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84話 陣取り合戦開始・2

「さあ!敵チームが動かない内に戦力を強化しましょう!皆さん、次は何をしますか?」


「そうだなぁ…次は我々の陣地に居る味方の幻獣に魔力を分け与えたいのだが…」

(幻獣とは、この世界では自我が芽生えた『精霊』の事を指す。

思考が獣に近く、滅多に人前に姿を現さない事から『幻獣』と呼ばれるようになった。

基本、野生の幻獣は魔族に迷惑ばかりかけるので『害獣』とも呼ばれている。)


「分かりました!では、今から春の陣地に居る幻獣全てに魔力の供給を開始します!

逆に、敵の陣地に居る幻獣は『分解消去』で全て消し去っておきますね!」


「分解消去…って何?」


「分解消去はですね、数年前から主に街中で使われるようになった防衛呪文の1つで、野良の精霊や幻獣を分解して消し去る事が出来るんです!」


「………」


「さてと…先輩方、後は何をしますか?」


「いや、もう俺達に出来る事は無い。と言うか無くなったな」


「……何も無いんですか?」


陣取り合戦はガチ対決って聞いたから、私が想像出来ないような凄い事をするのかと思ってたんだけど……


「何でロイワが意外そうな顔してるの…?」


「そもそもさぁ、ロイワはウチらの事超人か何かだと思ってない?」


「えっと…少なくとも私よりは遥かに魔法歴も実践歴も高いと思っています!」


「……そうか。とにかく、もう俺達に出来る事は何も無い!逆にロイワの手伝いをしたいくらいだ!」


「そ、そうなんですか…?分かりました…では、先輩方にはボスゴーレムの操縦をして頂きたいのですが…宜しいでしょうか?」


「ボスゴーレムの操縦…!随分と楽しそうだな!ああ、是非やらせてくれ!」


「いや、いくら安全だからと言っても『大将』であるガードさんが直接敵地に乗り込むのは…」


「あっ!大丈夫です!ゴーレムに直接乗り込むタイプでは無いので大丈夫です!念波が届く範囲までゴーレムの遠隔操作が可能です!ゴーレムを操作する装置がある操縦室はあちらで……」



ズダダダダダダダ!!!



私が操縦室を指差した瞬間、ガードさんとゲッパさんは一目散に操縦室へと走り去って行った。


「2人とも足早っ!」


ガードさんは人1人持ってた筈なのにめちゃくちゃ速かった……さすが大将。


「ゲッパがあんなに速く動くとこ初めて見たかも…アタシも操縦室行こ」


「えっと…此処は人が居なくてもゴーレム達が何とかしてくれますので、とりあえず私も操縦室に行きますね」


「私も!私も行くよ!」





ララさんとムヨンさんと一緒に操縦室に移動した。


室内の壁は無機質な白で、真っ黒な床の上には車の半分程の大きさの操縦席が5台設置されている。


その室内に設置された操縦席の1つをまじまじと眺めていたガードさんとゲッパさんは、室内に入ってきた私達を発見すると、私達に向かって一目散に駆け寄ってきた。


「ロイワは凄いな!あの一瞬でこんな凄い場所を作り出してしまうとは…!」


「ありがとうございます。一応事前に用意した設計図があった為、短時間で何とかなりました……」


「そうか!いやぁ、この部屋は本当に近未来って感じがして楽しいなぁ……」


「あ、ありがとうございます……あっ、そうだ。今からゴーレムの操縦方法を教えますね!皆さん、操縦席に集まって下さい!」


「操縦席ってのは、このデカい物体の事だな?」


「そうです!この操縦席はですね、精霊石のシステムを採用している為、この操縦席に着席して起動するだけで簡単にゴーレムを操作する事が出来ます!

既に操作出来るゴーレムは作成されているので直ぐに操作出来ますが、その代わり、操縦する際は精霊石を作動させる事は出来ませんので、ご注意下さい」


「よし、分かった!」


私の説明を一通り聴き終えたガードさんは、気絶中のアラさんを床に置いて1番手前にある操縦席に着席した。


「……失礼する」


「折角だしアタシもやってみよ」


少し遅れてゲッパさんとムヨンさんも操縦席に着席した。



「私は操縦しないで表に残っとくね」


「分かりました!あの、ララさん…床に置かれたアラさんはどうしますか…?」


「アラは…今目覚めたらまたロイワにちょっかい掛けそうだし、とりあえず魔法で縛っておこっか」


「あっ!それなら私が縛っておきます!『帽子で拘束』!」


私は呪文書に設定されている言葉をはっきりと口に出し、アラさんに人差し指を向けて指先をクルクルと三回回した。



シュルルルルルル!!



何処からともなく丈夫そうな縄がアラさんの周囲に現れ、アラさんの恰幅の良い身体にグルグルと巻き付いて拘束した。


「うわぁ…あっという間じゃん……」


「さて、とりあえずゴーレムの様子を見る為にさっきの部屋に戻りましょうか!」








一方、秋チームの陣地では……



秋の陣地の奥に建てられた巨大な城。


その城内にある玉座の間には秋チームのリーダーである角人の『スプレ』と、技術部部長のエルフ『アニー』が、奇妙な形の魔道具の前で言い争いをしていた。


「アニー!!一体どうなっているの!?」


「ええと…まず技術部部長である僕がマナタンクを使用して拠点となる城を作成し、それと同時にオカルト部部長のスニークが周りの幻獣を犠牲にして茨ドラゴンを召喚し……で、次はゴーレムを召喚しようと……」


「それは分かってるわ!何故急に魔法や魔道具が使用出来なくなったのかを聞いてるのよ!!」


「いや、技術部部長である僕でも流石に分からなくて…急に魔法が使えなくなったかと思えば、全ての魔道具が駄目になるなんて、今の今まで聞いた事が……」


アニーは先程から魔術書を操作し、魔道具を起動させようと頑張っているようだが、肝心の魔道具は一切反応していないようだ。


「貴方は学園内の中で誰よりも1番技術レベルが高いんでしょ!?何とか原因を突き止めなさい!!」



2人がそんなやり取りをしていると、短い杖を持った蜥蜴族の女性『スニーク』が玉座の間に入り、少し俯きながらリーダーの元に歩いて来た。


「リ、リーダー……」


「あら、スニークじゃない。ドラゴンは無事に召喚出来たの?」



「そ、それが……召喚、失敗した………あ、秋陣地に居る幻獣が全て消えた、から………」



「……は?」


「そっ、それどころか……両隣の陣地に居る幻獣も、消えてる……」


「なっ……!何ですって!?」


「リーダー、これは流石におかしいですよ!魔法も使えない、魔道具も起動出来ない、挙げ句の果てには味方の幻獣が消滅してしまうなんて……」


「リーダー!!」


スニークの話を聞いていると、更に玉座の間にゴブリン族の『ヤパチ』がやって来た。


「ヤバいです!春の陣地にこの城よりも遥かに巨大でめちゃくちゃデカい塔がパッと現れて…!そこから真っ黒な鎧ゴーレムが沢山やって来たんス!!」


「鎧ゴーレム!?」


「いや、それはあり得ない!春の陣地にはまともな技術者は1人も…いや、一応ロイワが居たか……

だが、ロイワにそんな技術力は無かった筈だ!!それは恐らくララの幻術により生み出された幻だ!!」


「出来るとか出来ないとかじゃなくて、確かに鎧ゴーレムが沢山居たんスよ!!」


「そう……それに、何故か春の陣地の幻獣は消えてなくて……しかも、どの幻獣も均等に強化されていた……!」


「ありえないわ!だって春には……」




『有り得ない?それは実際に目で見てから判断した方がいいと思うぞ!!』




「だっ…!誰!!誰なの!?」


『俺だ!!』


ガシャン、ガシャン、ガシャン……


地面が揺れそうな程に重い音を立てながら、秋チームの拠点である城の内部に『黒鉄で作られた大量の鎧ゴーレム』が入り込んで来た。


その鎧ゴーレムの群れの先頭には、他の個体より一回り大きな鎧ゴーレムの姿があった。


「なっ…!その声はまさか……ガード!まさかゴーレムの中に居るの!?」


『おっ!アタリだ!スプレ、先程から随分と慌てているようだな!大丈夫か?』


「大丈夫じゃ無いわよ!そもそも、何でアンタの陣地のゴーレムだけは動いているのよ!しかもこんなに沢山!!ガード、アンタ一体何をしたの…!?」


『俺のチームに天才が現れただけさ!

ゴーレムが沢山居る理由はな……このゴーレム達は何故か単体でも増殖出来るから短時間で大群を作れるんだ!


もう秋の陣地は大量のゴーレムで埋め尽くされているし、夏と冬は既に鎮圧済みだ!折角だからこの島の地図で見てみるか?凄い事になってるぞ?』


「凄い事…?」


「そもそも、この短時間でどうやってこの島の地図を作成したのよ…」


ガードが操るボスゴーレムから宙に浮かぶモニターが現れ、モニターに地図のようなものが表示された。




夏と冬の陣地が綺麗さっぱり消えていた。




「……え?何、これ……」


「この地図、秋と春の陣地しか写ってないぞ…?」


『夏と冬は消えた!』


「一体、何をしたらこんな事になるの…?」


『まあ、こういう事だ!降参するなら今の内だぞ?』


ガードが操るゴーレムと、ガード率いるゴーレム軍団は何も無い所から銃器を取り出し、秋チームに向けた。




「……降参?私がそんな事する訳無いでしょ?」



ガシャン…!


スプレは鎧ゴーレム達を一瞥しながらニヤリと笑うと、背後から大量の銃器を取り出した。


スプレの仲間も多少動揺しながらも、懐からハンドガンを取り出して鎧ゴーレム達に銃口を向けた。


「私が持っている銃は魔法要らずで高威力の攻撃を短時間で繰り出せるのよ?

魔法も魔道具も使用出来ない状況でも使用可能、更に貴方達鎧ゴーレムの外装に使用されている黒鉄位なら簡単に破壊出来るわ…!」


『そうか、お前達は最後まで戦う道を選んだ訳だな?それじゃあ俺は……




この場に居るゴーレム全員と一緒に自爆するぞ!!』




「……えっ?」


「い、いやいやいや…………は?」


ガードのとんでも無い発言に、この場に居る秋チーム全員が一斉に面食らった。


「ちょっ、ちょっと…?この場全員、って……?」


『ああ!秋の陣地に侵入した全員で爆発するんだ!』


「ゴーレム……この場に居る奴らだけでもかなりの数になるんスけど……?」


「まっ、待って!待ちなさい!!そんな事したら……!!」


『大丈夫、出来るだけ控えめに爆発するように調整するから!カウントダウン開始!3!』


「待ちなさい!貴方も爆発したらガードも巻き添え喰らうじゃないの!!」


『2!』


「待って!一旦カウントダウンを止めなさい!何故自爆しようと……!」


『1!』


「分かった!私達降参




カ ッ ! ! ! !




スプレの話を遮るかのように凄まじい閃光が迸り、形容し難い爆音が秋の陣地中に響き渡った。秋の陣地が土煙に覆われる。



やがて秋の陣地を覆っていた土煙が全て消えたが、秋の陣地も綺麗さっぱり消え去っていたのだった……

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