第22話 到着
3人は木の股を通り過ぎて、別の世界へ移動した。
草や木が生い茂り、あまり変わらない風景だけど、肌で感じる空気は人間世界とは違う気がする。
雪夏は身震いした。
雪:「どこへ行けばいいのかな?天青何か知ってる?」
天:「神様に聞いたんだけど、トガーの身体は妖精の谷の洞窟の中にあって、氷の妖精に管理されているんだって。
妖精の谷へ辿り着く道はその時々で変わるそうだよ。いつでも簡単に行けるわけじゃないって。」
雪:「でもさ、私達皆、羽付いてるから飛べるじゃない?道は無くても方向さえ分かれば行けるんじゃない?」
天:「うん、そうかもしれないけど、そんな簡単なのかな?」
雪:「どっちに向かったらいい?」
武:「とりあえず、真っ直ぐ行ってみようか。」
天青と武路は真っ直ぐの方向へ向かって飛んでいく。
しばらく飛んで、あれ?と思って振り返ると雪夏がいない。
遠くから「待ってー。」という声がする。
雪夏はまだスタート地点にいる。
武路と天青は引き返す。
武:「何してんの?行かないの?」
雪:「どうやって飛ぶの?
さっきから飛ぼうとしてるんだけど、全然無理なんだけど。」
武:「羽動かして飛ぶんだよ。」
雪:「羽って、どうやって動かすの?」
武:「どうって…、手とか足を動かすようにして、動かそうと思えば動くけど?」
雪:「無理。ダメだ、私飛べない。」
天:「今妖精になったばかりなので、いろいろ不都合が起こってるかもしれない。
雪夏は歩いて行くしかないね。」
雪:「うん。あーあ、私も飛びたい!いいなぁ、2人共。」
雪夏は生い茂った草の間を歩いて行く。人間サイズならヒザの下くらいの草の高さだが、身長20センチくらいの妖精だとすごく大きな草だ。
しかも、歩幅も小さい。
武:「これじゃ、いつまで経っても辿り着けないな。」
雪:「ハアハア…、人間に戻りたい。このサイズはすごく不便。飛べない妖精って、妖精なのかな?」
息を切らしながら歩いていると、ガサガサと何かの気配がする。
「もしもし、飛べない妖精をお探しかな?」
雪夏はびっくりした。
目の前に突然大きなおじさんが現れたのだ。
雪:「いえ…、探してるわけではないです…。す、すみません。」
おじ:「そうか、てっきり私を探しに来たのかと思ったよ。」
そこへ武路が飛んできて雪夏を庇うようにおじさんの前に立ち塞がる。
武:「なんだよ!何か用か?」
おじ:「なんだ、お前?お前こそ何だ?」
おじさんの顔が怖くなる。
天:「いけません!」
天青が急いで飛んできて武路を突き飛ばす。
武:「痛って!何すんだよ!」
天青は武路を無視しておじさんに話かける。
天:「連れが突然失礼をしてすみません。たった今この世界に来たばかりの子供で、何も分かっていないのです。」
おじ:「そうか、それならまあ、許してあげよう。次から気をつけなさい。」
そう言っておじさんは去って行った。
武:「何だ、今のは?」
天:「武路さん、言葉使いと態度に気をつけて!妖精は礼儀のない人に容赦しない。」
武:「だって、“悪意のある者”かもしれないだろ!あのおじさん、怖い顔してたし。」
天:「見た目じゃないよ、あの人は木の精霊。“悪意のある者”は確かにいるけど、皆がそうじゃない。無用の敵は増やさないで。」
武:「ごめん。でも、いい奴か悪い奴か、どうやって判断するんだ?」
天:「基本的には波動とオーラだよ。息苦しくなるような波動と、黒ずんだオーラには気をつけて。でも中にはそれを隠してる上級の妖精もいるけどね。」
武:「ふぅん…?」
武路は首を傾げる。




