第25話 あと14日
雪:「そういえば、モクルは何で私がトガーだって知ってるの?」
モクル:「オーラがトガーだから。オレくらいだとすぐ分かる。まあ、天青クラスだと難しいだろうけど。」
雪:「じゃあ、お母さんの身体がどこにあるか知らない?」
モクル:「谷にある。でも、その谷はいつも移動するんだ。だから、どこかと聞かれても教えようがない。」
雪:「やっぱりそうなんだ…。どうしたらいいんだろ?」
モクル:「そのペンダントの石に聞いてみなよ。そのために持ってるんだろ?」
雪:「石…神様みたいに喋るのかな?」
モクル:「さあ?」
モクル:「もうすぐ夜になる。夜はどうするんだ?」
雪:「確かに暗くなってきた。この世界も夜があるんだね。」
モクル:「それは人間の世界と同じ。昼夜の長さも日付も同じだ。
どこか寝る場所のアテはあるのか?」
天:「どこか木の上ででも休もうと思ってる。」
モクル:「今日最初の夜だろ?それに、普通のヤツならどうでもいいけど、トガーは狙われやすいからな。…しょうがない、ウチ来るか?」
雪:「いいの?良かったー。私女子だし、いきなり野宿は無理だと思ってたんだ。暗いと怖いし。ね、武路。」
武:「うん…そうだな。」
雪:「どうした?なんか元気ない?」
武:「いや、大丈夫。」
皆でモクルの後を付いて行くと、すぐ近くにモクルの家があった。
木の枝で作った、小さいけどしっかりした家だ。
雪:「すごい!立派なお家。ここに泊まれるなんて嬉しい。」
モクル:「寝るだけだけどな。でもこの家はオレが作った自信作だ。
夜は気をつけないと、暗闇に飲み込まれちゃうかもしれないからな。」
雪:「すごい!この家モクルが作ったんだ!
ちょっと尊敬する。
あ。それで、暗闇に飲み込まれるとどうなるの?」
モクル:「暗闇から出れなくなる。ずっとその中に閉じ込められて、タイムアウトになるかもな。」
雪:「そういえば、何も持たずにこの世界に来たけど、時計もカレンダーも無いんだよね。10歳までって期限あるのに、アバウト過ぎて怖い。」
武:「カレンダーは作ればいい。夜が来て朝が来れば次の日だから。時間は…難しいな。太陽の高さで判断するなんて無理だよな?
んー、タイムリミットを誕生日の前の日にしよう。そうすれば、日にちだけ数えればいいから、時間は気にしなくていい。」
雪:「そうだね、そうしよう!人間に戻れないのは嫌だからね。前日まで見つからなかったら諦める。
今日は7月1日だから、前日の7月14日まであと14日!」
武:「おう。」
モクル:「武路、ちょっと手伝ってほしいことがある。いいか?」
モクルが武路に声を掛け、2人揃って外へ出た。雪夏と天青も何かできることなら手伝うと言ったけど、外には出てくるなと断られる。
武:「手伝いって、何すればいい?」
モクル:「まあ座れよ。」
2人は家から少し離れたところで座った。
モクル:「武路、お前なんか落ち込んでる?」
武:「落ち込んでなんかねーよ。」
モクル:「そうか?妖精の前で嘘ついても分かるんだぜ?」
武路は、はあっと深く溜息をつく。
武:「…俺、ここに来た意味あるのかな?」
モクル:「なんで?」
武:「雪夏を守らなきゃって思いで一緒に来たけど、もしかして俺必要ないんじゃないかな?」
モクル:「何で?オレと相撲できなかったからか?」
武:「雪夏があんなに強いと思わなかった。」
モクル:「ハハハ!そんなことか。」
武:「笑うなよ!」
モクル:「すまん!バカにして笑ったんじゃないよ。」
武路はチェッていう顔をする。
モクル:「まだ今日始まったばかりだぜ?
落ち込むの早すぎだろー。
確かに、随分気負ってこの世界に足を踏み入れたんだろうから、役に立ちたいという気持ちは分からなくもないがな。出鼻を挫かれたって感じか?まあ、そう焦るなよ。
この先何があるか分からない。2人より3人の方がいいに決まってる。
それに、何もすることが無かったとしても、お前が一緒にいるっていうだけで心強いもんだ。」
武:「そうかな…?」
モクル:「お前と雪夏がもし逆だったらって考えてみろ。何も分からない知らない世界に天青と2人か、雪夏と3人か、全然違うと思わないか?」
武:「そうだけど…。」
武路は頭で分かっても、まだ少し気持ちが追いついてこないようだ。




