76話 光妖精情報網
「ねえミュラー…次の目的地って言ってたけど、一体何処に行くつもりなの?」
ミュラーに首根っこを捕まれながらの飛行中の移動中、私はミュラーに次の目的地について尋ねてみた。
「今から白い魔女の元に行くんだヨ」
「あ、白い魔女って前の冒険ごっこの時に行く予定だった場所?てかさ、白い魔女って、もしかして私が旧大陸に置いてった光妖精だったりする?」
「そうだヨ。ロイワがこの旧大陸を去った後も自らの意思で残り続け、ロイワの為に土地を確保し続けていたようだヨ」
光妖精達、私の為にそんな事をしてくれていたの…!?
「ほれ、あの塔も、塔の周りにある真っ白な街も光妖精の領土なんだヨ。旧大陸に残った光妖精共は周りにある街を次々と襲っては自分の陣地に変えていったんだヨ」
「えっ!?あの白い土地全部光妖精の領土なの!?」
遠くに見える白い塔も中々大きいけど、その周りの土地もめちゃくちゃ大きくない!?
「私の為にこんな大きな土地を……気持ちは嬉しいけど今はまだ必要無い……ん?」
魔女の塔が段々小さくなってるような…よく見ると周りの白い建物も消えてる?
白い魔女の塔は目に見えて分かる程に小さくなっていき、やがて私達の目の前から消えてしまった。
「……え?領土が……消えた?今何が起こったの?」
「行けば分かるヨ」
『ロイワ様、お待ちしておりました』
私達が白い魔女の塔があった森へと着地するのと同時に、真っ白な水晶で作られた鎧を身に纏った背の高い光妖精が数人現れ私達の前で跪いた。
「あれ?何で私が大精霊のロイワだって分かったの?」
『我々は常に仲間と情報共有しているのです。ロイワ様、女王様の元へ案内致します』
『護衛は我々にお任せ下さい』
『因みに此処、元はエントランスがありました!』
「そうだったんだ…じゃあ、案内宜しくお願いしまーす!」
『此処は謁見の間があった場所です』
鎧姿の光妖精達と共に森の中を歩き続け、やがて見覚えのある洞窟が現れた。
(此処…私が生まれた洞窟だ…)
その洞窟の前には沢山の光妖精達が並んでおり、その光妖精達の先頭には、豪華なドレスを着た超美人な光妖精が立っていた。ドレス姿の光妖精の胸には真っ赤なブローチが輝いている。
『ロイワ様、遠い国から遥々、ようこそお越しくださいました。私はこの光妖精達の女王で御座います』
「あ、ありがとうございます…?」
私、こんな美人な光妖精作った覚え無いんだけど…あの真っ赤なブローチには見覚えあるんだけどなぁ…
「(ロイワ、女王が着けてるブローチには見覚えあるヨ?光妖精はあのブローチのおかげで急成長し、女王レベルの力を身に付けたんだヨ)」
「(そうだったんだ!?)」
あのブローチにそんな力あったの!?
『話は既にミュラー様から聞いていると思いますが…ロイワ様がこの土地を離れた後も、我々はずっとこの土地を守り続けてきました。ですが、ロイワ様にはこの土地は必要無かったようですね…』
あっ…さっきの話、聞こえてたんだ…折角頑張って土地を広げてくれたのに、私の発言一つであっという間にけしてしまって……何だか申し訳無いね……
『我々の土地を守る役目はもう終わりました。これからは全身全霊でロイワ様をサポートさせていただきます』
「……え?」
これはもしかして、この場に居る光妖精全員私に付いてくる感じ?結構な量がいるんだけど?
「(ロイワ、タブレットを取り出すんだヨ)」
「(えっ?タブレット?)」
ミュラーに言われた通りにタブレットを取り出してみると…
『失礼します』
光妖精の女王は一言述べると、私が持つタブレットの中へと吸い込まれていった。
「えっ!?」
『失礼します!』『ご迷惑をおかけします…!』『不束者ですが…』『失礼しまーす!!』
「えっ!?えっ!?何これ!?」
目の前にいる光妖精達が次々とタブレットに吸い込まれていく。
やがて、光妖精達は1人残らずタブレットの中へと入っていったのだった。
「白い魔女の軍団、ゲットだヨ!!」
光妖精達もこのタブレットに入れたんだ…いや、何で光妖精達私のタブレットの事を知ってるの!?まさかミュラーが情報横流しとかしたの?
『ロイワ様、聞こえますか…?』
「あっ!光妖精の女王様!」
光妖精の女王がタブレットの中から語りかけて来た。
タブレットの中では、沢山の光妖精がタブレットの中で忙しなく動き回っている。
『先程も申しました通り、これから我々はロイワ様を後方からそっとサポートさせて頂きます。
今まで我々はロイワ様を探す為、各地に光妖精を配属しているのはご存知でしたか?』
「あっ!その話、学校にいた光妖精から聞いたような…」
『今我々は、各地に配属している光妖精が集めた情報を全てこのタブレットに纏め、いつでも閲覧できるようにしているのです』
「えっ!?」
凄い!まるでインターネットみたいだ……!!
『タブレット内の整備が終われば片手で『近所で1番人気の飲食店』や、『世界の歴史』、『料理のレシピ』……ありとあらゆる情報が簡単に閲覧できるようになります。乞うご期待下さい』
「うわぁ!それ物凄く便利だよ!みんな、ありがとう!!」
まさかこの世界でネット(っぽいもの)が使えるようになるなんて…!
「まあ、色々と大変だったけども、これで無事に大自然感謝祭が開催されるんだよね…」
「いや、今年は大自然感謝祭は開催されないヨ」
「……えっ?今年はもう開催されないの?」
「祭りの中止はもう決まった事だからヨ。だけど、来年は無事に大自然感謝祭は開かれるから安心するんだヨ!!」
今年は祭り無いの!?そんなぁ……いや、来年は無事に開催されるならそれでいいかな……
「ほい!ロイワの自宅に到着したヨ〜!」
光妖精との再会した後、ミュラーは私を遊園地の近所にある大きな自宅まで送り届けてくれた。
夕陽は沈みかけ、辺りは随分と薄暗くなっており、目の前の豪勢な自宅には既に明かりが灯っていた。
「ロイワ様!お帰りなさいませ!!」
ミュラーがタブレットに入り込んだのと同時に、自宅からダンデが飛び出して私を出迎えてくれた。
「ニュース見ましたぞ!向こうの大陸では大層ご活躍なされたようで…!」
「えっ!?アレもうニュースになってるの!?」
「はい!実際にはロイワ様とミュラー様が活躍したのではないかと、曖昧な表記になっていましたが……旧大陸に蔓延る害獣が弱体化したり、謎の浮遊物が消滅したり、カムヤナ人が突如行方不明になったりと色々と放送しておりました!ニュースはバッチリ録画もしていますので、後で一緒にじっくり観ましょう!!」
結局私がやったって事バレてんじゃん……ん?カムヤナ人が行方不明?何それ?
「ロイワ、やっほー!」
「センチ!?」
ダンデと会話をしていると、何故か私の家からセンチが飛び出して来た。
「わざわざ私の家まで来てくれたの!?」
「うん!ちょっとロイワに伝えたい事があってね!本当は口頭で伝えに来ただけだったんだけどね〜。ロイワが帰ってくるまで待ってていいよってダンデに言われたからさ、折角だからご好意に甘えて大人しく待ってたって訳だよ!」
「そうだったんだ!で、話って何?」
「いや、どうしてもロイワに見せたいものがあってね…ロイワは自然大精霊博物館って知ってる?」
自然大精霊博物館…つまり、セレセルさんの博物館だね。建物自体は見た事があるけど、中は見た事が無いんだよね。(毎回セレセルさんに邪魔される為)
「うん、知ってるよ!まだ中に入った事無いから行くの楽しみだよ!」
「それは良かった。出来ればすぐに行きたいんだけど…ロイワの都合の良い日はあるかな?」
「あるよ!何なら今日の夕食後にすぐ行っても大丈夫だよ!」
「ホント!?」
「うん!そうだ、折角此処まで来たんだからセンチも私達と一緒に晩ご飯食べない?ダンデもいいよね?」
「はい、勿論で御座います!」
「やったー!じゃあお言葉に甘えていただきまーす!ロイワ大好きー!!」
私達は顔を合わせて笑い合うと、温かい明かりが灯る大きな自宅へと入っていったのだった。




