第29話 あと13日
それからドアを叩く者は現れず、無事に朝を迎える。
モクルは神経を外に集中していたけど、他の3人は爆睡だ。
寝込みを襲われて寝不足なのは分かるが、あんな怖がってたのによくこんなに無防備に寝れるもんだと感心する。
モクル:「おーい、お前ら、朝だぞ!」
いつまで経っても起きない3人に痺れを切らして声をかける。
武:「あ…おはよう。」
すぐに起きたのは武路だ。
武路は雪夏の体を揺らして起こす。
雪:「ん…う〜ん…、」
雪夏はイモムシのように体を曲げたり伸ばしたりして目を覚ました。
その途端、
雪:「うっわ!妖精!!何で⁈」
雪夏は武路の姿を見て驚く。
武:「おいー、寝ぼけてんのか?」
武路は雪夏の目の前で手をヒラヒラさせる。
雪:「あ、そっか。今妖精の世界にいるんだった。えーっと、君は武路、そうそう。
天青は?」
武:「まだ寝てる。」
今度は2人で天青を起こす。
雪:「天青ー、起きてー。」
天:「う〜ん、まだ眠い…。」
雪:「天青!起きて!」
天:「えー…誰?起こさないでよぉ…。」
天青は目を擦りながらやっと起き上がる。
武:「なんだ、お前ら朝弱ぇな。」
モクル:「緊張感無さ過ぎだろ。」
雪:「だって、昨日は途中で起こされたし、急にいろいろありすぎて疲れてたんだもん。」
武:「俺だってそうさ、でもチンタラしてたらあっという間にタイムリミットだぞ!」
雪:「そうだね、“妖精の谷”へ行かなきゃ!モクル、泊めてくれてありがとう!あと、昨日助けてくれてありがとう!」
雪夏がお礼を言うと、3人揃ってモクルにお辞儀をする。
モクル:「おう。じゃあ頑張れよ!」
モクルは少し照れた感じで片手を挙げて応える。
雪:「ところでさ、モクルは一緒について来てくれたりしないよね…?」
雪夏はダメ元でモクルに聞く。
モクル:「無理だな。」
モクルは即答だ。
雪:「えー、何でダメ?」
雪夏はダメ元のつもりだったけど、食い下がる。
モクル:「オレは今この場所を守らないといけない。トガー達が入って来たことで、人間界へ繋がるこのルートが、沢山の妖精に認知されたからな。
良くない奴が出て行かないように、見張らなきゃ。」
雪:「そっか…なんか、ごめんね。私のせいでいろんな人に迷惑かけるね。」
雪夏はシュンとする。
モクル:「雪夏のせいじゃないさ。オレには親はいないけど、誰かを想う気持ちは分かる。
お前達は、お前達のやるべき事を成し遂げろ。余計なことは気にするな。」
雪:「うん、ありがとう!でもまた会えるといいな。もう私達友達だもんね!でも私の名前、『トガー』じゃないよ。『雪夏』だよ。」
モクル:「…ああ、『トガー』って嫌だよな。すまん雪夏。友達か…いいな、それ。また会えるさ。雪夏が雪夏のままなら。
ところで、どの方向へ進むのか、決めたのか?」
雪:「ううん、全然。う〜ん…どこに行けばいいかなぁ?」
武路も天青も首を傾げる。
モクル:「お前ら…たくさん時間があるならそれでもいいけど、体とお母さん本人を探すのにそれじゃのんびり過ぎだろ。昨日も言ったけど、とりあえず石に聞けよ。」
雪:「あ、そうだった。」




