39話 生徒との交流(後編)
「リオ、ロイワ、準備は整ったようね。では…試合開始!!」
「よしっ!!行けジャック!!」
カターによる始まりの合図と共にジャックがゴーくんに向かって全力で走り出した。
『戦闘開始、ジャックオランタンのスキャンを開始します』
剛の無機質な声が私の脳内に響く。
剛は試合の始まりと共にジャックのカードデータの解析を始めたのだ。
ブンッ!!
近付いて来たジャックに対し剛が全力で拳を振り落としたが、どうやら攻撃は躱されてしまったようだ。
「うぉっ!?ゴウクンは以外と素早く動けるようだな!!」
リオが驚いた割に、ジャックは剛の攻撃をスレスレで回避している。どうやら相手にとって剛の動きは予想の範囲内だったようだ。
ブンッ!!ブンッ!!ブンッ!!
私はとりあえずジャックに対し拳や足で攻撃してみるが、全てスレスレの所で回避されてしまうようだ。
「中々素早い…反撃出来るタイミングが無いな…一旦距離を取るか」
先程までハイテンションだったリオは、今は真面目な顔をして戦況を冷静に分析している。ってリオ、作戦が声に出てるよ…
リオの宣言通りにジャックは剛から少し距離を取った。
(よし剛、今だ!ヘビーマシンガン!!)
私の命令と共に剛の両腕がガシャンと素早く変化し、大きなヘビーマシンガンに変わった。
ズダダダダダダダダダダダダ!!!!
「なっ!?ジャックヤバイぞ!!そいつから離れろ!!」
ジャックはその場から大きく飛び上がって校舎の上に移動し、剛のヘビーマシンガンの攻撃から逃げた。だが、ヘビーマシンガンの攻撃を至近距離で食らってしまったジャックの身体には所々に穴が空いていた。
「あの銃、連射が出来る上に威力もデカい!だが!銃の威力が高ければ高い程撃った後の反動もデカくなっていき、銃身がブレて本来ならもっと命中率が下がる筈だ。あの銃をほぼ反動無しで撃てるゴーレムの身体は相当重いようだな…
だが、取り出す際には少し隙が出来る上に銃の連写中は動けなくなるようだな…それに連射銃の命中率は余り高く無いようだ…魔力も相当使うようだし、恐らくあの銃はジャックがある程度ゴウクンに近付かなければ絶対に撃ってこない筈だ!」
リオ、考え事が全部こっちに聞こえてるんだけど…
「……よしっ、決めた!ジャック!!ゴウクンに近付け!!」
リオが大声でジャックに命令し、ジャックは全力で走り出した。校舎から思い切りジャンプすると、ゴウクン目掛けて全力で飛び掛かった。
今ヘビーマシンガンを出して攻撃しても、恐らく全力で避けられた上に後ろに回り込まれて攻撃されてしまうかも…とりあえず今はジャックの解析を早く…
『ジャックオランタンのスキャン完了。これよりジャックオランタンの上書き作業に取り掛かります』
よし!これで私の勝ちは確定だ!!
(剛、その場で停止して!)
『……』
ジャックが眼前まで近付いて来たが、剛は一切反応しない。
「ほう…恐らくこれは罠だな?だが……」
シュッ!!
近付いて来たジャックが目の前で突然消え、剛の背後に現れた。
ボン!!
ジャックは掌からネット状の糸を複数発射したが、事前にスキャンし攻撃を予測した剛は全力で広範囲に広がるネットを避けた。
シュッ!!
ネットを全力で避けた瞬間、ジャックは再び瞬間移動をして回避中の剛の背後に移動、剛はジャックに羽交い締めにされてしまった。
しまった!剛が大きく避けた隙を突かれた!!
……なんてね。そんなのとっくに予測済みだよ!!
「よし今だ!!奴の魔力を全て奪い取れ!!」
………
「…ジャック?」
ジャックは、剛に組み付いたままピクリとも動かない。
「ジャック!どうしたんだ!?何で命令通りに動かないんだよ!!」
「私の攻撃を受けている事に気付いてないようだね…リオ、自分の精霊石を見てごらん」
「ん…?なっ、何なんだコレ!?」
本来精霊石の画面は白い筈だが、リオの精霊石の画面が真っ赤になっていた。
「精霊石が見た事無い色に…」
「リオ、精霊石はね、第三者にハッキング攻撃を受けた際に真っ赤に輝くように作られているんだよ」
「ロイワ!一体ジャックに何をしたんだ!!」
「剛くんがジャックを解析して、ジャックオーランタンのカードに書かれた情報を書き換えたんだよ。
ジャックはリオの指示を一切受け付けないように書き換えた。ジャックはもうその場から動けないし、攻撃も出来ないよ」
「……!!」
じゃあ、そろそろ全力で終わらせようか。
ガシャンガシャン…
剛の頭が変形して中から謎の装置が露出した。
『魔力砲、発射準備。5、4、3…』
キュイイイイン……
剛の変化した頭に、段々と白い光が集まっていく。
「な、何をする気だ…?」
『魔力砲発射』
ボ ォ ン ! ! ! !
物凄い爆音と共に、剛の頭から真っ白に輝く棒状の閃光がジャック目掛けて発射された。
閃光は瞬く間にジャックの頭を包み込み、あっという間にジャックをその場から消し去った。
「ま、負けた…」
リオは意気消沈して、その場に座り込んでしまった。
「……」
全力で勝負しろって言われたから全力で戦ったけど…あの勝ち方ではリオは納得出来ないかな?
「……すげぇな。まさかカードの情報自体を書き換えられる奴が存在したなんてな……あの技も精霊を動かす技術も凄かった……悔しいが、カードの書き換えが無くても俺は負けてた……」
あの強気に喧嘩を吹っかけて来たリオが負けを認めている…
暫くすると、リオはゆっくりと立ち上がって私の前まで移動し、私に向かって手を差し出して来た。
「ロイワ、今回はお前の勝ちだ。だがな…
「みんな!そろそろ先生が帰って来るみたいです!!全力で食堂に戻りましょう!!」
「まじかよ!!ロイワ、走るぞ!!」
「分かった!!」
エルフのエドゥアルの呼びかけに会話は一時中断され、私達は食堂に向かって全力で走ったのだった…




