第30話 妖精の谷へ出発!
モクルに言われて、雪夏はペンダントの石を目の前にかざしてジッと見つめる。
どうやら雪夏なりに集中してるらしい。
雪:「ねえ、全然何も起こらない。石が喋ってくれるかと思ったけど、全く何も聞こえない。
本当に石が教えてくれるの?」
モクル:「なあ、お前集中してるか?」
雪:「う〜ん…そのつもりなんだけど…。
谷ってどんな場所かなーとか、守ってる人ってコワイ人かな?とか、つい考えちゃってるかも。」
武:「おいー…。やっぱ全然集中出来てないじゃん。貸せよ。」
雪夏の首にかけたまま、武路はペンダントの石を手に取る。
武路は雪夏の顔に自分の顔を横並びに近づけて、石をジッと見つめる。外見は妖精の雫さんなのに、雪夏は一瞬ドキッとしてしまった。
石を見つめる武路の顔を、雪夏は同じくジッと見つめる。
武:「…なんか、見られてたら集中できないんだけど。」
武路は照れて石から顔を背ける。
雪:「ご、ごめん。なんか真剣だなーと思って、つい。」
雪夏も照れながら下を向く。
モクル:「おいおい、イチャつくなよ。」
モクルはニヤケ顔で2人を茶化す。
武:「ちがっ、そんなんじゃねーよ!」
武路は仕切り直して再び集中した。雪夏は今度は邪魔しないように、下を向く。
1分くらい集中したところで、石がクルンと一回転し、フワッと光だした。
武路は驚いて体がビクッと動いたが、集中を切らさないようにそのまま見つめ続ける。
次の瞬間、石から細い光線が出て、一方向へ真っ直ぐ伸びた。
武:「うわっ」
武路は流石にびっくりして声を出す。雪夏も武路のびっくりした様子にたまらず顔を上げて石の光を見た。
武路の集中は途切れたけど、石は光り続けている。
雪:「すごい…武路って、すごいね!
これ、きっとこの光の先に“谷”があるんだよね⁈」
武:「あ、ああ、多分…。」
天:「間違いなくそうだね!武路さん、すごい!」
モクル:「なんか、雪夏より武路の方がその石と相性良さそうだな。」
武路はモクルの言葉に、少しドヤ顔でにこりと微笑む。
4人で外を見て、これから行く方向を確認すると、石の光はスッと消えた。
モクル:「これから先、困ったらまた同じように石に聞いてみな。この石にはかなり強い想いが込められている。この石を作れるのは相当な実力者だな。」
天:「雫さんていう、私の先輩の大妖精なんです。」
天青は自分が褒められてるように感じてるのか、嬉しそうだ。
モクル:「なるほどな、流石だな。」
雪:「でも、モクルが教えてくれたからでもあるよ。ありがとうね!」
モクルは自分が褒め返されるとは思ってなく意表を突かれたが、素直に受け止めた。
3人:「じゃあ、行って来ます!」
3人が頼りない足取りで出発する姿を、モクルは手を振って見送った。
【第一部 了】




