第11話 幼馴染の男の子
次の日の帰り道、同級生の男の子、山巻田 武路に話かけられる。
近所に住む幼馴染だ。でも一緒に帰ることはほとんど無いので、すごく久しぶりだ。
「雪夏さ、最近なんか悩みでもあんの?」
「え?何で?悩みなんてないけど。」
「ならいいけど。ボーッとしてるし、給食こぼしたり、階段踏み外しそうになったり、なんか変だぞ。」
「そんなに変?」
「うん。今年さ、二分の一成人式だろ、先生からその話あった時からだから、もしかしてお母さんの事で悩んでるんじゃないか?」
「あーうん、そうだね…。気にはなってる。」
「おまえさ、山の中とか行ったらダメだぞ。」
「何でそんなこと知ってるの?」
雪夏はびっくりした。昨日の天青との会話を聞かれていたのか?
「やっぱりそうなのか⁉︎危ないぞ!やめておけ!」
「ていうか、何で知ってるの?」
「いや、知らないよ。そうじゃないかと思っただけ。」
「違うよね?誰かに聞いたんでしょ?」
やっぱり昨日あの場所にいたのかなと、雪夏は思った。
「…実はさ、俺の父さんと母さんが話してるの聞いたんだ。
雪夏のお母さん、もしかしたら山の妖精に連れて行かれたんじゃないかって。
俺が二分の一成人式のこと話した日の夜、そういえば、って感じで話してた。」
雪夏は天青を見られたのではなかったんだとホッとしたが、なぜ武路の両親が雪夏のお母さんの話をするのか不思議に思った。家の人以外、誰もよく覚えていないはずなのに…。
「武路のお父さんとお母さん、私のお母さんのこと覚えてるの?今まで近所の人に聞いたけど、誰も覚えていないってお父さん達言ってたよ?」
「覚えてるから話してたんだと思う。この話とは違う時に、俺の母さんとおまえのお母さんが、同じ時期に妊娠してたから、よく話してたって言ってた。」
「え?そうなの⁈知らなかった!私も武路のお母さんに、私のお母さんのこと聞きたい!ダメかな?」
「ああ、じゃあ母さんに言っとく。」
雪夏は、お母さんのことを覚えてくれている人がいたことに、すごく心が躍る。今すぐにでも武路のお母さんに会いに行きたいと武路に頼んでみたけど、
「親が話してるのを盗み聞きして、それを他の奴に言ったって話したら怒られるかもしれないし、ちゃんと確認してからまた話すよ。」
と断られた。
次の日、武路に「帰りに寄ってくれたらいつでも話してあげる。」と武路のお母さんが言っていたと伝えてくれた。
雪夏はさっそく今日の帰りに武路の家に行くことにする。
雪夏は武路の家に着いて、早々に話を切り出した。
「おばさん、こんにちは。お母さんのこと教えてください。」
武路のお母さんは、きっとすごい勢いで雪夏は迫ってくるだろうと予想していたのであろう、全く動じる様子もなく、ニコニコと落ち着いた感じで挨拶を返す。
「雪夏ちゃん、久しぶり。大きくなったね。お母さんのこと、何が聞きたいのかな?」
「おばさんの知ってること全部聞きたいです。」
「そうねぇ、何から話そうか…。」
武路のお母さんは出会った時からのことを順番に話してくれた。
お母さんたちが初めて出会ったのは、妊婦検診の病院でだった。
ここは田舎なので、近くの人が行く病院はそこしかなく、受診のタイミングも同じでよく顔を合わせていた。
病院の待ち時間が長いので、その間に話するようになって、雪夏のお父さんと出会った時の話もしてたそうだ。
その内容は雪夏のお父さんに聞いた通りだ。
雪夏のお母さんは記憶を無くしてたから、ほとんど何も知らなかったけど、すごくよく笑う明るい人で、ちょっとおっちょこちょいで可愛らしい人だと言った。
“天真爛漫”ていうらしい。
雪夏の方が少し早く生まれて、しばらくしたら武路が生まれたそうだが、武路の出産の時に雪夏のお母さんが消えるようにいなくなった。
武路のお母さんはすごく心配したが、武路が生まれたばかりで何もしてあげられなくてごめんねと、雪夏に謝った。




