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37話 生徒との交流(前編)

「此処が食堂だ」

食堂の看板が掲げられている扉を開けた先にあったのは…


青空だった。


地面いっぱいに広がる真っ白な雲


周りは真っ青な青空


雲の上に置かれた豪華な長いテーブルと椅子


まさにファンタジーな景色だった。

「すげぇ…雲の上に居る…」

食堂の中に広がる雲の上はフカフカだった。だが、雲の上と言うよりは絨毯の上を歩いているようだった。

「今食堂は飾りでこのようになっているんだ。普段はもっと普通だから心配しなくて大丈夫だ。

1年1組のテーブルは此処だ。皆、静かに椅子に座ってくれ」

ヘル先生に促され、私達は大人しく椅子に座った。


「ロイワ」

隣に座ったカターが、私に小声で話し掛けて来た。もしかしてさっきの話の続きかな?

「カター、どうしたの?」

「さっきユリから聞いた話だと、今日の午後は自由時間になるらしいからさ。自由時間になったら寮の自室にある庭で手合わせしない?」

「いいよ!って、自室にある庭って何?」

「実はね…各自の部屋にはね、物凄く広くて自由に動き回れる広い庭が付いているらしいんだよ」

「マジで!?」

「マジらしいよ。ユリの姉が教えてくれたってさ」

「凄い学校だなぁ…」

自分の部屋だけじゃ無くて広い庭まで…この学校最高過ぎない?

「あっそうそう、ユリ…ユリコが私達の手合わせを見たいって言ってるんだけどさ、ユリも一緒にいいかな?」

ユリコって確か私達と同じ1組にいた、将来は遊術師になりたいって言ってた子だね。

「うん、勿論いいよ!」

「よし、決まりだね!…あっ、人が集まって来たね、そろそろ歓迎会が始まるかも」

カターとあれこれ話をしている内に、他の組の生徒達や先生が次々と食堂に集まり、静かに席に座った。

誰が指示した訳でも無いのだが、人が集まるにつれて辺りの会話が次第に消えていき、やがて食堂内は謎の静寂に包まれた。



しばらく無言で待っていると、何処からともなく謎の声が聞こえて来た。

『えー…1年生全員が揃ったので、これより歓迎会を始めます。まずは理事長に1つお話をしていただきます。理事長、前へどうぞ』

「はい」

いつの間にか食堂にやって来た仕事着姿のリュユ社長、もといリュユ理事長が、食堂の中央にある高めの台に上がり、真剣な顔で話をし始めた。


「この度は、我が校に入学していただき、誠にありがとうございます。学校に勤めている我々一同は、貴方方の入学を歓迎すると共に…」

こうして、リュユ理事長による当たり障りのない話が始まった。特に当たり障りの無いごく普通の話だったので割愛する。ごめんねリュユ社長…


「最後、『上だからと遠慮するな、下だからと見縊るな』以上」

最後にそう述べると、リュユ理事長は台から降りて何処かへと去っていった。


『理事長、ありがとうございました。では、これより食事の時間に移りたいと思います』

リュユ理事長の挨拶が終わると、食堂に次々と豪華な料理が運び込まれて来た。

綺麗に盛り付けられた野菜に、高級そうな肉や魚、可愛いデザート…とにかく美味しそうな料理が私達の前に大量に運ばれて来た。


『皆様、ご自由に席を立ち、食事と歓談をお楽しみください』


謎の声によるアナウンスが終わると、大人しく座っていた生徒達が次々と立ち上がり、運ばれて来た料理目掛けて歩き出した。


「凄い…」

「こんな豪華な食事が出るなんて聞いてなかった…」

私とカターも椅子から立ち上がり、出て来た料理の前に移動した。



「カター」

私達が目の前に並べられている料理を眺めていると、後ろからカターを呼ぶ声が聞こえた。


声のした方を向くと、綺麗に整えた藍色の長髪に蝶の髪飾りを付けた、美人な蝶人がこちらに近付いて来ているのが見えた。あの子は私達と同じ1組の生徒、ユリコだ。

「ユリ!こっちこっち!」

ユリコの存在に気付いたカターは、笑顔でユリコを手招きした。

「さっき自己紹介したから分かると思うけど…ユリ、この人がさっき話に出たロイワだよ」

「はじめまして、ロイワ。私はユリコです」

「はじめまして、宜しく」

うわぁ…まだ11歳なのに物凄く美人…同性なのに思わずドキドキしてしまう…

「貴方の事はよく知っています。あの巨大な遊園地『ロイヤルファンタジーランド』を運営しているダンデさんの娘さんですよね?」

「えっ、私の事知ってるの?」

最近新しく出て来たばかりだから、私の事は余り知られてないかと思ったよ。

「フフフ…貴方の事を知らない人の方が少ないと思いますよ」

「そうなの!?」

私、知らない間に有名人になってたの?

最近は新聞やテレボなどなど…簡単に情報を知れる時代になったもんね…変な情報長されないよう気をつけないと…。


「それにしても…カターはさっきユリコと話してたって言ってたけどさ、あの休み時間の後会話する時間無かったよね…どうやって会話したの?」

「ああ、それはね…これだよ、この念話石で会話してたんだよ。これは少ない魔力で簡単に作動するし、近くの人同士なら簡単に会話出来るんだよ」

カターはそう言いながら、靴についている赤くて丸い石を見せてくれた。ユリコもポケットからカターが持っている念話石と同じ形の藍色の念話石を見せてくれた。形だけじゃなくてくっ付いているアクセサリーまでソックリ…これはもしや、ペアルックってやつかな?

「これで会話してたんだ…それにしても2人共、物凄く仲良いね!ペアルックの念話石まで持ってるなんてさ」

「うん、ユリとはこの学校に通う前から友達だったからさ」

「小学校で一緒だったんです」

「へぇ〜!どうりで仲良さそうな…」


「お前がロイワか…」


カターとユリコと会話をしていたら、突然背後から声を掛けられた。

「なっ!?何!?」

驚きつつも急いで後ろを振り返ると、そこには銀色の髪を首辺りまで伸ばした熱血そうな少年が立っていた。よく見ると、長髪の中には所々に小さい三つ編みが混ざっている。

あの長い髪、そしてあのライオンっぽい顔、確か同じクラスに居た…名前はリオ…だったよね?

「あんたは確か…銀獅子のリオだよね?何?ロイワに何の用?」

会話を中断され、少々不機嫌になりながらもリオに話しかけるカター。ユリコも怪訝そうな視線をリオに向けていた。

そもそも何でリオは私に用があるのだろうか…私リオに何かした?


「カターに用は無い、俺はロイワに用があるんだ」

リオはカターに一切構わず、私に向かって真っ直ぐ進み、私の前で停止した。


ずいっ


(ひぃ…ち、近い…!)

「俺は知っているぞロイワ!!お前が一流のゴーレム使いだって事をな!!」

「なっ、何を急に…」

一流かどうかはまだ分からないけど、何で私がゴーレムを持っている事が分かったの!?

「さっき占いできる奴に聞いたんだ、1年生の中で1番強い精霊使いは誰だってさ。そしたら、ゴーレムを操るロイワって奴が1番強いって言ったんだ…

だが俺は納得出来ねぇ!!この1年生の中で1番精霊を使いこなせるのは俺だ!!だから…」

「だ、だから…?」


「ロイワ!俺と精霊でバトルしろ!!」

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