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母を探すために妖精になる  作者: 二光 美徳
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第4話 雪夏のお母さん

 雪夏は今までお母さんの話はちょこちょこ聞いてはいたが、幼かったのであんまり理解できないでいた。でも今日改めて聞くと、今までよりちゃんと理解できている。


 「お母さんは何でいなくなったの?」

 この質問も過去に何度もした。


 「それは、本当に分からないんだ…。雪夏が産まれて、5日目に病院から退院して家に帰って、それから2日後、突然お母さんがいなくなったんだ。

 雪夏と寝ていたはずだったのに、気が付いたらお母さんがいなくて雪夏が泣いていたんだ。

 お父さんもじいちゃんもばあちゃんも、皆で探したけど見つからなくて、警察に行って探してもらったけど、次の日に『もう探すことはできません』と、捜索が打ち切られたんだ。」


 「捜索って、探すってこと?何で探すのやめちゃったの?」


 「それも分からない。『もう警察では対応できません』って言うだけで、全く取り合ってくれなくなったんだ。」


 「何で?!」

 雪夏はすごく腹が立った。


 「俺もさ、不思議でしょうがなかったよ。腹も立った。

 それから近所の人も誰も気にしてない様子だったんだ。何か変な…、違和感だったよ。

 うまく表現できないけど、なんか最初っからいないような扱いって感じで。

 お父さんとじいちゃんとばあちゃんと3人で、近所も山の中も必死で探したよ。でも見つからなかった…。

 …ごめんな、雪夏。」


 「何でお父さんが謝るの?」


 「その…お母さんを見つけられなかったことと、雪夏にお母さんがいなくて寂しい思いをさせてしまったことが申し訳なくてね。」


 「お父さんのせいじゃないよ、それに、私は寂しくなんてないよ。皆がいるから大丈夫!」


 お父さんにはそう言ったけど、雪夏はお母さんがいないことですごく寂しい思いをしてきた。


 幼稚園も、小学校も、皆の家は両親揃って行事に参加する。

 授業参観も皆の家はお母さんだ。

 母の日だって…。


 雪夏の家はお父さんとばあちゃん。


 ばあちゃんは大好きだけど…お母さんではないから。


 でも、お父さんには私が寂しいと思ってることは知られたくない。

 なんか、お父さんが可哀想だと思うから。


 雪夏はちょっと涙が出そうになったが我慢して話を続けた。

 「そういえば、このペンダントってお母さんと何か関係あるの?」

 「あ、雪夏がいつも首にかけてるペンダントだね?

 それは、お母さんがいなくなった時、雪夏が握ってたんだ。ペンダントじゃなくて石だけだったんだけどね、最初は何か分からなかったんだ。家にあったものじゃないし。

 でもなんとなーく捨てたらダメだって取っておいたんだ。

 そしたらその後さ、お告げじゃないだろうけど、夢にお母さんが出てきて、『雪夏に身につけさせてほしい』って言うんだ。夢だったけど現実っぽくて、その通りにしようと思って、ペンダントにしてもらったんだ。」

 

 「そっか、やっぱりこれはお母さんのかも、なんだね。

 あとさ、私の名前は誰が付けたの?」


 「名前はお母さんが決めたんだ。何にも知らないお母さんだったけど、雪夏の名前だけはお母さんが考えて、絶対に譲らなかったんだ。」


 「そうなんだ。なんか嬉しい。

 でも、何で雪と夏?なんか、季節感おかしくない?」

 「うん、お父さんも聞いてみたけど、花の名前かなんからしい。聖なる湖のほとりに咲く花…?」

 と言ったところで、お父さんはハッとした。

 「もしかして、あの場所かな?」

 「あの場所?」

 お父さんは何か心当たりがあるようだ。

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