94話 久しぶりの創造
「ロイワさん……大精霊の力を使ってくれるの?」
「勿論使いますよ!セーラーの好きにはさせません!」
理事長室にて。
リュユさんの前で大精霊の姿に戻った私は、先程まで被っていた魔導帽子に深々と手を突っ込むと、中からタブレットを取り出した。
「ミュラー!力を貸して!」
タブレットを起動し、画面に向かって声を掛けると……
「ん〜?……ロイワ、死神作る為に我を呼び出したのかヨ?」
タブレットの画面からピンクのパジャマ姿のミュラーがのそのそと現れ、私の前へと降り立った。
「ミュラー!実は私、作りたいも……もう知ってたの……?」
「我は何でも知ってるヨ〜」
私が喋る前から知っていたとは……流石ミュラー……
「そうなんだよ、実は「ほうほう、セーラーの部下を取り締まる生物を作りたいけど奴等は基本的に異次元で活動している為、普通に創造した生物では異次元まで入れない。
だから異次元でも移動出来そうで容赦無く相手を追い詰められそうな死神を創造したいが、ロイワ1人だけでは恐らく死神は作成不可能だから我にも手伝って欲しい…と。
分かったヨ、それくらいなら家賃代わりに手伝ってやるヨ」
「あ、ありがとう…!」
……こっちは話す手間が省けて助かるけど、ここまでピタリと言い当てられると少し悔しい気がする……
「勿論死神なら異次元を超えられるし、我も居れば死神を創造出来るヨ〜」
「良かった…!では早速「待って」
私は創造に集中する為にとりあえず両手を広げてみたのだが、直ぐにリュユさんに止められてしまった。
「あれ?どうしましたか?」
「確か死神は自然の大精霊も居ないと創造出来ない。生命の寿命や魂を読み取り扱う力は魔法だけでは補えない」
「……えっ?マジですか……?」
「うん、マジ」
「マジだヨ」
どうしよう……セレセルさん外に行ったっきり帰って来てないし、今現在も何処に居るかも分からないから探しようがないんだよ……
ってか、何故ミュラーは今の段階で死神作れないのに『創造できる』って言ったのさ……
「ああ、そこん所は我が何とかしたから大丈夫だヨ〜」
「何とか…?ミュラー、それどう言う事?」
「まあまあ、とりあえず死神を作ってみるんだヨ!」
「……分かった、ミュラーが言うならとりあえずやってみるよ」
私は改めて両手を広げ、死神のイメージを頭の中に浮かべながら意識を集中させた。
カ ッ ! !
一瞬目の前が黒く輝き、その黒い光の中から『赤いローブを纏い、巨大な赤い鎌を構えた真っ赤な骸骨』が姿を表した。
「ミュラー!これって…!」
「おーっ!無事に死神が完成したヨ!」
やったーー!!この死神今の私よりも背が高い上に物凄く強そうな気配を感じるし、何よりも物凄くカッコいい!!
「凄い力……ありとあらゆる生命を認識する力に、鎌には『必中』、『マルチタスク』により複数の分身体を作り出して活動出来るみたい。これならあの草人を一斉に取り締まる事が出来るかもしれない」
「ホントですか!?良かった〜!!」
一時はどうなるかと思ったけど、無事に目的の死神を作成出来て本当に良かった〜!!
「……ミュラー、一体何をしたの?どうやって自然の大精霊の力を持って来たの?」
「我は何も悪い事はしてないヨ〜」
「……ミュラーが何をしたのか気になるけど、とりあえず死神に指示を出さないとね」
「死神〜?折角だから新しい名前でも付けてあげたらいいのにヨ〜」
「私がそんな事したら日が暮れるよ!下手したら3日経過しても決まらない可能性もあるし……
死神、この世界に悪さをしようとしているセーラーと部下の草人を取り締まって!!」
『心得た……』
赤い死神は軽く会釈をすると、その場で何十体も死神とそっくりな分身を作り出しては壁をすり抜けて室外へと放出していった。
やがて分身が終わると、オリジナルである死神も理事長室の壁をすり抜けて去って行った。
「よし!これで草人の研究も何とか止まるかもしれませんね!後はセーラーの復活も阻止できれば……!」
「いや、あえてセーラーは復活させる。完全に復活した所を狙って永遠に消滅させる。セーラーを潰さないとずっと草人を使って悪さされるから」
「そうでしたか……分かりました!リュユさん、もしセーラーが復活した際は是非私も参加させてください!!」
「ありがとう、ロイワさんも居てくれたら非常に心強い」
セーラーとの戦い……何も悪い事が起こらないといいんだけど……
「さてと……では、私はそろそろ失礼しますね!」
私は吸血族の姿に戻ると、リュユさんに背を向けて理事長室の扉を……
「そうだ。ロイワさん、最後に1つだけ」
「はい、何ですか?」
「ロイワさんは『空間ごと切り裂く剣』を作成した上て所有してると朱雀から聞いた。その剣を私に貸して欲しい」
何故スザクさんがそれを……?いや、確か『魔法使い検定の時』にスザクさんに剣の話をしたような……
「それならいいですよ!はい、どうぞ!」
私は魔導帽子から目当ての剣を取り出すと、リュユさんにそっと手渡した。
「ありがとう。これでセーラーを何とか出来る」
「その剣でですか?リュユさんなら空間ごと切り裂く剣なんて簡単に作成出来るような気がするのですが……」
「うん。だけどこの剣はロイワさんにしか作成出来ない」
……?
「そうでしたか……えっと……とりあえず失礼しますね……?」
「分かった。ロイワさん、ありがとう」
「我はもう少しリュユ達と会話してから戻るヨ〜」
「分かった!では失礼しました!」
私はリュユさんに頭を下げると、ゴーくんを引き連れて背後にある大きな扉を開け、理事長室から退室した。
「あれ?」
「ん?ロイワも呼び出されてたのか?」
理事長室から廊下へ出ると、目の前には何故かリオの姿が。
「私も……って事は、リオも理事長に呼び出されたの?」
「ああ、校内放送で『リオは理事長室に向かうように』って名指しで指示されてな……多分前に旗取り合戦で起こったいざこざについて理事長から聞かれるんだと思うぜ」
「成る程……」
そうか、旗取り合戦があった日の前日から今日まで理事長は学校に来てなかったんだったね。リュユさん、めちゃくちゃ忙しい人だからなぁ……
「まあ、そう言う事だから、じゃあな」
「うん、またね」
リオは私に向かって軽く手を上げると、私の背後にあった扉を開けて理事長室へ入っていった。
リオも大変だなぁ……喧嘩したのはリオの意思だったとは言え、あの子に色々と嫌な事言われたみたいだし。
さてと、今はもう自由時間だし私は『人工精霊』を完成させる為に自室へ行くとしますか。




