんはちょっと怒った顔ではあるけどホッとした様子で雪夏の方へ歩み寄る。
「あー、ごめん。木の影に座ってボーッとしてたらちょっと眠くなって寝てた。」
雪夏は嘘をついた。天青に、自分と会ったことは内緒にしてほしいと言われたからだ。
「そうけ、ならもう家帰ろうか。」
ばあちゃんの畑作業も終わっていたので、片付けをして家に戻った。




