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22話 動画と念波

「景色を撮る道具と動画を撮る道具…?」

「そうだ!何かテストをするとか言ってあちこちで動く景色撮ってるらしいぜ?」

「マジで…?」

もうそんな最新技術がこの世界に…?

それが本当なら、いつかこの世界で映画やテレビが見れたりするのかな?

「動画撮るやつ来てるの?確か前に動画上映会とか言ってさ、前に記録した動画を大きな水槽に映すやつあったよね!」

「ああ!ダマラスさんも観客と混じって一緒に見たやつだな!」

えぇ!?既に上映済みだったの!?しかも水の大精霊も上映会に参加したの?!

「映し出された天龍が口を開けてこっちに接近して来る動画は大迫力過ぎて観客が悲鳴上げて逃げ出したんだよね!私もヘルと一緒に見たけど、あれは本物そっくりだったな〜!」

う、羨ましい…私も見てみたかった…

「ほう、此処にカメラが来ているのか。それにあの人達の服に描かれているマークは…成る程、念波放送の実験の為の動画を撮っているのだろうな」

「念波放送?ヘルさん、その念波放送ってやつは一体何なんだ?」

「あれ?カガ知らないの?念話石を使って情報を一般家庭に届ける実験とか言ってさ、テレパシーボックス、略してテレボとか言う物凄く大きい箱を昨日貰わなかった?」

念話石…?確かそれって、地上で魔王軍と通信をする為に使用していたビー玉みたいなやつだっけ?てかテレボって…まさかテレビ的なやつでは?

「あ〜、あのデカい箱かぁ!確かアリアがあの箱で数日後辺りに何かやるって言ってたよな?」

「あの箱に動画が映るんだってさ。でもさ、本当にあんな箱で念話石の映像を観れるのかなぁ?

確か念話石から送られて来る情報を見る為には、"魔法の知識"と"念話石"と"それなりの魔力"と"大きくて綺麗な泉"が必要じゃん?」

「センチの言う通りだ。

まあ普通ならあまり魔法を知らない一般人には念話石の情報を受信する事は出来ないのだがな…

スライムの加工技術のおかげで簡単に魔力の元である人工魔石が作成出来るようになり、更にマジックカードの技術で受信機の作成、そして縮小に成功したんだ。

つまり、魔力が少ない一般人でも念話石の情報を受信できるようになるらしいんだ」

「へぇ!あの通信を一般の家庭で観れるようになるんだな!」

「そうだ、放送局に念波放送専用のスタジオを作成済みらしいしな、もう放送する準備は整っているのだろう。後は放送の練習とテレボの大量生産、一般家庭への普及だけなのではないか?」

マジで…?もうテレビ放送的な奴が出来る所まで来てるの?

いや、そもそもこの世界には念話石って言う通信手段があったみたいだし、よく考えたらそこまで驚く事じゃ無いのかな…?でも、この世界でもテレビ見れるようになるんだ〜!凄く楽しみ!



「あ〜!超楽しかった!」

投球試合が無事に終わり、カガさんと別れた私達は明るく照らされた通路を歩いてスタジアムの出口に向かっていた。

そうそう、カガさんにもスタジアムに入れてくれたお礼に遊園地のチケットを渡したら

「すげぇ!一生大切にするぜ!」

とか言って喜んでくれたよ。どちらかと言うと使用してくれた方が私は嬉しいんだけど…まあ本人が嬉しそうだったし、未使用のままでもいっか!

「今日は本当に凄かったよね!ロイワさんどうだった?」

「面白かったよ!ルールは良く分からなかったけど、あの試合をただ眺めているだけでも楽しめたよ!」

「えっ!?」

「あっ…簡単にルールを説明すれば良かったな…ロイワさん、すまない…」

「大丈夫大丈夫!結構面白かったし、次観に行く時までに自分でルールを勉強しとくから!」

お喋りしながら歩き続け、ようやくスタジアムの外に出ると…


「わぁ…!凄く綺麗!!」

辺りはすっかり暗くなり、街灯やビルの灯りがあちこちで光り輝いて見事な夜景を作り出していた。

辺りをコートとマントを混ぜたようなものを着た魔族が沢山歩いている。もしかしてこの魔族達は会社から家に帰宅中なのかな?

「夜景が凄く綺麗だよね!私もこの夜景が大好きなんだ〜!」

「質の良い太陽石を使用して辺りを照らしているから、太陽が沈んだ後でも道は物凄く明るいな」

「へぇ〜!所で、此処を歩く魔族達ってみんな帰宅中なの?」

「いや、今此処を歩いている会社員は、これから働き始める夜行性の魔族達だ」

成る程!夜に活動を始める魔族達もしっかりと働けるような仕組みがこの世界には出来ているんだね!


「え〜っと、今の時間は…夜の1時半辺りかな?」

「もうそんな時間か、そろそろ晩御飯の時間だな」

この世界の時間って確か100分で1時間の、朝10時間、夜10時間で構成されてるってセレセルさんから聞いたような…

確か朝の2時辺りが起床時間で…あれ?3時だったかな?そして仕事が始まる時間が確か……駄目だ、まだこの世界の時間がまだ良く分からないや…

「ロイワさん!駅に晩御飯食べに行こうよ!」

「駅?」

「うん!駅には沢山の料理屋があるからね、ロイワさんが気に入る料理も見つかると思うよ!

ロイワさんから建物貰ったお礼…の一部として是非私に奢らせて欲しいな!」

「いいの!?それなら是非行ってみたい!!」

あの駅の中にお店出来たんだ!

「あ〜、駅か。駅の中で売られている食べ物はどれも美味しい…だが、駅の店よりもっとしっかりした専門の店で食べた方が良いのでは無いか?」

「ヘル、しっかりした専門のお店って…一体何処行くつもりなの?」

「大せ…ロイワさんが満足出来るような店なら既にリサーチ済みだ!

高級レストラン「翡翠」と言う店でな、鉱石人の方も満足出来る良い店らしいぞ。そこで食事をしよう」

「えぇ!?高級レストラン!?」

高級レストランって、あの高そうな料理が出るあの!?この世界に既に存在するの!?

「金銭の類いは気にしなくても大丈夫だ、私が奢ろう。マンションを貰ったほんのお礼だ」

「いや、そうじゃ無くてね…あの…高級なレストランだとマナーとか色々…」

私が慌てながらヘルさんに心配事を説明すると

「ん…?あっ…そ、そうだったな…すまない。ではロイワさん、行き先は駅の店でいいか?」

ヘルさんは私の言いたい事を何とか理解してくれたようだ。

「うん!折角リサーチしてくれたのにごめんねヘルさん…また誘われた時の為にマナーを学んでおくからね…」

「ああ、ありがとう…」

「行き先は決まったね?じゃあ駅に向かって出発!」

センチさんの元気な掛け声と共に私達は駅に向かって歩き始めた。



大通りの歩道を歩き続け、ようやく駅前に到着した。駅前には「大きな靴」と「蜂」と「蟻」と「蜘蛛」の大きな銅像が建てられていた。

この大きな靴、私の足そっくりな気が…まあいいや。それよりも…

「物凄い沢山の人がいるね!」

辺りにはさっき街で見かけたコート姿の魔族達が、駅の出入り口から街に向かって忙しなく歩き続けている。

「仕事の為に外から魔族が集まっているな」

「凄い!こんなに沢山の魔族達に駅を使ってもらるなんて…!」

「うん、でも集まり過ぎて私達駅入れないね…」

あまりにも魔族が多過ぎて、私達さっきから駅の出入り口にすら近寄れない…

「そうだな…この群れの中にロイワさんを入れる訳にもいかないし…」

「…よし!それなら私が1人で駅に入って晩御飯買ってくるよ!ヘルはアロー使ってロイワさんと一緒に、先にロイヤルマンションに向かって!私は買い物が済んだら直ぐにマンションに向かうから!」

「アロー…?まさか、ブラッシュさんアロー完成させたの!?」

「うん!まだ一般人は入手出来ない状況だけどね!

アローは空を自由に飛べるから、空から夜景を見る事が出来るんだよ!物凄く綺麗だから是非見てほしいな!

じゃあ私は買い物行ってくるから!」

そう言うと、センチさんは駅に向かって歩いて人混みの中に紛れ、やがて姿が見えなくなった。

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