12話
僕は瞬さんにハンの事情について喰いつくように口を開けた。
「瞬さん、あの小さい男は子供がおり食べる為に仕方なく人攫いをしてしまったようです。彼がやった行いは間違っています。でも、彼には子供がおり、もし彼が帰らなければ家族はみんな死んでしまうかもしれません。何とかなりませんか?」
「おいおい、俺に逃せというのか?こう見えても俺は一等警務官だぞ?そんな事したらクビになっちまう。俊介が飯を食えなくなるわ。」
「そうですよね。でも、このままだと不憫に思いませんか?」
瞬さんの目線より下に見つめ願った。
俊介も後ろから援護するように父親に声を発した、
「親父、、本当にどうにかならねーか?」
瞬さんは大きなため息をついた。
何かを思い出すかのように腕を組み、頭を傾けてその細い目を閉じていた。
その細い目が片方開き、何かを思い出したように口を開いた。
「しかたねーなあ!逃すことはできんが、あいつの家族の飯くらいならどうにかできるかもしれん。俺が昔助けたやつに、魏に行商しているやつがいる。そいつ頼めば、この国に連れてきて住む事くらいはできるかもな!でも、働かないやつには誰も飯はくれんぞ。」
ハンは、牢を壊す勢いで叫んだ。
「だんな!ほんとうですかあ?!」
「あぁ、本当だ。成功するかわからんぞ。期待はするな!」
「だんな、この恩は一生忘れません。うぅ・・・」
「まだ、感謝には早いんだよ!」
ハンの目は涙で今にも崩壊しそうだ。
俊介は尊敬の眼差しで父親を見つめた。
「さすがだね。親父」
「あーんもぅ、まだ気が早いんだよ!」
俊介の親父の髪は、赤くなった耳を隠していた。
魏国とは国交が断絶したままだが、流通は途絶えておらず、行商は一部許可されているのを思い出した。確かに、問題なく国境を抜けれれば食糧と水には困らないだろう。
人攫いの家族という不名誉は拭えないだろうが、餓死するよりはマシなはず。きっと。
そう思うと僕の戦いは今終わった気がした。