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56話 大自然博物館

[ロイワさんに試練……と言う名のお仕事の依頼。


勝負に強い『悪魔』の人工精霊を作って下さい。


報酬は高めに払います]


『既にこの封筒が用意されていたと言う事は、ロイワ様が人工精霊作りの基本を近いうちに理解出来る事をリュユ様は見越していたのでしょう』

「えぇ…でも、人工精霊を作れる人は指で数えられる程度しか居ないってのは流石に盛りすぎなのでは…」

『確かに少し話を盛りましたが、人工精霊を作る技術を持つ魔族が少ないのは本当の話です。この人工精霊の作成はかなり特殊な技術で、扱える人がまだ少ないのです。そもそもの話、自由に『既存の精霊』を作成して操る魔族は存在しますが、1から自分好みの精霊を作成出来る魔族はあまり居ません』

「でも、このリュユ理事長から貰った本『精霊の性格形成』には人工精霊の作り方とか色々載っているのですが…」

『リュユ様が貴方にお渡しした『精霊の性格形成』の本は、まだこの世に出回っていない貴重な本です。まあ発売された所でレベルが高い魔導師でも入手が困難になると思いますが』

「そうなんですか!?」

リュユ理事長はそんな貴重な本を私にプレゼントしてくれたの!?

『貴方が精霊作りに興味を持ち、独学で真剣に取り組んでいたからこそ、リュユ様は貴方に貴重な本を託し、この仕事を任せたのだと思います。ですが、まだこの仕事をこなせる自信が無いのであれば、無理に引き受けなくても大丈夫だそうです』


「……いえ、やります!私、この仕事引き受けます!」


『宜しいのですか?』

「はい!私も将来は強い人工精霊を作りたいと思っていたので。私の持てる力を全て出し切って、全力で頑張ります!」




リュユ理事長からの依頼を引き受けてから約1時間後……



ナビさんに学生寮にある私の部屋へと一瞬で運んでもらった後、ナビさんから貰った封筒に入っていた依頼の内容をしっかり読んだ私は、真面目に人工精霊作りを始めていた。


今はガワ作り(精霊の姿を頭の中で何度も想像しては記録用カードに描き込む作業)をしているのだが…


『ロイワ様、そろそろ座学が終わる時間です』


再び周りが暗くなり、目の前にナビさんが現れた。

『ロイワ様、人工精霊作りは何処まで出来ましたか?』

「ようやく外側が出来上がった感じです…」

『中々いいペースだと思います。ですが、何故ロイワ様はそんなに困った顔をしているのですか?』

「いや、ちょっと依頼の中に書かれていた


[人型、イケメン希望]


って所で少し躓いてしまって…」


『イケメン希望…』

「リュユ理事長が思うイケメンがよく分からなくて…大まかな見た目を決めるのに半時間も掛かってしまいました…」

『大丈夫です、デザインは3日悩んでも完成しない事もあります』

「へぇ〜、そうなんですか…あっ、とりあえずこの人工精霊のガワのチェックをお願いします」

『分かりました。とりあえずこのカードをリュユ理事長にお渡ししておきます。では、貴方を教室までお運びします』


目の前からスッとナビさんが消え、自室から教室内へと景色が変化した。


ゴーン…ゴーン…


「ありゃ、もう時間かぁ…はい!今日の授業はここまで!」


私が教室に戻った瞬間に鐘が鳴り、青い鉱石人の先生は生徒に手を振りながら教室から退場した。


私はいつの間にか自分の椅子に座っており、机の上には文房具や教科書が広がっている。先程まで誰かが私の代わりに授業を受けていたかのだろうか。……少し気になる。


「ルーサ、授業中の私どうなってた!?」

「えっ!?どうって…真面目に授業を受けてたけど…」

って事は、先程まで誰かが私の身代わりを…?

「ロイワ、次の時間は実技だから早く体操服に着替えないと遅れるよ?」

「あっ!そうだった!!」


私は机の上に並べられた文房具や教科書をまとめると、体操服に着替える為に小走りで学生寮に向かった。





体操服に着替えた1年1組の生徒は、見習い市場の中にある大自然博物館の出入り口付近に集められていた。


「すげー…こんな場所があったのかよ…」

「此処知ってる、前にお姉ちゃんが…」

「中はどうなってるんだろう…」


生徒達は皆、目の前にある立派な施設に興味津々のようだ。


大自然博物館…外観や、外から見える内装はシンプルでお洒落で綺麗だ。どこからどう見ても運動出来そうな場所には見えない。何故ヘルは実技とは縁が無さそうな場所に私達を集めたのだろうか…


「全員そろっているな?では、これより実技の授業を始める」


長い髪をポニーテールで纏め、シンプルな黒コートを身に纏ったヘル先生が現れた。ヘル先生の授業開始の合図に、この場に居た生徒全員が一斉に口を噤んだ。


「えー…今日この時間は、本当は基本中の基本である『身体強化』の授業を行う予定だったが、生徒全員の授業に対するモチベーションを上げる為に、急遽授業変更の運びとなった」

私達のモチベーションを上げる?この博物館で?


「と、言う訳で…今回の実技は「野外探索」を行う」


………?


「野外探索、つまり外に出て色々と探し回る事だが、学校から外へは出ない。この博物館の中で野外探索を行う」


「えっ!?博物館は室内では…」

「どう言う事なの?」

「野外探索?この博物館の中で?」


ざわざわ…


ヘル先生の発言に生徒達がざわめく。

「静かに!今から簡単に説明する!」


シン……


ヘル先生の一言に再び生徒達が静かになった。

「…実はこの博物館、様々な世界やダンジョンに挑戦出来る物凄く最先端な施設なんだ」


えっ!?博物館の中ににダンジョンあるの!?


「この大自然博物館では、行きたい世界やダンジョンのチケットを購入する事で、自由にその世界の探索を行えるんだ。チケットの値段は中々に高いが、行った先で拾った物は全て持ち帰って大丈夫だ。この館内で売ったりも出来るぞ」


マジで!?魔道具の開発や改造に必要な素材もゲットできるかな?もし出来るのなら私、これからずっと博物館に入り浸る事になるかも。


「但し、危ない世界やダンジョンに入る為には、その場ごとに定められている『レベル』が必要になってくる。レベル7さえあればこの博物館内にある全ての世界に入る事が出来るだろう」


私は既にレベル10持ってるから、色んな世界に入り放題じゃん!いつか一人で全てのダンジョンに挑戦してみたいなぁ…


「レベルは特定の検定を受ければ、自分の実力に合わせてレベルがつけられる。皆がこれから頑張って勉強していけば、魔法使い検定を合格してある程度レベルも得られるだろう。

さて、とりあえず説明は以上だ。これから館内に入るから皆は私から逸れないようについて来てくれ」

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