2-3
「彼氏いくつよ。裕奈より全然下だろ」
「全然って程じゃないよ。3つ」
「ってことは?」
「44です」
「マジで!? 35くらいかと思ったわ」
「一回りも下じゃ犯罪でしょ!」
「裕奈、とうとう犯罪者かって」
「いやいや、例え35でも成人じゃないですか」
3人で笑い合う。表向きは和やかだ。あえてこれを壊す必要はない。
「大体ねぇ、あたしだって結婚してたのよ?」
「過去形じゃねぇかよ」
「ユウセイさんもね?」
そう言えば、裕奈はバツイチだと言っていた。
そしてユウセイも過去形、ということは、離婚したのだと思って良いだろう。
「はいはい、仲間仲間!」
ユウセイは笑ってスタッフを呼び、出来上がった料理を渡す。
「彼氏は、近くで呑んでたんだろ? どの辺で呑んでんの」
「女子大です。あの、ケルベロスの和馬さんのバーによく行くんで」
「おー! 聞いたことあるわ。俺も行ってみたいな。メタルバーだろ?」
「はい。ハードロックも」
ユウセイがサイレントラヴァーズ解散後に結成したのは、ヴェノムストライクというハードロックバンドだった。ヴェノムストライクの名は、ケルベロスのメンバーも聞き及んでいた。
「面白そうだよなぁ」
「セッション出来ますから、ユウセイさんも来てくださいよ」
「歌っちゃうかな、俺も」
「是非」
そう答えて微笑むと、ユウセイは力強く頷く。
「行くわ。たまにはそういうのもな。ほい、ネギチャーシューお待ち」
差し出された皿を受け取る。たっぷりのネギと大きめに刻んだチャーシューが盛られている。
「わ、美味しそうですねぇ」
「美味しいよー。ほら、食べて食べて」
裕奈に急かされて箸を取り、つまみ上げて口に運ぶ。辛味が程よいネギと、とろけるように柔らかいチャーシューの取り合わせが絶妙だ。