唐変木が隣にいると俺はいつも巻き込まれる。
なんで…こんなことになったのだろう。広がる森に目の前に大きい狼がいる。まさか奴と帰ったことが仇となったか。
〜回想〜
俺の名前は天音龍弥だ。高校1年で剣術家だ。
俺の家…天音剣術道場は日本いや世界に轟く有名な道場である。俺はそこの師範代を任せられている。
俺は明け方から道場へと足を運んで素振りをしてから型の確認をしている。何故か今日は妙な胸騒ぎがする。集中力を乱しているか型がぶれている。俺はそれらをやめ瞑想しようと意識を落とそうとした時、奴が現れた。
「龍弥!一緒に学校に行こうよ。」
「…はぁ。わかった。少し待て。翔琉」
この道場には似合わない声が響いた。いつもは来ないのに今日は現れるんだ?厄日か?
こいつの名前は神宮寺翔琉。
この道場に通う門下生であり、師範代見習いでもある。こいつは運動神経はもちろん学業も完璧という優等生だ。だがこいつには欠点がある。女性からのアプローチには疎い唐変木である。こいつ自体はいいやつではあるが、周りにいるクソどもが迷惑千万である。たまに刀で斬ってやろうと思っているのを押さえながら過ごしている。街中や学校内でも平然と翔琉に抱き着く。注意しても聞きやしない翔琉は優しすぎる性格のせいか強く言えない。
妙に胸騒ぎがするのであるものを鞄に入れ家を出る。
登校中、黒猫は見るは花瓶が落ちるは翔琉の取り巻きには絡まられるはで大変だった。
そして授業も終わり帰る準備をしていると翔琉がこちらに寄ってきた。いつもいる取り巻きどもは今日は居なかった。皆んな用事があるらしい。あぁ、あしたこいつの誕生日か。こいつのために何かしようと計画していると考えた。ほんとうに翔琉と帰るのはやめとけばと後悔した時はない。
下校中、いつもは買い物客で賑わっている通学路も今日は人が1人も居なかったが、それはそれとして今日のメニューについて話していると目の前に魔法陣が浮かび上がった。このことに疑問が上がった。突如魔法陣がこちらに向かってくるので逃げようと試みたが金縛りがあったかのように動かず、それに巻き込まれこの世界から2人は居なくなった。
目を開けると冒頭の始まりになる。
急に現れた俺に狼は動揺して警戒しているようだ。それはさておき俺は戦闘準備に入る。鞄からポーチを取り出してその中から刻印がされた札を取り出す。
「顕現せよ【鬼桜】」
刻印が光り、刀が出現した。これは俺専用にお抱えの鍛治師が打った対妖用退魔刀である。
天音家は一般的には剣術道場だが、裏では平安時代から退魔師として日本を守護してきた一族である。俺は23代目時期当主の座に付いている。もちろん翔琉はこのことを知らない。
ようやく狼が俺を噛み殺そうと襲い掛かってきた。
《天音流壱式【死氣一閃】》
それと同時に俺は狼を素通りして鬼桜を納刀する。俺は出口を探して歩き出す。狼は振り向いてグルルと唸り駆け出そうとした瞬間、首と胴体が分かれて絶命した。
この剣技は斬られたことすら気づかず絶命させることができる。俺の祖父…天音幻條が妖相手にやった時は速くて残像が残り軌跡を描いて細切りになっている程だ。
1時間かけてようやく出口を発見し出ると、周りは何もなく草原が広がっていた。
「はぁ。本当に厄日だ。取り敢えず街を探すか。」
ため息をつきながら、どこにあるかもわからない街を目指して歩き出したのであった。