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「そういうんじゃなくってさぁ。もうちょい凝ったの」
「長芋チーズはどうよ? あ、肉がいいか。男子だもんな」
「好き嫌いはないですよぉ」
男子、という響きにくすっとする。
「ネギチャーシューはオススメよ。チャーシューは、がっつり俺が仕込んでっからね」
「うん、チャーシュー美味しいよ。ほんと、そこらの中華料理屋より美味しい!」
裕奈は我がことのように、ユウセイのチャーシューを自慢する。別に仲違いしたわけではないらしい。
「じゃあ、それもらいますね」
「あいよーっと」
軽い調子も昔のままだ。
何故呼び出したのか、何故こんな嘘をついているのか、裕奈に聞きたいことはいろいろあるが、今は場の雰囲気も悪くない。それを聞くのは後回しにすることにする。
ユウセイは、しおんのことは覚えていないのだろうか。あのイベントの日、和馬をはじめとするケルベロスのメンバーと共に楽屋を訪ねたのだが、確かに直接話してはいない。出演者と挨拶を交わすケルベロスを横目に、しおんは親友であるルージュレイズの璃憂こと龍樹と話していただけだったから。
そんなことを思い返しながらタバコをバッグから取り出して、裕奈の手元にあった灰皿を少しこちらに引き寄せる。
視線を感じてそちらを見ると、ユウセイと一瞬目が合った。
そこには、笑顔はない。
やはり、裕奈の「彼氏」だということが気になるのだろうか。気が付かなかったフリをして、タバコに火をつける。
「裕奈ちゃん、よく来てるの?」
「うん。時々ね」
「めちゃめちゃ来とるがね」
名古屋弁でユウセイが口を挟む。
「そうなんですか?」
「時々じゃなくて、しょっちゅうだわ。あんまり来るから、お前彼氏の一人もいねぇのかよって」
「いるもんねー?」
なるほど、そういう流れだったのか、と一応理解する。
今でもここへユウセイに会いに通う裕奈が、ユウセイに気持ちを寄せていないとは思えない。けれどユウセイが結婚しているならそういうことにして、ある程度の距離を置きたい、ということだろうか。