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74話 旧大陸と球体

私はミュラーに連れられて、旧大陸へと移動した。


移動先が大きな害獣の巣だったから、早速害獣駆除をする事になったんだけど……


「駆除完了だヨ〜!」

「物凄い数だったね〜…ミニゴーレム達もお疲れ様!」


この蜘蛛型の害獣は巨大な身体をしている上にやたら数が多かったのだが、対して強くなかった為戦闘はあっという間に終わってしまった。


私達の周りには巨大蜘蛛が落とした肉や石が散乱しているが、どのアイテムも不気味過ぎて持ち帰る気にはならなかった。



「さてと…ミュラー、これからどうするの?」

「とりあえずこの地下から脱出するヨ〜!いでよドラゴン!!」


ズルリ……


ミュラーが大声で叫ぶと、ミュラーの足元にある影から黒い何かがズルズルと這い出て来た。


筋肉質な前脚、禍々しい頭、おどろおどろしい翼が生えた巨躯……



『グォオオオオオオオ……』



やがて、ミュラーの目の前に闇色の不気味なドラゴンが誕生した。


「凄く大きなドラゴンだね〜」

「ダロ?折角だからロイワも自分でドラゴン作ってみてヨ!」

「分かった!!それっ!!」




バキッ!!



私は自分の本体である指輪がはめられた方の手で、ゴツゴツの地面を思い切り殴った。


バキン!!ミシミシミシ……


地面から赤い金属が飛び出し、メキメキと音を立てながら少しずつ地上に這い出て来た。


「私のドラゴン完成!」


私の足元に、真っ赤な鎧のような外殻に覆われた大きなドラゴンが誕生した。


「オォ〜!ロイワの鎧ドラゴンカッコいいヨ!」

「でしょ?これで外に出られるね!」

私はミュラーと会話しながら鎧ドラゴンの背中に座ろうとしていると……



カラン……



「ん?」

洞窟の隅から何かが落ちる音が聞こえて来た。


「………あっ!ミュラー、向こうに誰か居るよ!!」


どうやら、洞窟内に張られた蜘蛛の巣の裏に人が隠れていたようだ。周りの害獣に気を取られてたから全然気付かなかった……


まさか……あの人、ミュラーや私がドラゴンを作ってる所を見てしまったのでは……!?

いや、ミュラーなら記憶の改竄くらい楽に出来るだろうし、大丈夫だよね……多分



「知ってるヨ、どうせ何を見られようが構わないから無視してたヨ。でも、折角だから我々の暇つぶ…害獣駆除に付き合って貰うヨ!サンナ、こっちに来るんだヨ!!」

「!?はっ、はい!?」

突然ミュラーに名前を呼ばれ、蜘蛛の巣の裏にいた人は驚きながらも、駆け足で急いで私達の元へとやって来た。



サンナと呼ばれた人は青いオーガの女性で、魔王軍の軍服を着た活発そうな人だった。


「あ、あ、あの……初めまして……!ミュラー様…って……大精霊様のミュラー様でしょうか……?」


「オウ、そうだヨ。で、サンナはあっちの鎧ドラゴンに乗って、ロイワに害獣に関する今の状況を簡単に説明してほしいんだヨ」

「あっ!は、はい!分かりました!!出来る限り手短に説明しまっす!!」


「うんうん、いい返事だヨ!ヨイショーー!」


ブンッ!!


「うわぁああ!?!?」


ミュラーはサンナを片手で掴み上げると、私が乗っている鎧ドラゴンの上目掛けてサンナさんを軽く放り込んだ。


「危ない!!」


ガシッ!!


私は飛んで来たサンナさんを咄嗟にキャッチすると、私の背後に丁寧に座らせた。


「危ないなぁー……サンナさん、大丈夫ですか?」

「び、びっくりし……しました……大丈夫です……」

「ナイスキャッチ!ロイワならしっかりキャッチ出来るって思ってたヨ!」

「だからって人を投げるのはやめてあげてよ……」

「そんなとやかく言うんじゃねぇヨ。さて、いよいよ出発だヨ!!ロイワ、我の後に遅れずについて来るんだヨ!!」


ミュラーが闇色ドラゴンの背中に飛び乗ると、闇色ドラゴンは上に空いている大穴に向かって飛び始め、あっという間に姿が見えなくなった。



うわっ!いきなり!?私も急いで追いかけないと!



「サンナさん!私にしっかりと捕まってて下さい!!」

「はっ、はい!?」

「行けっ!鎧ドラゴン!!」

『ゴロロロロロロロ……!』



鎧ドラゴンは空に向かって一声鳴くと、大地を蹴って思い切り飛び立った。



ゴォオオオオオオオ!!



鎧ドラゴンはあっという間に洞窟から抜け出し、ミュラーが乗っている闇色ドラゴンの後を全力で追いかけ始めた。



ゴォオオオオオオオオオオオオ!!!!



雲一つない青空を物凄い速さで飛び、あっという間にミュラーが乗っている闇色ドラゴンに追い付いた。


「ミュラー!!お待たせー!!」

多分ミュラーならどんな音も拾えるだろうが、一応大声を出してミュラーに話し掛ける。


「全然待ってないヨ〜!さあ、このまま直進するヨ〜!!」

「分かったー!所で……ミュラーは今、何処に向かって飛んでるの?」

「アレだヨー!」


ミュラーが指差した先に、茶色の球体が宙に浮かんでいるのが見えた。



どうやら相当大きな球体のようだ。よく見ると、枯れた植物のみで形成されているように見えた……えっ、何アレ……



「ミュラー!あれ何なの!?」

「アレの説明はサンナに任せるヨ〜。サンナ、ロイワに簡単に説明するんだヨ」

「わっ、分かりました…!?あの、私もよく分からないのですが……あの球がこの大陸に現れてから、今まで楽に倒せていた害獣共が急に強くなったんです……多分、あの球体さえ無ければもっと早く害獣駆除が終わっていたと思います……」

「成る程…よく分からないけど、アレが魔王軍を梃子摺らせ、大自然感謝祭を中止にした元凶なんだね……」

あの球体さえ無ければ大自然感謝祭が予定通り行われていた筈なのに…!!



「ミュラー!あの球体を潰そう!!」

「あっ!無理です!占い師の話によると、『あの球体を潰すには街に巣食う害獣の王を倒さなくてはならない』と言ってました!!害獣の王はあの球体の周りにある街の中に住んでおり、全て倒さないとあの球体に近付けないそうです!!」


えっ?球体の周りの街って…結構沢山あるんだけど?あの球潰すのにそんな面倒な手順踏まないといけないの?


「仕方ない、こうなったら私が害獣の奴を潰してくるよ」

いくら害獣の王とは言え、最近私が覚えたUFOビーム使えばあっという間に消せるでしょ。

「いや、今回は我が潰すヨ。ヨイショ…」


ミュラーは闇色ドラゴンの上で直立し、茶色球体に向かっておもむろに右手を伸ばした。



『沈め』




ボ  ォ  オ  オ  ン  !  !





物凄い音が響き、球体の真下辺りにある街から物凄い土煙が吹き出して街全体を覆ってしまった。



やがて街を包んでいた土煙は全て強風に吹き飛ばされ……



「な、な、無くなって…る……!?」



先程まで球体の下辺りにあった筈の街が跡形も無く消えてしまった。流石魔法の大精霊……




「うわぁ…随分と綺麗になったね…」

どの街にどんな害獣の王が居たのかも分からない程に綺麗さっぱりだ。


「デショ?これならみんなであの球体の中に侵入出来るヨ!さあ、レッツゴーだヨ!!」

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