第2話 山の中の散歩
気分も良くなって、あちこちに生えてる山菜にワクワクして夢中になる。山菜採りは宝探しみたいだ。
こごみやワラビを両手いっぱいに採ったところで、ふっと顔を上げ、少し先を見て気付いた。
「あ、さっきばあちゃんが言ってたワナだ。」
雪夏は目の先に、じいちゃんが仕掛けたであろうワナのカゴを草むらの中に見つけ、そこで初めて随分奥まで来てしまったんだと思った。
ワナのすぐ近くには、人が入らないようにロープで張られてる所がある。
またばあちゃんに怒られてしまうと思い、引き返そうとした時、何かが動くのが見えた。
カタカタと音がする。
ワナに何か捕まっているようだ。
雪夏は何が捕まったのか、すごく見たくなった。
「ばあちゃんには近づくなって言われたけど…。」
雪夏は好奇心が抑えきれず、そーっと近づいてみる。
「可愛い!」
見た瞬間に可愛いと思った。でも、この動物は何だろう?タヌキもイタチも何度も見たことあるけど、それではない。
どこかで見たような…テレビかな?
じっと見つめていると目が合った。
とっても悲しそうな目をしてる…気がする。
「可哀想。今、出してあげるね。動かないでね。だから、噛んだりしないでね。」
そう言いながら、恐る恐るカゴの扉を開ける。
扉が全開になるや否や、名前の知らない動物は、ダッシュでカゴの外に飛び出た。
「うわっ!」
雪夏は思わず尻もちをついて転んだ。
名前の知らない動物は振り向いて、雪夏を見てペコリとした…のかな?そんな感じに見えた。そして草むらの山の中へ走り去って行った。
雪夏は知らない可愛い動物を勝手に逃した事と、突然ダッシュでカゴから出たことのドキドキが止まらない状態で、足早にばあちゃんの所へ向かう。
雪夏は戻りながら、この事は内緒にしとこうと思った。
ドキドキはしばらくしたら止まり、ばあちゃんのいる畑に着いた時には、落ち着きを取り戻していた。
「どこまで行っとったん?」
ばあちゃんは、雪夏をチラッと見ただけで、特に何も気付いてない様子だ。
「んー、あっちの方まで。」
雪夏もいつも通り、適当に答える。
「そうけ。」
ばあちゃんはあっさりとしていて、聞いたのはそれだけだった。
その後は雪夏が採ってきた山菜を見て、いっぱい採れたねーって褒めてくれた。
ばあちゃんの畑はすっかり整地されて、きれいな畝が並んでいる。
「ばあちゃん、ここには何植えるの?」
「ここはピーマン。」
「うえー、ピーマン?違うのがいいなー。私、とうもろこしがいい。」
「とうもろこしも作るよ。でも、好き嫌いはダメやよ。野菜は全部体にいいんやけ。」
「ハイハイ。」
いつも同じ会話。これがばあちゃんだ。