居酒屋吉五郎小景3
◎2割減
「タコ唐お待ち」
「お。サンキュ。ところで大将」
「なんでがす」
「子供のIQ2割低下って話だけど」
「先だってその話題が」
「俺は知能だけじゃ済まねえと思うんだ」
「へ?」
「体もさ2割減」
「え」
「将来大谷とか藤波になろうて奴が160cmまでしか伸びない」
「てことは小作りの江戸っ子は」
「130cm未満」
「それじゃ侏儒だ」
「Covidな」
◎別世界
「へい、らっしゃーい。あ、うちはマスク禁止なんで」
「え。いいの?外して」
「もちろんでさあ。こちらどうぞ」
「これの確認は?」
「え。なんです?」
「ワクパスです」
「そんなもんハナから相手にしてませんので」
「そうなんですか。はぁー」
「ここはこの世の常春。力をぬいてさあ一杯」
「ううう」
「あの世はさぞお辛かったでがしょ」
◎ワニ
「らっしゃい。あ、先生。いい所へ」
「熱燗ね。なに話してたの」
「例の未知のタンパク創出てのが気になって」
「あれは人為的のだからヤバいかもね」
「へい熱燗お待ち。そうですか。やっぱワニに」
「八尋和邇の豊玉姫て古事記にあるくらいだから」
「日本人なら先祖返りってことですか」
「うん」
◎テレパシー
「鰤カマお待ち」
「吉さんテレパシーて信じる?」
「カルトは苦手なんで」
「目は口ほどに物を言うって」
「それなら毎日お富に睨まれてますんで」
「ところがほんとに目が進化して脳に直接言葉を発信するんだって」
「そんなばかな。あ、らっしゃーい。うちはマスク禁止なんで」
「…」
「え」
「…」
「ひえええ」
◎健康もんだい
「吉さんもう一杯」
「はいよ」
「ところで吉さん。病気じゃないと人間扱いされなくなるって知ってる」
「え。初耳でさあ。そりゃ無茶が過ぎますぜ」
「いや何事も多数の論理でさ」
「病人の方が多くなるってことですかい」
「そのとおり。早けりゃ来年中にもね」
「生きにくい世の中になりそうだ」
◎謹賀新年
「吉さん、いつのまにか年が明けちまったな」
「ついさっき遠くで鐘が鳴ってたようで」
「そうかい。しんとしてるね」
「街は冷え冷えしたもんでさァ」
「まだ閉めないの」
「日が出る時分にお富と初詣なんでそれまでは」
「じゃもう少し飲んでいこうかな」
「へい」
「サバイバルの年だね」
「しっかり生き抜いていきましょうぜ!」