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母を探すために妖精になる  作者: 二光 美徳
28/30

第28話 攻撃

 カサッ…


 カサカサッ…


 虫の這う音とは違う、何か大きさのある者が近付く音がする。

 モクルはハッと目を覚ました。


 夜はまだ明けていない。

 他の3人はこの部屋で寝ている。


 モクルは、スッと流れてくる不穏な波動を感じ取る。


 スヤスヤと眠る天青を見て、コイツ…本当に妖精か?なんて鈍感なんだ…。と呆れる。


モクル:「起きろ!」

 モクルは3人を叩き起こした。


天:「どうしたんですか?まだ暗いですよ。」

 天青は目を擦りながら、むくっと起き上がる。


モクル:「天青…起きてもこの気配に気付かないのか?これじゃ先が思いやられるな。」


天:「え?…あ、あーなんか、変な気配しますね!これ、ヤバイやつですね!」


モクルから示唆を得て、やっと天青も不穏な気配に気付いた。


 ドン!ドン!ドン!


 何者かが、家のドアを力強く叩いている。モクルは両手をドアにかざして念を送り、ドアが開かないように攻防する。


 ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!

「開けろ〜!」


 今度は体当たりでもしているかのような大きな音と野太い不気味な声が聞こえてくる。


 すっかり目が覚めた雪夏は恐怖に怯えて武路にしがみつく。武路も雪夏を庇うように上から覆い被さって守りの体制になるが、同じく恐怖で震える。

「なに、なに、なに⁈怖い…!」


 雪夏は無意識にペンダントの石を握りしめる。

「やだー、お願い!あっち行って!」

 目を瞑り、石を更に強く握りしめ、体を丸める。


 すると、石がピカーッと大きく光を放ち、家全体をその光が包み込んだ。


 と同時に、ドンドンと体当たりしてるような大きな音も止む。


雪:「何?ペンダントが光ったの?」

武:「すげぇ!何で?

 あ、そうか、強く願えば石が反応するって言ってたから、多分そうなんだ!」

雪:「私、敵に、“あっち行けー!”ってすごく強く願ったの!やった!この石が聞いてくれたんだ!」

天:「良かった!敵は飛んでったんだね!」


 モクルは精神を集中して、外の気配を確認する。

モクル:「さっきの気配は消えてる。」


 4人はホッと胸を撫で下ろし、敵を撃退したことを喜ぶ。


 しばらくは気持ちが落ち着かず、様子を伺っていたが、静かになって落ち着いてきたので寝直そうとしたところへ、またカサカサッと足音がし、再びドンドンとドアを壊しにかかるような大きな音がし始める。


雪:「また⁈やだ!」

武:「石だ!雪夏、石!」

雪:「分かってる!」

 雪夏はまたペンダントの石を握りしめた。


 モクルはまた両手を広げて念を送り、ペンダントが光るのを待つ。


天:「雪夏さん、早く!」

 天青は何も出来ず、顔の前で両手を組んで握りしめ、縮こまっている。


雪:「そうなんだけど!全然ダメなの!反応しない!!」

 雪夏はさっきの光が出るように、一生懸命願っているつもりだけど、全く反応してくれない。


武:「雪夏、焦るな!集中!」

 焦る様子の雪夏に、武路はまた声をかける。


雪:「集中なんて出来ない!したことない!無理!」

 雪夏は泣きそうな顔をする。


モクル「早くしてくれ!もう…持たない!」


 モクルが念を送り続けてドアが開くのを抑えているが、ドアはミシミシと音を立て、ドンッと押されて出来る隙間が段々大きくなってくる。


モクル「限界だ…」


 モクルがそう言うと同時に武路は、ペンダントを握りしめる雪夏の手の上からさらに手を被せて握りしめ、石に意識を集中させる。


武:「うおー!!」

 武路は思わず叫んだ。


 ペンダントからさっきよりも強い光が出て、ドンッという衝撃も加わり、家の外まで広がった。


 光がスッと消え、またドアを破ろうとする輩の気配が消えた。


雪:「はあ〜ぁ、良かった。やっと光ってくれた。」


天:「武路さん、すごいですね!武路さんの集中力のおかげです!」


雪:「え?今のは武路?私じゃないの?」


モクル:「おいトガー、お前全然集中できてない。天青にも分かるくらい、全く。」


雪:「だって、集中なんてしたことないもん!これでも頑張ったんだよ!」

 雪夏はほっぺたをプーっと膨らませる。


天:「でもさっき出来てたよね?」


雪:「あれは…無意識だったから、よく分かんない。」


武:「雪夏、集中した事ないってマジ?勉強は?テストは?集中してるだろ?」


雪:「え?武路は集中できてるの?へー、すごい。私、テストでも集中したことない。

 『りんごが一つ』とか問題にあったら、りんごが頭に浮かんで、ばあちゃんが皮を剥いてくれて、それを私が食べるとか、なんかいろいろ頭でストーリーが止まらなくて、結局何の問題か分からなくなってまた読み返したり。

 お昼前だったら『お腹空いたなー、今日の給食何だっけ?』とか。

 集中なんて、どうすればいいか全然分かんないよ。

 実は今だって、“どんな奴なんだろー?”とか、“あのドア大丈夫かな?”とか、つい気になっちゃって…てへ。」


武:「マジか…。」


 3人は、気が遠くなりそうな感覚を覚えた。

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