一章続き
翔也の後を追うように校門をくぐる。
校門から校舎までのタイル道をひたすらに歩く。
うちの学校、私立志野学園は、全国でも珍しい、大規模な学園だ。
まず敷地面積がかなり広い。
正直自分の校舎に行くだけでも、下手をすれば30分かかる場合がある。
校舎の数が多く、新入生は、まず入学日から数日の間は校舎を覚えるための時間を設けられるレベルだ。
そして、小学部から大学部まで存在する。
なので、中には16年以上在籍している人間もいたりする。
もちろん小学中学が学園卒であれば、進学はしやすい。
卒業生にも有名人が多く、高校になると、専門的な学部が存在したりするため、学問だけではなく、運動や芸能などでも輩出者が多い。
そのため、全国的にもかなり有名な学校だ。
だが僕が、この学校のいいと思うところは、学園内に広がる自然。
この時期になると、今僕が歩いている道等の両脇には、鮮やかな緑の葉が付く木々が立ち並び、中庭には、向日葵がたくさん咲く花壇も存在する。
春になれば見渡す限り桜で一面が覆い尽くされ、秋になれば紅葉が楽しめる。
こういう話をすると、爺臭いと思われるかもしれないが、僕はこんなに素晴らしい学校は、他にはないと思っている。
誇りに思える。
「おーい、礼矢、翔也!!おはよー!」
タイル道を歩き切り、校舎にたどり着いたところで、目の前の下足箱辺りから、女性との声がかかった。
「百合菜、おはよう」
彼女は翔也と同じく中学からの同級生の風間 百合菜。
背丈は女子にしては高く、顔立ちも凛々しいので、女子にも人気がある。
剣道部の女子キャプテンだ。
「百合菜おはよう!今日もかわいいね!」
「はーい翔也、ありがとう」
「流された!めっちゃ簡単に流されたよ、礼矢!」
「うるさい、黙れ、いつものことだ。百合菜は朝練?」
「今日は1日オフだよ、昨日大会だったから。寮から直接きたの」
靴を履き替え教室に向かう。
3階建ての3階のため、まあまあ階段が面倒くさい。
教室にはクーラーがあるため、すぐに涼めるのは涼めるのだが、かなり気が滅入るな。
特に会話のないまま教室に入り、それぞれ自分の先につく。
座席に着くと、なにやらクラスメイトが騒がしいことに気がついた。
「どうした?何かあったのか?」
前の席に座って話していたクラスメイトに声をかける。
そいつは俺の方を振り返り、ダルそうな声を出した。
「聞いてくれよ尾崎!クーラーぶっ壊れた!」
本日は7月の上旬。
気温は29度。
なるほど、ここが地獄なんだろうか
なんか話が進まない笑笑