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61話 部活動見学(前編)

「いや〜…1時間遅れではあるけど、予定通り部活動見学が行われるとは…」


デマの拡散に上級生の暴走…色々とトラブルはあったが無事に部活動見学が始まった。


私は教室内でカターとユリコと共に無駄話をしつつ、どの部活動に見学しに行くかを話し合っていた。


「まあ、あの出来事を起こした一部の上級生は自室謹慎、部活動見学は先生や警備の人が見張る中で行われる事になったんだけどね…」

カターは顔を顰めながらも、部活動の名前と説明が書かれた紙を熱心に眺めている。

「後、過激な勧誘は禁止になりましたね」

ユリコは見学したい部活動が既に決まっているのか、紙には目もくれずに私達と会話をしている。

「うん、だけど今の私達にとっては非常に有難いよ…」

私は見学したい部活動にある程度目星をつけたのだが、目のやり場に困った為、手元にある部活動の紙をぼんやりと眺めていた。


「因みに、上級生達が暴走する原因となった、悪質なデマを流した犯人はまだ見つかっていないそうですよ?」

「マジで?最悪じゃん…てかさ、先生でも犯人を見つけられないとか相当ヤバいんじゃないの?」

「怖い話だよねぇ……ねえ、カターとユリコはどの部活動を見るか決めた?」

「うん、とりあえず私はダンジョン部を見学するよ」

「私は遊術部を見に行きます」

「私は技術部!」

見学したい部活動が見事に分かれたようだ。


「よし、じゃあ此処からは別行動だね」

「はい、1人で見学する方が気が楽ですからね」

……あれ?みんなで一緒に行動しないの?

「ダンジョン部は…大自然博物館だね。ユリ、ロイワ、じゃあね!」

「いってらっしゃい。…では私も見学しに行きますね、では」

「……あっ、うん、じゃあね!」

私はカターとユリコを見送ると、技術部を見学する為に教室から離れた。




部活動見学は仲良しグループで一緒に見学するものだと思っていたが、周りにも1人で部活動見学する生徒も結構いるようだ。(よく考えたら初日から既に単独行動している同級生がそれなりに居たような…)


確かに、既に入りたい部活動が決まっているのなら、無理に他の部活動を見に行く必要も無いよね……と、そんな事を考えてたらあっという間に技術部の部室の前まで来てしまったようだ。


入学した際にヘル先生の案内で既に見たけど、技術部の部室である技術室は他の教室よりも特に(この学校の教室はどれも豪華に見えるが)力が入っているように見えるんだよねぇ…

(これは部活動にも期待できそうだ…)


ガチャ


「失礼しまーす!」

私は期待に胸を膨らませながら技術室の扉を開けた。



数分後……



「失礼しましたー」

私は一言告げて技術室から退室し、廊下を早足で移動して技術部から離れた。

「違う……あれは私が求めていた部活動じゃない……」

あの技術部、上級生になるまで魔道具を作れないどころか技術部の先輩の補助をやらされるなんて……


いや、それだけならまだ良い…先輩の補助をする事で、先輩から間近で技術を学べるだろうし…でも、私は先輩から技術を学びながら1人で魔道具を作りたい派だし…


私が作った魔道具を見た部長の発言も酷かったなぁ…


「これが携帯念話…?……マジックカードを使用せず、念話石に直に呪文を描き込むだなんて…その上に呪文の内容も適当だ……君の為に正直に言おう、僕は今まで色んな魔道具を見てきたけど、こんな酷い魔道具を見たのは生まれて初めてだよ!」


部長に見せたその携帯念話、この学校の理事長であるリュユさんから高評価を得た道具なんだけど……


リュユさんはありとあらゆる魔導製品を世に送り出してきた所謂『魔導製品のプロ』だ。そのリュユさんを否定するような人が部長である技術部に入るのは流石に……


仕方無い、技術部意外で楽しそうな部活を探す旅に出よう……そう思い、私は急いで技術室から離れているのだが……



「ロイワ、少し待ってくれないか!」

技術室から身嗜みの良い金髪エルフの男が飛び出し、私の前に立ちはだかった。

彼は技術部部長のアニー、私が作った携帯念話にダメ出しをした張本人だ。

「ごめんね、先程は流石に言い過ぎたよ…それに、レベル持ちである君を他の下級生と同等に扱うのもやめるから!頼む、技術部に戻って来てくれないか?」

「いや、他の学生と同等に扱ってくれるのは非常にありがたいですよ!それに他の部活動を見学しに行く為に技術室を出ただけで、別に技術部に入らないなんて言ってないじゃないですか…」

技術部に入らないとは言ってないが入るとも言ってない。

「いや、僕が作ったハイレベルな魔導製品を見せてしまったせいで、君の自信を削いでしまったようだし…」

いや、アニー部長が作った携帯念話はやたら大きいし常にデカい機械を背負わないといけないしで、物凄く使い辛そうだったんだけど…?

「頼む!別に部活動に来なくてもいい、技術部に入部届を出してくれるだけでいいから!」

いや、それは1番駄目なやつでしょ…

「先輩、これ以上無理に誘ったら周りが…」


「何をしているのかな?」


「あっ、トス先生…」

アニー部長の背後から美術の先生であるトス先生がスッと現れ、笑顔で(目は笑ってなかった)アニー部長の肩を掴んだ。

「さっき言ったよね?下級生を無理に勧誘したらペナルティを……」

「や、やだなぁ先生…僕はただロイワ…さんに最後の確認をしに来ただけですよ……し、失礼しましたぁ!!!」

アニー部長はトス先生に一言謝ると、駆け足で技術室へと戻っていった。


「謝る相手は僕じゃないって…ロイワ、大丈夫?」

「あっ、はい!私は大丈夫です!トス先生、助けてくれてありがとうございます!」

「これくらいどうって事無いよ、後でリオにもお礼言ってあげてね!」

「えっ?」

「じゃあね!部活動見学楽しんで!」

トス先生は私に一言述べると、技術室がある方向に向かって歩き去ってしまった。

リオにもお礼を…?もしかして、先生を此処に呼んでくれたのはリオだったり…?いや、まさか……


「ロイワ、大丈夫か?」


あっ、この聞き覚えのある声は…


「リオ!」


私のライバルであるあのリオが、此方に向かってゆっくりと歩いて来るのが見えた。…えっ?リオ、私を心配してくれるの?

「大丈夫だけど…もしかして、リオが先生を呼んでくれたの?」

「いや、上級生がロイワを追いかけてるのが見えたから、偶然近くにいた先生に声を掛けただけだ。下級生が上級生相手に意見を述べたところで聞き入れてくれないだろうからな」

リオ…私に喧嘩ばかり仕掛けてくる奴だと思ってたけど、意外と良い所あるじゃん…!


「ロイワ、この後何処行くんだ?」

「えっ?えーっと…とりあえず、魔導製品を取り扱うお店を見学する為に見習い市場まで行く予定だけど…」

確か部活動じゃ無くても、見習い市場で仕事をするのもアリだった筈だし、この際だからお小遣い稼ぎ目的でアルバイトしてみようかな?

「だったら俺と行き先は同じだな。ロイワ、さっき出た厄介な上級生がまた出る可能性もある。1人より複数人で行動した方がまだ声を掛けられ辛いだろうし、途中まで一緒に行かねえか?」

えっ!?マジで!?上級生を避けれるならば超好都合なんだけど!?でも…

「私達ライバル同士だよね…本当にいいの?」

「………悪い事は言わねぇ、俺みたいな短気な奴をライバルにするのはやめとけ……」

「えっ?それ自分で言うの?」


結局私はリオの提案を有り難く受け入れ、私はリオと一緒に見習い市場へと向かう事にしたのだった。

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