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77話 旧大陸の真実

センチと共に自宅で豪華な夕食を堪能した後、自宅の屋上に置いていた高級そうな黒い車に乗って『自然大精霊博物館』へと移動した。




「うわぁ……広すぎでしょ……」

博物館の中は物凄く広くて、その広過ぎる空間内には植物を模した装飾が沢山散りばめられていた。

(めちゃくちゃ広いなぁ、下手したら迷子になってしまう……)



「すいませーん。私達、神様を見に来ました」

センチは博物館に入ってすぐ受付に直行すると、懐から取り出した『カード』のようなものを受付の鳥人にチラッと見せた。


「……かしこまりました。では、私について来て下さい」


鳥人は受付カウンターから出ると、私達を博物館の奥へと案内し始めた。



博物館内を移動中、私は周りをキョロキョロと見回して軽く展示品を眺めていた。


セレセルさんが今までに作り出した魔人や植物の模型、セレセルさんが使ったフォーク、セレセルさんの歴史、セレセルさんの足跡……


重要そうな展示物からどうでも良さそうな物まで、セレセルさんに関するありとあらゆる物が多数展示されていた。




展示品が並べられた長い廊下を歩き続け、突き当たりにある両開きの大きな扉を開けた。



扉を開けた先にあったのは、シンプルな白い壁の大きな部屋。その部屋の中央には優しく微笑む巨大なセレセルさんの絵が飾られている。


そんなセレセルさんの隣には、非常に活発そうな可愛い少女も写っていた。




「あの、セレセル…様の隣にいる子って誰?」

私は博物館の中を案内する鳥人に『謎の女の子』について尋ねてみた。


「ああ、あの方はセレセル様の妹様であるリリハ様でございます」

妹……あっ!あの子が前にルーサーが言ってたセレセルさんの妹!?


「精霊様には性別は無いのですが、セレセル様がリリハ様を妹として可愛がっていたので、世間でもセレセル様とリリハ様は姉妹として認識されているようです。

そうそう、世間と言えば……リリハ様は世間では『動物を司る大精霊様』と言われていますが、能力自体はセレセル様と大差無かったと言われています」


「そうなんですか……あの、リリハ様は今何処にいるんですか?」

私、大体の大精霊とは会った筈なんだけど、リリハさんには一度も会ったことが無いんだよね……


「残念ですが……リリハ様はカムヤナ人との戦争…つまり勇者戦争が勃発した際、勇者の容赦無い攻撃を受け、最後には消滅してしまったと言われています。

なので、もう我々がリリハ様を肉眼で認識する事は2度と無いかと……」

「そうだったんだ…」

セレセルさんが妹の話をしないからおかしいなとは思ってたけど……妹さん、もうこの世に居なかったんだ……


「さてと……皆様、その場で少々お待ち下さい……」

鳥人は何も無い壁に向かって何やら独り言を呟いている……


暫くすると、セレセルさんの巨大な絵画が上に向かって静かに動き出し、絵画の裏から謎の洞窟の入り口が現れた。


「これは…」

「何故博物館に洞窟があるの…?」

「私の案内はここまでです。皆様、このまま前へとお進み下さい」

「うん、此処まで案内ありがとね。ロイワ、ダンデ、行こっか」



洞窟の中を歩き続ける事数十分……



「ほら、着いたよ」

狭い洞窟の道を抜けた先にあったのは……




緑色の巨大な像だった。



「デカっ…!」

「これは……想像以上だ……」



私の大精霊の姿とほぼ同じくらいの背丈の巨大な像が、周りの装置により綺麗にライトアップされていた。


巨大な像の前には透明な壁で隔てられている為、直接触れる事は出来ないようだ。


「これがセレセルさんの博物館にあるって事は…これセレセルさんが作ったものなの!?」

「そうだよ。これはね、旧大陸の『始まりの森』と呼ばれていた場所の地下から発見されたんだよ」

「始まりの森…?」

「始まりの森じゃ分かり辛いよね。ロイワが生まれた場所の近く、って言ったら分かるかな?」

「……そんな近くにあったの?」

私が生まれ場所って……セレセルさんと会った場所でもあるよね……えっ?そんな場所にこんな巨大な像が埋められていたの?


「おや、ロイワ様が生まれた土地の近くにあったとは……灯台下暗しでしたな」

「凄いね……これ、何の為に作ったんだろう……」


「とりあえずこの像についてわかった事は……



この像を動かす為には強力な魔導師の命が1人分必要なんだってさ」



「えっ!?」


(この像、命を使用して動くの…!?)




「……突然話は変わるけどさ。昔、私達が旧大陸に飛ばされた話は知ってるよね」

「うん!そのお陰で私はセンチとヘルに会えたんだよね!」

「そうだね。私が勉強の為に古い地図を買ってさ…で、ヘルが地図に触れた瞬間、私達は旧大陸に飛ばされたんだよ」

「そうだったね……」

懐かしいなぁ……



「……実はね、私達を旧大陸に飛ばした犯人はセレセルだったんだよ」



「……えっ?」




「……この像が発掘されてから数日後、軍に所属している仲間の花人が白状したんだよ。セレセルから『セレセルの元に偉大な魔法使いを1人送れ』って指示を夢で聞いたって。だから軍の中であまり面識の無い、中々強い魔法使いのヘルをセレセル様の元に送ったってさ」


「花人はセレセルが作り出した魔人だヨ。きっと、念話で遠くにいる花人に命令を下したんだろうヨ」

「ミュラー!」

「面白そうな話をしていたから出てきたヨ!ロイワ、此処まで話を聞けばコレがどう言う事かもう分かるはずだヨ」


あの巨大な像は強力な魔法使いの命で動く……ヘルも強力な魔法使い……セレセルさんは命令で強い魔法使い、ヘルを旧大陸に……



「……察しの悪い私でも分かったよ。これは……



「そうです。セレセルこと私は、妹の敵であるカムヤナ人を滅ぼす為、巨人の動力源である魔法使いのヘルを旧大陸に呼び寄せたのです」



「うわぁあ!?!?セレセルさん!?!?」



私達の背後にはセレセルさんの姿が……そんなセレセルさんの体には光妖精が数人纏わりついている。

『セレセル様、ロイワ様が博物館に入るのを全力で止めようとしたので……』

『光妖精が総出でミュラー様と共にセレセル様を拘束していました!!』

『ですが、ミュラー様が外れてしまったので、あっという間に拘束が解かれてしまいました……』

そうだったんだ……




「もう此処まで来てしまったのであれば、私はもう逃げも隠れもしません。全てお話ししましょう……」

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