第10話 初めの決心
天青は木の神様が話したことを雪夏に伝える。
「雪夏さんの誕生日が来るまでに、神様の木まで私と一緒に来てくださいとのことです。」
「何で誕生日が来るまで?」
「分かりません。」
「10歳になるまであのロープの先に入っちゃダメだって言われてる。迷信かもしれないけど、お父さんとかに怒られるのイヤだなぁ。」
「誕生日はいつですか?」
「7月15日」
「今は6月なので、少し考えてみてください。」
「誕生日過ぎちゃったら、もう二度とお母さんには会えないのかな?
もし考えて、行くって気になったらどうすればいい?天青一緒に来てくれる?」
「ボクが聞いた感じでは、10歳過ぎたらお母さんに会えない可能性は高いみたいです。
行く気になった時は私の名前を頭の中で強く念じて、小さな声で囁いてください。」
「念じる?」
「天青!天青!天青!と頭の中で呼んで、小声でいいので声にも出してください。」
「分かった。」
雪夏は天青と別れて歩く帰り道、ほぼほぼ行く決心はついた。
天青と話してる時から既に、気持ちは『行く』の一択だったけど、父さんやばあちゃんの顔が浮かんで、約束を破る決心だけがついてなかっただけだった。
どう考えても、二度と会えなくなるなら、行かないという選択肢は無い。
あとは、いつ行くかが問題だ。
家にはいつもじいちゃんとばあちゃんがいる。1人で山に登るのがバレたら絶対反対されるだろう。
ばあちゃんとまた一緒に畑に行った時にしようか?
その時は時間が限られる。
でも話を聞くだけなら、そんなに時間はかからないか…?
家に帰ってばあちゃんに、次いつ畑に行くのか聞く。
「しばらく行かないよ。野菜の苗はほとんど植えたし、雨が続くみたいやから水もやらんでよさそうやし。今度は雑草取るときに行くかねえ。そうやなぁ来週後半の平日あたりかな。」
雪夏はアテが外れた。
作戦の練り直しか…と思ったところへ、ばあちゃんの話は続く。
「あ、そうやった。来週の土曜日、じいちゃんと近所の人達で、お寺さんの用事に行くことになったんや。お昼過ぎに行って、夕方には帰ると思うけど、お父さんも仕事で雪夏1人でちょっとだけお留守番になるんやけど、いいけ?
もうすぐ10歳やから、そろそろ1人でも大丈夫やよね?」
「もちろん、いいよ!楽しんできて。」
雪夏はチャンスだと思った。
ばあちゃんと一緒に畑に行って、時間を気にしながらこっそりご神木の所へ行くより全然いい。
雪夏は、上がる気持ちで自分の部屋へ駆け込み『天青!天青!天青!』と念じて囁いた。
でもしばらく待ってみたけど、天青は来ない。
来ないじゃん!
と、怒りそうになったが、よく考えたらこの家に近づけないんだったと思い出す。
「ちょっとその辺散歩してくる。」
そう言って雪夏は家を出た。
雪夏の家は山の麓で、一番奥にある。
隣の家も少し離れているので、家の周りはひと気が無い。
少し家から離れた所まで移動し、もう一度念じ、囁く。
「天青!天青!天青! 」
しばらくするとスズメが一羽飛んできた。
天青だ。
雪夏はスズメの天青の顔を見るなり、
「決心ついたよ!」
と力強く言う。
「分かりました。じゃあ、今から行きますか?」
雪夏につられて、天青のテンションも上がる。
雪夏も今すぐにでも行きたい気持ちだけど、ブルブルと頭を振った。
「違う、違う、今じゃないよ。来週の土曜日なんだけどいいかな?
午後1時頃、じいちゃんたちが出掛けていった後で。」
「いいですよ、ボクはいつでも。じゃあまたその時呼んでください。」
雪夏と天青は、目を合わせて同時に頷く。
「あとさ、天青って同い年だよね?私に敬語いらないよ。
…ね、友達だと思ってもいい?」
「もちろんいいよ!助けてもらったから敬語だったけど、これからは普通にする。
友達って、すごく嬉しい!ボク、友達は初めてだ。」
「この前鬼ごっこしてたっていう妖精さんは友達じゃないの?」
「あー、あの人は大先輩で、友達ではないんだ。教えてもらうこともあるけど、大体暇潰しに遊ばれてる。」
「そっか。じゃあ、これからよろしく!」
雪夏がそう言うと、天青は嬉しそうに山へ帰って行った。




