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箱の中のダイヤモンド  作者: たきかわ由里
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2-4


「ほんとだ、美味しい」

「チャーシュー丼もあるけど、まだしおんちゃん、シメに行く時間じゃないでしょ」

「当たり。あと何か、つまめるものでオススメ下さい」

「嬉しいね。じゃ、きのこバター」

「ちょっとユウセイさんさぁ。どんだけきのこバター推すの」

 呆れたような裕奈の言葉に、ユウセイは軽く返す

「いや絶対美味いし」

「もうちょっとね、自分の腕をアピールした方がいいよ?」

「俺のきのこバターはよそより美味いぜ」

「きのこバターはどこまで行ってもきのこバターなの!」

 昔、裕奈に連れていかれたヴェノムストライクの打ち上げでも、こんな息の合った会話が繰り広げられていた、と懐かしく思う。

 気が付いたら裕奈とユウセイの姿はなく、一人ぽつんと居酒屋に取り残されていたのだが。

 それも今となっては懐かしい思い出だ。

「じゃ、回鍋肉はどうよ」

「そうそう、そういうの!」

「きのこバターとそんな変わんねぇぞ?」

「あ、じゃ、両方下さい」

「ありがとうございやす! ちょっと待ってくれな」

 ユウセイはいそいそと冷蔵庫に向かう。

 隣の裕奈を見ると、その背中を目で追っている。それだけでわかる。裕奈はユウセイのことをまだ想っている。

 でも、互いに独身ならば何も問題はないのではないか。何が障害で、こんなふうにして彼と距離を置かなければならないのだろうか。

 そうは思っても、この場は裕奈のペースに合わせるしかない。積もる話をしようにも、彼氏という設定上、最近どうしているのかとは聞けない。

 裕奈が、ふとしおんを振り向く。

「ごめん、指輪はずしといてもらえない?」

 小声でしおんに囁く。確かに、しおんの指輪は結婚指輪然としているし、裕奈がつけていないのでは齟齬が起きる。

「あ、うん」

 左手の薬指から指輪を抜き取ってネックレスに通し、服の中にしまう。

 裕奈は手を合わせて、少しだけ頭を下げる。

 ここで話していい話題は何だろう。それがまったく思いつかず、何となく店内に目線を泳がせる。

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