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別視点 4人の冒険者

ここは「始まりの森」と呼ばれる森の中。

4人の冒険者は辺りを見回しながら、鬱蒼と茂った森の中を進んでいた。

「あの魔族に逃げられたか…」

剣を構えた黒髪の男は顔を顰めながら呟いた。

「ダメね…魔力探知にも引っかからないわ…」

杖を構えた金髪の女性は探知を止め、ため息混じりに言った。

「なぁ…もう帰らないか?そろそろドルトの街に戻らないと、下手したら今日は外で野宿する事になるぜ?」

腰に銃のような物を提げた金髪の男が皆んなに話しかける。

「ねえ、ドルトの街に一瞬で戻れる転移石買ってあるんでしょ?暗くなるまで粘ってもいいんじゃないの?」

鉤爪を両手に付けた茶髪の女性はまだ諦め切れないのか、苛つきながら3人に提案した。

「駄目よ!転移石は値段が高い上に一つでたった一回しか使えないのよ?

見つかるかも分からない魔族2匹を探す為なんかに使える訳無いでしょ!?」

杖の女性は首を横に振りながら答える。

「その通りだ。ドルトの街のは王都のと比べればまだ安いが、それでも無駄に消費できる程安い物じゃないからな?」

剣を構えた男は杖の女性に同意しながら鉤爪の女性を説得している。

「でも、あの魔族倒せば転移石買ったお金分を余裕で取り戻せる上に新しい防具買えるでしょ!

シーザは「あの魔族が街に来られたらヤバい」とか言ってたけどさ、本当は新しい防具や武器の為にあの魔族追ってたんでしょ?」

鉤爪の女性は剣を構えた男を必死に説得している。

「街の為に決まってるだろ。まあみんなの武器を新調できるとも考えたりしたが…ほら、今日はもう切り上げてギルドがあるドルトに帰るぞ」

シーザと呼ばれた男は、探索をやめて森の出口に向かって歩き始めた。

「スライムの素材は早めにギルドに提出しないと金にならないからな…まあ、今回は諦めろよ」

「はぁ…仕方無いなぁ…」

銃を持った男も説得し、渋々納得しシーザの背中を追いかける鉤爪の女性。


ギィイイイイ…

「何の音だ?」

シーザは辺りを見回した。

「空に大きな魔物が居る!しかもこっちに向かって来るわ!みんな武器を構えて!」

杖の女性は全員に向かって叫んだ。

「何っ!?もしかしてガルーダか!?」

シーザは剣を構える。

「それなら俺達でもギリギリ何とかできるな!」

金髪の男は空に向かって銃を構える。

「あれって…デカい蝙蝠?」

鉤爪の女性は身構えながら空を飛ぶ生き物を確認した。


バサバサバサバサ……ズシン!

謎の生き物は周りの木や枝を巻き込みながら着陸した。


『ギィィィイイイイ!!』


シーザ達の前に降り立ち悍ましい大声を出したのは、鎧のようなものを身に纏った巨大な赤い蝙蝠だった。

赤い蝙蝠は大きな翼を広げて冒険者を威嚇しているようだ。

「こんな場所に鎧蝙蝠!?色が真っ赤な奴は初めて見た!」

「しかも普通のヤツよりかなりデカいぞ!俺と同じ大きさじゃねぇの!?」

シーザと銃の男は驚きながら赤い蝙蝠を凝視している。

「2人ともボーッとしないでよ!!」

鉤爪の女性は赤い蝙蝠に向かって走り、鎧に覆われていない翼の膜を両手で引っ掻いた。だが…


ボキッ!!


「ああああ!!鉄の爪が折れた!!!」

何と、両腕に付けた鉤爪の爪が翼の膜に負けて全てポッキリと折れてしまったのだ。

「シーザ!受け取って!」

杖を構えた女性は呪文の詠唱を終え、シーザの剣に補助魔法をかけた。

「くそっ!!これでも喰らえ!!」

シーザは魔法で強化されて真っ赤に輝いた剣を、蝙蝠の喉元にある鎧の僅かな隙間に突き刺した。


ボキッ!!


ドスッ!


シーザの剣が半分折れ、輝きを失った先端部分が地面に突き刺さった。

「なっ!?補助をかけた黒鉄の剣が…!」

「化け物め!これならどうだ!!」

金髪の男は銃の照準を蝙蝠の右目に向け、何発も打ち込んだ。

「雷の裁きを!」

杖の女性は呪文を詠唱し、空から呼び出した雷で蝙蝠の身体を貫いた。

森の中で乾いた銃声が響き、大きな雷鳴が轟いた。激しさのあまりに周りが煙で包まれた。

「やったか…?」

辺りを舞う煙が晴れて蝙蝠が姿を現す。


『………』


蝙蝠は無傷のままだった。


翼を広げたまま、冒険者達を睨んでいた。

「なっ…何だよアイツ!確かに目玉を狙った筈だぞ!!」

「駄目!私の魔法が全く効かない!」

銃の男性と杖の女性は目の前の光景を見て真っ青になりながら叫ぶ。

「……」

蝙蝠は翼を広げたまま、冒険者達を睨み続けている。

「……こいつ、さっきから全く動かないぞ?俺達を観察しているのか?」

銃の男性は目の前の蝙蝠を視界に入れたまま後退り、仲間と会話をする。

「もしかして…さっきの魔族2人を守っているのか?」

シーザも蝙蝠から距離を取りながら会話を続ける。

「……空を飛ぶ敵が増えてきたわ。他の敵に気付かれないように静かに逃げるしか無いわね…」

杖を掲げた女性は諦めた顔でシーザを見る。

「そうだな、折れた金属は後日回収しに来るしか無いか…襲われる前に逃げるぞ!」

冒険者4人は、赤い蝙蝠から逃げるように始まりの森から脱出した。


「酷い目に遭ったな…」

ドルトの街にあるギルドにやって来たシーザ達。

シーザはギルドのカウンターにできた長蛇の列に並び、残りの3人はギルドの待合席に座りながらシーザを待っていた。

「やっぱりこの時間帯は混むね…ねえ、私達先に宿屋に戻らない?」

「駄目に決まってるでしょ、今回見た魔族2人と赤い鎧蝙蝠の話を確認する為に呼び出される可能性があるんだから。大人しく待ちなさい」

女性2人は、列に並ぶシーザを見ながらひそひそ声で会話をしている。

「はぁ…あの魔族追いかけてなければこんな面倒な報告せずに済んだのによぉ…」

銃の男性はげんなりしながら愚痴をこぼし、空いた窓から見える夕焼けで照らされた景色を眺めていたが…

突然外が暗くなり




『ーーーーーーーーーーーーーーーー』




言葉では表現できない謎の低い音が辺りに響いたその瞬間、ギルド内の明かりは消え、周りに居た人達は全員床に倒れ込んでしまった。

「な…何だこれ…」

シーザは頑張って立ち上がろうとするが、体が重くて起き上がれない。指一つ動かせない。

「見つけた…さあ、貴様ら全員吾輩の主人に挨拶しに行こうか…」

シーザは謎の低い声がした天井を見た。

そこにはなんと


消えたギルドの屋根からギルド内を見つめる巨大な髭の男が見えた。

「……!?」

不気味な笑みを浮かべながら冒険者を摘んでは掌に集める謎の巨人。

「何なんだよ…アレ…」

シーザは最後にそう呟き、そのまま気絶してしまったのだった。




「ひゃっほ〜!吾輩の作戦勝ちぃ〜!これなら主人もきっとお喜びになるぞぉ〜!!」

吸血鬼は両手で気絶した冒険者を抱え、るんるん気分で主人のロイワが待つ洞窟へ舞い戻ったのであった。

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