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7話 魔族達の強化

自然の大精霊が冒険者達を全て近くの街に返しに行ってくれた。

「ありがとうございますセレセルさん。わざわざこんな仕事をして下さって…」

私は自然の大精霊、セレセルにお礼を言った。

「いえ、むしろ冒険者を連れて来たおかげであの案が出たようなものですし…

では…早速魔族の強化をしてみましょうか。皆様、此方へ来て頂けますか?」

セレセルは洞窟内に居る魔族を集めた。

センチはまだ帰って来ないので、私とヘルとセレセルの3人での話し合いになる。

ちなみに吸血鬼と妖精達は洞窟の奥に静かに戻るよう指示したので既にこの場所には居ない。

ウルフくんは洞窟の隅で待機している。


「まずはスライムですね…この子は生き物や植物の死骸を溶かし、魔力に変えて外に飛ばす役割を持っています。スライムの身体自体が魔力の核そのもののような…そんな感じの生き物です」

「魔力の核?」

「ロイワ様、魔力の核というのはですね…我々の体内にある、魔力を作り出してくれる器官の事です。確か…目玉と同じくらいの大きさの石のような見た目だったと思います。

この魔力の核が魔力を作り出してくれるので、その体内の魔力を使って魔法を使ったり、身体の傷を治したりできるのです。会話がスムーズに出来るのも魔力の核のおかげだと言われています」

私の疑問にヘルが答えてくれた。

「因みにさっきの冒険者達に魔力の核はありませんでした」

セレセルが情報を付け加えた。

「マジで!?」

全然分からなかった…今度冒険者と出会う機会があったらじっくり見てみようかな。

「恐らく魔力を持たない人間は、体内に魔力を持つ生き物に謎の恐怖を感じるから攻撃するのかと…いえ、今は強化の話でしたね」

セレセルは地面を這っていたスライムを抱えた。

「スライムですか…確かスライムは作り出す魔力が少ない上に、魔力を体内に大量に溜める事が出来ないので魔法が全く使用できない…しかも攻撃手段が殆ど無い無害な生き物ですよね…」

ヘルはスライムをまじまじと見つめる。

スライムはセレセルの腕の中でプルプル揺れている。スライムは何を考えているのかさっぱり分からない。そもそも考える頭があるのかもよく分からない…

「攻撃手段ねぇ…そもそも魔法使うには何が必要なの?」

私はヘルに尋ねた。

「そうですね…魔力を作り出す鉱石である緑水晶に、作った魔力を溜める鉱石の光水晶。その2つを組み合わせて作った人工魔石があれば魔法が使えるかと…

因みにこれが人工魔石です。自分の魔力が無くなった時の為によく持ち歩いているんです」

そう言ってヘルはポケットから小さくて丈夫そうな黒い袋を取り出し、その袋の中から1つのゴルフボールサイズの石を取り出した。

「へぇ〜これが人工魔石かぁ〜」

私はヘルが持つ人工魔石をまじまじと見つめる。

「こんな感じかな?」

私はヘルが持つ人工魔石とそっくりな石を1つ作ってみた。突然私の右手から現れた人工魔石っぽい石を見て驚きのあまり固まるヘル。

「試しに作ってみたんだけど…これちゃんと人工魔石になってる?」

私は作り出した人工魔石をヘルに手渡した。

「こ…これは確かに人工魔石ですね…」

やった!人工魔石の作成に成功したみたいだ!

「でも…人工魔石を1つ作り出すには長い年月が掛かる筈では…?」

「えっ?そうなの?」

私の両手から溢れ出る複数の人工魔石を見て更に固まるヘル。

「これをスライムに渡せばいいのですね?」

セレセルは私の両手から人工魔石を1つ取り、抱えていたスライムに与えた。

スライムは渡された人工魔石を体内に取り込んだ。すると…

「何か色が濁ってきた…」

スライムの透明な身体が濁り出し、体内が見えなくなった。薄緑色の身体がブルブルと震えている。

「大丈夫ですか!?これ大丈夫ですか!?」

ヘルは謎の反応をするスライムを心配しているようだ。

スライムの身体の震えが段々と小さくなり、やがてピクリとも動かなくなった。

「どうやらまだ生きているようですが…」

セレセルは抱えていたスライムを地面に下ろす。


すっ……


「「スライムが立った!!」」

私とヘルは驚いた。

あの水饅頭みたいな身体をしたスライムの体型が洋梨のような形に変わり

その身体に小さい手足が生え

その小さな2つの足で地面の上に立ったのだ。

スライムをよく見ると、小さな2つの目のようなものが見えた。


テクテクテクテク…


「二足歩行してます…」

ヘルは驚きながらぷよぷよと歩き回るスライムを凝視している。


ひょい


スライムはその辺に落ちていた青い石を拾い上げ、小さな手で石をくるくると動かして観察しているようだ。

「その辺の石持ち上げて観察してるね…」

スライムの行動に知性が感じられる…

間違いない、これは進化だ。人工魔石を取り込んだスライムは進化して新しい生き物になったんだ。

「このスライムから高い魔力を感じます…私1人ではスライムをここまで進化させる事は出来なかったでしょう…素晴らしいですね」

自然の大精霊セレセルは私の両手から人工魔石を取り出してはその辺で這い回るスライムに与えた。


周りに居たスライムは次々と変化し、やがて洞窟内に居たスライムは全て二足歩行になった。

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