11-10
「…裕奈ちゃん、それって」
「打ち上げお開きになったら、この裏の道で待っとって。車で拾うから」
ユウセイの口調を真似て、裕奈は呟く。
「同じじゃん。何で47にもなって、そんな扱い受けるの、あたし」
ユウセイが言った「話したいこと」が、本当に交際の申し込みや、プロポーズだという確証はない以上、しおんの口からそれは言えない。
万が一、それがしおんの思い違いであったら、更に彼女を落胆させるだけだ。
かと言って、今のユウセイがそんな一夜の遊びに裕奈を誘い出すとも思えない。再会してからもう4年も、良き話し相手としての関係を築いているのだ。それをこのタイミングで壊すことに何の得もない。
「だから、この後予定あるから、って断ったんだ。そしたら、彼氏もいねーくせに、って来たから…ほんと、あれはごめん」
「俺はいいんだけど…」
「で、ちょっと距離置こうと思って、連絡無視してた。でも悪い癖だよね。結局、今日顔見に行っちゃったんだから」
何も言えない。彼女が距離を置こうと思ったことは決して悪くない。誤解を招くような、過去の記憶があるのだから。
二人とも、ミュージシャンとオキニの関係だった頃と変わらない。けれど、大人になった部分が、近付くことに対して臆病になってしまっている。
「今日帰って来たのは、連絡取れないって文句言われたから、だけ?」
他の客がいる前で、本気で怒った訳でもないだろう。多分、彼なら軽い調子で言ったはずだ。
「…涼子がいた」
「涼子……あ、裕奈ちゃんが仲良くしてた」
「そう、オキニの子」
オキニグループの中でも、やはり話が合う相手合わない相手はあったようで、裕奈がそれなりに仲良くしていたのは涼子という少女だった。歳はしおんくらいだったはずだ。
「なーんで涼子が出て来るかなぁ」
裕奈は大きく息をつき、タバコを吸いながらドリンクメニューをめくる。
「仲良くなんかなかったよ。あの人の家でよくバッティングしてさ。トゲトゲするわけにいかないから、大人しく北斗の拳の話とかしてたけどさ」
「ユウセイさんの前で喧嘩するわけにいかないよね、それは」
「あの子はあたしのこと嫌いだよ? あたしが邪魔だったはずだもん」
表面的には円満な、取り巻き集団としては異質のグループだった。しかし、年頃の女の子が、想いを寄せているミュージシャンを中心に集まっているのだ。やはり、それぞれの心中が穏やかなわけがない。
「で、涼子ちゃんはどんな感じだったの」
「相変わらず、清楚系。女子アナかって感じのキレイめで黒髪でさ。猫なで声で喋るのも変わんない。…すみませーん」
手を挙げて、店員を呼ぶ。




