第7話 妖精さん、こんにちは
雪夏は目の前にいる妖精を、なかなか現実として受け入れられないと思ったが、妖精の天青は雪夏の様子に構わず喋りだした。
「この前も助けてくださってありがとうございました。お礼も言わずに走り去ってしまってすみません。かなり焦って動揺してたので…。」
「やっぱりあの時も君だったんだ!
ねえ、何で動物に変身してたの?何でワナに捕まったの?変身して逃げればよかったんじゃないの?」
雪夏は興奮して立て続けに質問する。
「あ、すみません。一度にいっぱい聞かれても困りますが、順番にお答えします。
まず、変身してたのは、練習です。ボク、妖精として生まれて、もうすぐ10年なんですけど、妖精の10年って、まだまだ未熟なんですね。だから、いろいろ練習してるんです。」
「10歳なの?私と同じ!
それで、変身してたのって、本当にいる動物なの?それとも適当?」
「変身してた動物は、前に人間のお家を覗いた時、テレビに映ってるのを見たんです。
何て名前だったかなー?確か、“タスマニアデビル”でした。
可愛いなと思って変身してみたんですよ。」
「あー、歌か何かで聞いたことある名前だ。でも、こんな可愛い動物だっけ?もっと“デビル”っぽかったような…?
それより、このロープからこっちに来れるの?じいちゃんがバリアーだって言ってたけど。」
「ああ、普通に行き来できますよ。ボクもチラッと聞いたことはありますけど、もう結界の効力は無いみたいです。
どちらかといえば、人間がこの先に行けないようにしてあるんじゃないんですかね?」
「あ、そうだった。確かに。」
「あ、それで、ワナに捕まったのは、同じ妖精の仲間にイタズラされたというか、二人共変身した状態で追いかけっこしてたんです。相手を捕まえようとしたら、ボクがワナに捕まってしまいました。
ワザとワナにかかるように仕向けられたみたいで…。
ちなみに、この前も同じ理由です。」
「もう1人の妖精はどこにいるの?」
「ボクが捕まったのを見て、笑いながらあっちへ飛んで行ってしまいました。」
「ひどい。助けてくれなかったんだね。」
「はい。イタズラ好きな妖精なので…。
で、ボクが変身するのを見たと思うんですけど、カゴの中だとクルクル回って飛ぶというのができないので、変身することが出来なかったんです。なので、本当に助かりました。」
「あ、いえいえ。」
「それで、助けてくれたお礼に何かしたいのですが、何がいいですか?
何か、願い事とかありますか?」
「願いを何でも叶えてくれるの?」
「いえ、直接叶えるのはムリです。ボクはまだ未熟者なので。
叶うように全力でお手伝いします。」
「えー、微妙…。」
雪夏は直接叶えてくれるならすごく嬉しいけど、お手伝い程度なら正直面倒くさいと思った。