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83話 陣取り合戦開始・1

ミノタウロスの『アラ』が私のカウンターを食らって気絶している間、私達は陣取り合戦の作戦会議を行った。



まずは技術部の部長が居る秋チームを攻めるべきだとか、


恐らく1年生の居る春チームは全チームから狙われるだろうから、守りを固めつつ周りを混乱させるとか、皆んな周りをしっかり分析して真面目に話をしていた。


そんな中、私は今回の陣取り合戦において何をするのかを上級生達に詳しく説明した。


だが、私の説明を終えた後、ガードさんの口からとんでもない一言が飛び出した。




「よし!今回の作戦は全てロイワに任せよう!!」



「ええっ!?何故!?」


「私も賛成だよ。もしロイワの話が本当なら、20分もあれば全ての敵チームに攻め込む事が出来るんでしょ?」


「いや、20分でようやく攻め込む準備が整うんですよ!?」


「それでいいじゃん」


いやいや…20分もあれば上級生の皆さんは更にとんでもない物作成出来たりするでしょ……


「あのですね、私は……



カーンカーンカーン!!



私は何とか皆んなを説得しようとしたが、何処からともなく鐘が鳴る音とアナウンスに遮られてしまった。


『作戦タイム終了です!さーて、これからいよいよ陣取り合戦が始まる訳ですが……皆様、準備は宜しいでしょうか!』


「おっと…そろそろ時間か。アラ、そろそろ起きろ」


「………」


「目覚める様子は無し、か……」


ガードさんは部屋の隅で寝かされているアラさんを片手で持ち上げ、部屋の中央にある机の上に置いた。



それと同時に、机の上にコンパクトサイズの丸い魔道具が6つ、カタンと音を立てて現れた。



『配られた身代わりシールドを服に貼り付けたら、部屋に現れた円の中心に全員集まって下さーい!』


私達は言われた通り身代わりシールドを貼り付けると(ガードさんが寝ているアラさんの背中にシールドを貼り付けていた)、長机の隣に現れた光る円の中にそっと入った。




『さあ!皆さん、目の前のテレボにご注目下さーい!」


アナウンスの指示通りに壁に掛けられたテレボに目をやると、テレボの画面に四つ葉のクローバーのような形をした島が現れた。


1つ1つの土地が四季で彩られており、春の土地は色取り取りのカラフルな植物で溢れ返っていた。



『念の為、一応簡単にルールのおさらいをしておきましょうか!


この陣取り合戦は文字通り、自分達のチームに与えられた土地を守りつつ、敵チームを倒して土地を奪う、実にシンプルな競技であります!


土地の奪い方は至って簡単!敵チームの大将を倒すだけ!


最後に大将にトドメを刺したチームのものとなります!


奪った土地を利用して試合を有利に進め、最後まで残ったチームが勝者となります!』


ああ、いよいよ陣取り合戦が始まる……!ドキドキしてきた……!


『さて、ようやく全チームの準備が整ったようです!それでは……



合戦開始!!』



サアアァァァ……



アナウンサーによる試合開始の合図と共に、周りの景色が一瞬で変化した。


壁や天井が消えて淡い色の植物が生い茂る爽やかな景色が現れ、一面の花畑の中を吹き抜けて来た甘い香りのする風が私達の顔を優しく撫でた。



「始まったな。では……ロイワ、頼んだぞ!」


「分かりました!ではまず初めに…」


ドスン!


私は頭に被っている魔道具を用いて『転移』の魔法を使用し、帽子の中にある空間に仕舞い込んでいたマナタンクを私の約10メートル前にある何の植物も生えていないシンプルな土地に設置した。

(必要そうな魔法は簡単に使えるようにしといたからね、これで少しでも時間の節約が出来る筈!)


「(急に物が現れた…魔道具所か呪文や魔法の準備すらしてないように見えたんだけど……)」


「(しかもだいぶ離れたトコに出てきた……)」


「(ああ、凄く不思議だ……それに、これからロイワは『塔』を建てる筈なんだが…

まだロイワは『呪文を打ち込む』にも『魔法陣を描く』にも絶対に必要な呪文書を出していないんだ……一体此処からどうするつもりなんだ……)」


「では…行きます!!」


私は頭に被っている魔道具を起動させると、私の前に淡い白色に輝く『宙に浮く沢山の記号や文字』が現れた。


(よし、呪文書は上手く作動してる!)


私は帽子型の魔道具を使用してマナタンクの周りに魔法陣をサッと描いた。頭の呪文書には沢山補助も付けてるから、数分足らずで簡単に魔法陣が描けた。

(魔法陣発動!)



カッ!!



魔法陣を発動させた瞬間、魔法陣がマナタンクごと光り輝いた。


光は一瞬で収まり、先程までマナタンクが置かれていた場所を見ると……


魔法陣が描かれていた地面が抉れ、中央には真っ白で巨大な石が鎮座していた。


「な、何なのアレ……?」


「信じられないが…あれは魔石だな。見ろ、周りに生えている魔力を糧に成長する植物が急成長を始めている…」


「あの一瞬でこんな大きな魔石を作り出したの…!?」


昔は凄く難しくてやたら時間が掛かった魔石作りも、今の時代なら魔力と最新の魔道具さえあれば簡単に出来上がるからね!



「では、今から塔を建てます!皆さんはなるべく私の近くに集まって下さい!


私の一言を聞いた上級生達は、多少動揺しながらも私の周りに集まってくれた。


「ゴーくん、建設始めるよ!」


足元に居たゴーくんは私を見て一回だけ頷くと、巨大な魔石に向かって両手を突き出した。




ボ ォ ン ! !



突然、物凄い音と共に周りが頑丈な壁に囲まれ、私の身体に軽く重力がのし掛かった。



暫くすると、私に掛かっていた重力が消えた。



「な、何…何が起こったの…?」


「塔を作りました!今私達は塔の最上階、物凄く高い場所に居ます!」


「はあ!?どう言う事!?」


「とりあえずあの窓から外を見れば分かると思います!」


私の話を聞いた上級生達は、半信半疑で壁に出来た窓に向かって歩いて行った。私も一緒に窓から外を覗いてみると……


「……信じられない」


「超立派じゃん……」


「此処は確かに塔の中、しかもかなり高い位置に居るようだな。これは凄いな……」


「うんうん、ちゃんと設計図通りに作成出来たみたいだね!」



窓の外には真っ青な空が広がっていた。



眼下には敵チームの陣地が全て見え、眼下に雲が漂っている。


更に下を覗くと、下から伸び続けている塔の姿を何とか見る事が出来た。



「ミニゴーレム達、配置について!念波放出の準備して!」



私の腰にぶら下がっていたミニゴーレム達が次々と地面に降り立ち、ゴーくんの隣に移動して各々の仕事を始めた。



カッ!



一瞬、部屋の中央に鎮座している巨大魔石が輝くと、巨大魔石の周りにモニターが現れ、敵チーム全員の姿が映し出された。


「先程、島全体に念波を放出しました!これにより敵を全て監視出来るようになります!


更に、念波を浴びている敵は魔法・魔道具を使用不可にしたので、これで少しは時間稼ぎが出来たかと思います!この隙に私達の武力強化をしましょう!」


「……1つ質問良い?敵の魔法と魔道具の使用不可はいつまで続くの?」


「ずっと続きますが、上級生ならすぐにこれを解除出来るかと思って……とりあえず、塔の作成と共に、地下にゴーレム工場を作成したので、数分経過すればある程度の武力は確保出来ますよ!」


「わ、分かった……」


ロイワの話を聞いたララは、ムヨンに顔を近付けて周りに聞こえないようにこっそりと話を始めた。



「(ねえムヨン、これってさ……もう敵を完封してない?)」


「(うん……でも、敵の大将を討伐しないと合戦は終わらないよ?)」


「(そうだよね………私、ロイワと同じチームに入れて良かったと思う……)」


「(ウチも……)」

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