にゃんこさんと迷子のにゃん吉くん
1.あるところに若者とにゃんこさんがいました
昔々というほどの昔ではありません、そうあなた方のお父さんお母さんがまだ子供だった頃
あるところに若者とにゃんこさんがおりました。
若者は毎日会社に出かけお仕事を頑張ります。にゃんこさんは毎日お昼寝をします。
若者がお仕事の日は朝ご飯の後二人でおもちゃで遊び、晩ご飯の後もやはり二人でおもちゃで遊びます。
お休みの日には、若者は少し朝寝坊をし、にゃんこさんは一人で遊びます。
若者が起きると、仲良く二人で遊び、晩ご飯の後もまた、二人
で遊びます。
天気の良い日には時々、池にも行きます。池に行くときは新しく買ってもらったボールを持って行きます。
にゃんこさんが池のほとりに行くと池の中から神様が出てくるので、神様と一緒に遊びます。
にゃんこさんの首輪には神様からもらった音のしない鈴がついていて、にゃんこさんが、来たことを神様に知らせてくれるのです。
ある日の午後、池で神様と遊んだ帰りにお隣のおじいさんの家を通りかかったにゃんこさんは、かすかな仔猫の鳴き声に気が付きました。
「にゃんだか小さな声がするのにゃ!どこから聞こえるのかにゃ?」にゃんこさんは辺りを見回します。
「にゃんこさん、どうしたの?」買い物が終わって帰宅途中の若者がにゃんこさんの姿を見つけ声を掛けました。
「小さなにゃんこが泣いてるみたいにゃ、この近くにいるみたいにゃのにゃ。」「それは大変だ、僕も一緒に探すよ。」にゃんこさんと若者は二人で仔猫を探すことにしました。
「ママ、ママ、どこにいるにゃん?怖いにゃん、助けてにゃん!」どうやらおじいさんの家の大きな松の木の上から聞こえてくるようです。
「にゃんこさん、こっちだ。木の上にいるみたいだ。」見つけた若者がにゃんこさんに声を掛けます。
仔猫は松の木の枝の先の方で動けなくなってしまったようです。
2.そこへ迷子の仔にゃんこがあらわれて
「どうしたにゃ?しっかりするにゃ、今助けるにゃ。」にゃんこさんは慌てて松の木に登りました。
「ママ、助けてにゃん。怖いにゃん。」降りられなくなってしまった仔猫は助けを求めて泣いています。
「もう大丈夫にゃ、落ち着くにゃ。僕の後について降りられるかにゃ?」「無理だにゃん~怖いにゃん~出来にゃいにゃん。」にゃんこさんが声を掛けますが仔猫は震えていて一人で降りるのは難しそうでした。
「わかったにゃ、僕に任せるにゃ、目をつぶってじっとしてるにゃよ。」にゃんこさんは仔猫の首元をくわえると上手に木の枝を太い幹の方まで歩きます。
にゃんこさんが一番下の枝まで降りてくると若者が両手を広げて声を掛けます。
「にゃんこさん、もう大丈夫だよ。僕が受け止めるから・・・」全部言い終わる前にもう、にゃんこさんは跳んでいました。
ドサッ!仔猫ごとにゃんこさんを受け止めた若者は思わず尻もちをついてしまいましたが、しっかりと腕の中に、にゃんこさんと仔猫を抱きかかえていました。
「うわっ、ふーっやったね!さすがにゃんこさん。」「にゃ、にゃ、にゃんてことにゃいのにゃ。」
若者はにゃんこさんをねぎらうと、小さな仔猫に話しかけます。
「こんにちは小さなにゃんこくん、もう怖くないよ、お名前教えてくれるかな?」
「にゃん、にゃん吉」
「こんにちは、にゃん吉くん。にゃん吉くんはどこから来たの?」
「わかんにゃいにゃん。ママ、ママがいなくなっちゃったにゃん、いっぱい走ったんだけどみつからにゃくて、高いとこに登ったら見つけられるかと思ったのにゃん、でも、見つからにゃくて、降りようと思ったんにゃけど、下を見たら怖くておりられにゃくにゃったの。」段々と震えもおさまってきたにゃん吉くん、どうやらママとはぐれて迷子になってしまったようです。
「ママも心配してるだろうね、にゃんこさんと僕で探してあげるから、ひとまず僕の家においで。」
「にゃん吉くん、このお兄さんは僕のことも助けてくれたいいお兄さんだから安心して良いにゃよ。一緒においでなのにゃ!」
「うん、わかったにゃん、僕、ママに会えるにゃんよね?」
「ああ、きっと会えるように、僕もにゃんこさんも頑張って探すからね。」
若者はそう言って小さなにゃん吉くんを抱きしめると家に帰り、お腹のすいたにゃん吉くんにご飯を食べさせてあげました。
「にゃんこさんは、お家でにゃん吉くんと一緒に待っていてくれるかい?にゃん吉くん一人では淋しいと思うんだ。」若者はにゃんこさんに言いました。
「にゃん吉くん、にゃん吉くんはどうしたいのかにゃ?」
「僕、僕もみんなと一緒に行きたいにゃん。一緒に連れて行ってにゃん。」
「お兄さん、僕はにゃん吉くんはお兄さんがポッケに入れてあげて一緒に行くのがいいと思うにゃ。一人で探すよりみんなで探そうなのにゃ。」にゃんこさんは、にゃん吉くんの言葉を聞いて一緒に探すことを提案しました。
「そうだね、じゃあみんなで探そう!大きなポケットのついた上着に着替えるから、にゃん吉くんはそのポケットに入ってね。ちょっと窮屈かもしれないけど我慢できるかい?」
「僕、我慢できるのにゃん!連れてってにゃん。」
若者はカンガルーのようにお腹に大きなポケットのあるパーカーをはおり、にゃん吉くんはそこからぴょこんと顔だけ出しています。
「よーし、それじゃあみんなでママを探しに行くぞ!」「行くにゃ!」「行くにゃん!」
3.にゃんママさんはどこだろう…
三人は池のほとりに来ました。
「神様、大変だにゃ。聞きたいことがあるのにゃ。」にゃんこさんが神様を呼ぶと、池の中から神様が出てきました。
「どうしたんだね、にゃんこさんや、おやっ、小さなおともだちも一緒かい?」「にゃん吉くんっていうのにゃ」にゃんこさんは神様に言います。
「にゃん吉くんのママがどこにいるか探してほしいにゃ!
にゃん吉くんはママとはぐれて迷子になってしまったのにゃ。神様は何でも知ってるのにゃ、だからママを探してほしいにゃ。」
「なんと、母者とはぐれてしまったとな。にゃん吉くんはどこで母者いやママとはぐれたかわかるかな?」
神様の問いかけににゃん吉くんはフルフルと首を横に振ると、「わかんにゃいのにゃん、ママはお家からでちゃ駄目って言ってたんにゃけど、チョウチョがヒラヒラ~って飛んでたから捕まえようとしたのにゃん、チョウチョを追いかけてたらにゃん吉のお家どこだかわかんなくなっちゃって、ママがいたと思って追いかけたんにゃけど、ママじゃなかったの、高いとこに登ればママが見えるかにゃって思ったんだけど、見えなくって、怖くて降りられなくなっちゃって、それで…」
「ふむふむ、にゃんこさん、にゃん吉くんが登っていた場所の近くにチョウチョが飛んでいるような花畑はあるかな?にゃん吉くんはまだ小さい、おそらくそんなに離れた場所ではないであろう。」神様がにゃんこさんに尋ねました。
「花畑はわかんにゃいけど、おじいさんちの裏庭にはいっぱいお花が咲いてるにゃ。行ってみるにゃ!」
「なるほど、可能性はありますね。」若者も賛成して、3人はおじいさんちの裏庭に行くことにしました。
「にゃん吉〜、にゃん吉〜、どこにいるのかしら。」おじいさんちの裏庭にキレイな三毛の母猫がにゃん吉くんを探していました。
「あ、ママ!」にゃん吉くんは、若者のパーカーの大きなポケットから飛び出して、ママの元へ走ります。
「にゃん吉!お前、いったいどこに行ってたの、心配したのよ。」にゃんママさんはにゃん吉くんを抱きしめて言いました。
「ママ、心配かけてごめんにゃん。チョウチョを追いかけてたら、迷子になったみたいなのにゃん、ママを探して高い木に登ったんだけど降りられなくなったのにゃん。にゃんこさんとこのお兄さんが助けてくれたのにゃん。」
「そうだったんですか、にゃんこさんとお兄さん、にゃん吉の事助けていただいてありがとうございます!」
「ハハッ!良いんですよ。にゃん吉くんが無事で良かったですね。にゃん吉くん、ママに会えて良かったね。」
「そうにゃ、良かったにゃ!」若者もにゃんこさんもにゃん吉くんが無事にママに会えてホッとしました。
「にゃん吉くん、今度はママと一緒にうちに遊びに来るといい。待ってるよ。」「遊びに来てにゃ!待ってるのにゃ。」
若者とにゃんこさんがそう言うと、にゃん吉くんはニッコリと笑ってうなずくと、ママと一緒におじいさんちの縁の下に入っていきました。そこがにゃん吉くんとママのお家だったみたいですね。
4.にゃん吉くんはにゃんこさんと遊びます。
「行ってきます!」次の日の朝、若者は会社へ仕事をしに出かけました。
「じゃあ、もうひと眠りするかな。朝からネズミで遊んで疲れたのにゃ。」
にゃんこさんは若者が出かけると、キャットタワーの上でひと眠りすることにしました。
コンコン、カリカリ、コンコン、カリカリ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お昼寝中のにゃんこさんは小さな音に目が覚めました。
コンコン、カリカリ、コンコン
耳をすまして聞いてみます。
コンコン、カリカリ「……」どうやら、お客さんが来たみたい。
にゃんこさんはキャットタワーを降りて、ドアに近づくと、誰かが何か言ってるみたいです。
にゃんこさんはドアのそばまで来るとお客さんに声をかけました。
「こんにちは!どちら様なのにゃ?」
「こんにちは!遊びに来たにゃん。にゃんこさん、開けてくださいにゃん。」どうやらお客さんは昨日のにゃん吉くんみたいです。
にゃんこさんはにゃん吉くんに玄関のドアは若者が鍵をかけて出掛けるので開かない事を告げ、そこで待っているようにと言いました。
「にゃん吉くん、こんにちはなのにゃ!」
「にゃんこさん、どこから出てきたのにゃん?」にゃん吉くんが不思議に思って尋ねると、にゃんこさんはにゃん吉くんを家の裏側に案内します。
「こっちだにゃ。台所のドアににゃんこのドアをつけてもらったのにゃ。」勝手口ドアの下の方にペットドアが付けられていて、にゃんこさんはそこを出たり入ったりしてみせました。
「すごいにゃん!にゃんこ専用ドアを持ってるにゃんて王様みたいにゃん。」
にゃんこさんは王様が何かはよくわからなかったのですが、褒められていることはわかったので、ちょっと得意気です。
「へへへっ、なんてことないのにや。にゃん吉くんも通ってみるにゃ。」
ところが、にゃん吉くんが通ろうとして頭でドアを押しますがドアは全く動きません。
「あれ?おかしいにゃん。」もう一度試してみました。やっぱりドアは開きません。
「こ、壊れちゃったのにゃん。どうしようにゃん。」
にゃんこさんも慌てて自分でも試してみました。
カタッ、ちゃんと開きました。「えっ!」
二人は驚いて、もう一度、今度はにゃん吉くんが試します。やはりドアは開きません。
「にゃんこさんじゃなきゃ開かないみたい!すごいにゃん!本物の王様のドアだにゃん。」にゃん吉くんは王様!王様!と騒いでいます。
「とにかく、にゃん吉くんは家に入れないみたいだから、お外で遊ぶにゃ。ボールを持ってくるから、ここで待っててなのにゃ。」にゃんこさんはにゃん吉くんと池に遊びに行くことにしました。
池に着くと神様が出てきましたので、三人はボールで遊びました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「にゃんこさん!にゃんこさん!ご飯ができましたよ。」
「はにゃっ、もうそんにゃ時間かにゃ。今日のメニューはにゃにかにゃ~」
「今日は鶏むね肉を茹でました。ゆで汁のスープもありますよ。」
「うまそうにゃ、いただきますなのにゃ。」
にゃんこさんは美味しそうに食べ始めます。若者はその姿をニコニコと眺めます。若者はチキン南蛮と野菜サラダでおいしい晩ご飯を食べました。
「ごちそうさまなのにゃ、あっ、そういえば聞きたい事があったのにゃ。」
にゃんこさんは、今日にゃん吉くんが遊びに来てくれた時に、にゃん吉くんがペットドアを開けられなかった事を話します。
「……で何故かにゃん吉くんは入れなかったのにゃ。」
「ああ、それはですね、にゃんこさんは鍵を持ってるけどにゃん吉くんは鍵を持ってないからですよ。」「えっ、鍵なんて持ってないにゃ。」「にゃんこさんの首輪に鍵が付いてるんですよ。」
にゃんこさんの首輪には神様のくれた音のしない鈴が付けて有りますが、他には何も付いていません。
「神様からいただいた鈴の裏側に貼り付けたセンサーが鍵なんです。だからにゃんこさんしか入れなかったのですよ。」
以前、にゃんこさんの大事なネズミが無くなった事があったので、若者はセキュリティ対策として、ペットドアも最新式にしたのでした。
「にゃん吉くんですが、にゃんこさんのすぐ後ろにくっついて入れば大丈夫ですから、一緒に出入りしてあげてください。」
「なるほどなのにゃ、わかったにゃ。」
5.にゃん吉くんとママのお引っ越し
「行ってきます!」次の日の朝も、若者は会社へ仕事をしに出かけます。
「じゃあ、もうひと眠りするかな。朝からネズミで遊んで疲れたのにゃ。」
にゃんこさんは若者が出かけると、キャットタワーの上でひと眠りすることにしました。
コンコン、カリカリ、コンコン、カリカリ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お昼寝中のにゃんこさんは小さな音に目が覚めました。
「にゃん吉くん!こんにちは。」ペットドアから出たにゃんこさんは、玄関で待っていたにゃん吉くんに声をかけました。
にゃんこさんは、昨夜若者に教わったとおりにゃん吉くんにすぐ後ろをついてくるように言うと、ペットドアをくぐります。にゃん吉くんも恐る恐るにゃんこさんのあとをついてくぐります。
「やった!僕も通れたのにゃん!」にゃん吉くんは大喜びでした。
さて、仲良く遊んだあとで二人はにゃん吉くんのお家に行くことにしました。
にゃん吉くんのお家は隣りのおじいさんちの縁の下です。
「あれ?ママがおじいさんと縁側にいるにゃん。人間がいる時は危ないから縁の下から出ちゃダメって言ってたのに、どうしたのにゃん?」二人は慌ててにゃんママさんの元へ駆け寄りました。
「ホウホウ、これがママさんのお子さんかい?可愛い子じゃのう!」
おじいさんはまるで人が変わったみたいに優しい顔をしていました。いつもは怒ったような顔ばかりしていたのに…
「にゃん吉、縁の下からお家の中へお引っ越しよ。」
「坊や、にゃん吉くんというのかい。今日からここがにゃん吉くんのお家だよ。」
にゃんこさんとにゃん吉くんは顔を見合わせて首をかしげます。一体何が起こったのでしょうか?
6.みんな幸せに暮らしましたとさ
「へえー、それじゃあ、あのおじいさんがにゃん吉くんたちを家の中に入れてあげたんだ。」
「そうなのにゃ、びっくりしたのにゃ。おじいさんがニコニコしてたにゃ。」
にゃんママさんは、おじいさんが子供の頃にとっても可愛がっていた三毛猫のミケコにうりふたつだったらしく、おじいさんはにゃんママさんに家の中に引っ越して来るよう頼んだんだそうです。
ミケコを飼いたかったのに、おじいさんのお父さんが猫嫌いで飼わせてくれなかったんだそうです。お父さんはまだ子供だったおじいさんが寝ている間にミケコをヨソのお家にあげてしまって、おじいさんはミケコに会えなくなってしまったそうで、おじいさんはとても悲しい思いをして、何日も泣いたそうです。
「そうだったんですか、縁の下より家の中の方が安全だし、食べ物も心配しなくていいし、本当に良かったですね。おじいさんも一人で寂しかったんですね。」
「良かったにゃ、おじいさんももう寂しくないにゃ。」
若者とにゃんこさんは美味しそうにご飯を食べ始めます。
「ごちそうさまなのにゃ、やっぱりお刺身は美味しいのにゃ。」「ごちそうさまでした。」「じゃあそろそろ遊ぶ時間にゃ。あ、お兄さんにお願いがあるのにゃ、にゃん吉くんちはおもちゃがないのにゃ。何かプレゼントしたいのにゃ。」「それは良いですね、明日はお隣も誘って、おじいさんも一緒にみんなでお買い物に行きましょう。」
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「では、でかけましょうか?何を買うか決まってるんですか?」
「決まってるにゃ」
「何にしたんですか?」
「やっぱりネズミにゃ・・・」「そうですね。」
「そうにゃ、ネズミのおもちゃにゃ。」「にゃんこさんはネズミが大好きですね。」
トントン、トントン
「にゃん吉くん、こんにちはなのにゃ。ママさんもおじいさんもこんにちはなのにゃ。」
にゃんこさんは若者と一緒にネズミのおもちゃをプレゼントにしました。
おじいさんはにゃんママさんとにゃん吉くんのためにベッドやトイレなどいろんな買い物をしました。一人で持つのは大変なので、重たい荷物は若者が持ちます。
買い物の後でみんなで池に行きました。そして神様ににゃん吉くんがママと会えた事、おじいさんのお家に引っ越して一緒に暮らす事を報告しました。
おじいさんは神様に以前悪い事をしようとした事があったのですが、すっかり反省してそれを謝りました。
「これからは爺さんもママさんも一緒に遊びに来るが良い。遊ぶのは大勢の方が楽しいからのう。」神様はおじいさんを許してあげました。
にゃんこさんには友達がたくさん増えました。
そして若者とにゃんこさんはいつまでも幸せに暮らしましたとさ、おしまい。