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21話 ロイヤルスタジアム

ロイヤルスタジアムの出入り口付近にはそれなりの人集り(いや、人間の他に魔人や魔獣も居るから魔族達かな?)が出来ていた。だが、これ以上の魔族の気配が奥から感じられた。

どうやらこのロイヤルスタジアムの中には想像以上に魔族が集まっているようだ。

「確か今は、ザ・ロックVSジージーの投球試合をやってるらしいよ〜?」

「確かこの世界で投球試合をするのは初めてだったな」

「そうそう、あとロイヤルタウン内で作成した新しいユニフォームや靴を着用して試合しているらしいよ?てか出入り口付近なのに観客の物凄い声が聞こえて来るね!」

「ああ、どうやら既に試合は始まっているようだな」

2人は顔を見合わせ、試合について楽しそうに会話している。

「へぇ〜この世界での初試合なんだ!てか投球試合って何?」

「うーんとね、投球ってのは簡単に言えば複数人で遊ぶ昔からある人気のスポーツなんだよ」

それはつまり、現実で言う野球みたいなやつなのかな?

「へぇ〜!闘技場って聞いてたから、武器持って戦う人達しか居ないと思ってたよ!」

「勿論、武闘会も開催されたりするよ!でも武闘会以外にも色んなスポーツがこのロイヤルスタジアムで行われているんだよ!」

「そうなんだ〜!」

凄いなぁ…この世界は既にスポーツ観戦が出来る時代になってたんだね…

「見て!あのゲートを通った先にスタジアムがあるんだよ!」

「でも今日の試合のチケットは買ってないから入れないな。一応当日券もあるようだが…この様子だと既に完売しているだろうな」

そっか〜、少し残念。

「まあ今日はカガに会う為に来ただけだからね!さてと…」

センチさんはゲートの近くに居るスタッフらしき羊みたいな人に近付き、声を掛けた。

「すいませ〜ん、ゴニョゴニョ…」

またまた内緒話でスタッフに何かを伝えるセンチさん。そして内緒話が終わった瞬間、スタッフが近くのスタッフに一声掛けると何処かへ走り去ってしまった

しばらくすると…

「おーっ!ロイワさん久しぶりだな!!」

スタジアムの奥からカガさんが飛び出し、私に元気よく挨拶をしてきた。不思議な模様の描かれた赤いTシャツに黒い短パンのラフなスタイルだ。

「カガさん久しぶり!元気そうで「待てカガ!」

ん?ヘルさんどうしたの?

「例のマナーを忘れたのか!?例の人が初めて職場に入って会いに来たらまずは客室に案内し、簡単な世間話を終えたら本格的に例の人と30分以内の会話をするんだ!」

例のマナーって…まさか大精霊との会話の際のマナーみたいなやつがあるの?

そう言えばさっきのマリさんの時も客室に案内されたし、世間話の後私に話しかけて来たし、そろそろ30分だからって理由で会話を切り上げて退散したし…もしかしてあれマナーだったの?

「えーっ!?でもスミスさんは「そんな変なマナーをする必要は無い、そんな事した所で何も知らない本人は困惑するだけだ」って言ってたぞ!!」

「ぐっ…そ、そうだな…分かった。このまま話を続けよう…」

あ、ヘルさんが折れた。

「よし!じゃあ早速…ロイワさん!今スタジアムで投球の試合やってんだけどさ、試合見てくか?」

「えっ、いいの!?見たい見たい!!」

「よし、決まりだな!じゃあ俺が会場内を案内するぜ!センチにヘルさんも一緒に来ていいぞ!」

「私もいいのか…?ありがとう、カガさん」

「カガありがとう!やったー!タダで試合が観れるよ〜!」

「おいおい…センチ、お前はせめてスタジアム内で食事かグッズ買ってってくれよな!?」

こうして私達は、カガさんに案内されてスタジアムの中に入ったのであった。



「わぁー!!凄い!!」

スタジアム内の一番高い場所に出た。辺りには観客どころか席が一つも無い上に、辺りを数人のスタッフが動き回っていた。よく分からないけど多分この場所は、一般人が立ち入り出来ない場所なのだろう。

下に見える観客席には物凄い数の魔族達が座っており、ギラギラした目を目の前で繰り広げられている試合に向けていた。

「魔族がいっぱい居るね〜!」

センチさんは長いパンに魚と肉のようなものが挟まれている謎の食べ物と、紫色の飲み物が注がれた軽そうなコップを持ちながら辺りを見回していた。

「凄い数だろ?でもな、看板も立ててそれなりに宣伝をしたにも関わらず、偶にロイヤルスタジアム自体が何なのか分からずにやって来る魔族が居たりするんだぜ?今日もエルフの家族連れ相手にスタジアムの説明をした所なんだぜ!」

あー、私の世界だったらネットでスタジアムの意味とか調べられたけど、ネットも無い時代じゃあこのスタジアムが何をする施設なのか分からない人も出てくるよね。

「ロイヤルタウンと魔王領が繋がってから物凄い数の魔族が来たからな…」

「えっ?この街魔王領と繋がったの!?」

いつの間に!?

「ああ、前に魔王様と大精霊様の許可を取った後、魔王領まで線路を敷いて王都の近くに新しく駅を建てたんだ!

魔王領の近くまでこの世界が広がっていたから直ぐに繋がったらしいぞ」

「そうだったんだ!凄いね!」

あの時は適当に世界を広げていたらなぁ…まさか魔王領の近くまで広がっていたとは…

「あれ?ロイワさんは魔王領とこの街を繋ぐって話、聞いてなかった?」

あっ、もしかして私の元にも許可の話が来てたりしたのかな…?

「うーん…あっ…何か私もこの魔王領の話、聞いた事がある気がする…」

何処で聞いたんだっけ…



数ヶ月前…


此処は遊園地、一番大きなジェットコースターの座席の一番前に座っている私、その隣にはセレセルさん。その後ろには吸血鬼と光水晶の妖精達が座っている。

「まだー?」「こわーい…」

急な坂をゆっくり登り続けるジェットコースターを怖がる妖精達とは裏腹に、ただ目の前を黙って見つめる吸血鬼。セレセルさんは…

「逆らってはいけません…自然の一部となり、風と共に駆け抜けるのです…」

私の隣で謎の発言をしていた。


やがてジェットコースターは角度を変え…


ゴーーーーーーーー!!!!


もの凄い勢いで坂を下り始めた!!

「「「キャーー!!」」「「イヤーー!!」」

妖精達の可愛い悲鳴が背後から聞こえて来る。

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!??」

吸血鬼の野太い悲鳴も一緒に聞こえて来る。

「わーーーーーーーっ!!」

何度も乗っているのに、乗る度に思わず叫んでしまう私。そんな中セレセルさんは…

「そうそう、今度この世界と魔王領を繋ぐ道を作りたいと許可を求めて来たのですが、ロイワさんはどう思いますか?」

「いいよーー!!私はいいからーー!!」

「分かりました。快諾と言う事で魔族達に伝えておきますね」



「思い出した…」

絶対アレだ…それよりも、セレセルさんは何故あのタイミングで私に許可を求めて来たんだ…

いや、私はこの世界と魔王領を繋ぐのは賛成だけどさ…

「ロイワさんどうしたの?」

「いや、何でも無い…気にしないで…」

私はそう呟きながら騒がしいスタジアムの中央に目を向けた。


それにしても、あの広いフィールドの中にカラフルなユニフォームを纏った2組のチームが試合をしているみたいなんだけど…これ何をやってるの?

投げた玉を掴んでは仲間に投げ返しているように見えるんだけど…これって何?ドッヂボールなの?

「ロイワさん観て!ハハ選手のドリブルからのカウンターが決まったよ!!これで同点だよ!!」

ドリブル?カウンター?

「あっ!?アンカーが遠投…からの直接ゴールに飛び込んだ!!これは凄い!!」

アンカー?飛び込み?

「今回の試合すげーだろ!?こんなプレーがさっきからずっと続いてるんだぜ!?」

「凄いよカガ!途中から観たけど、今日の試合は最高過ぎるよ!!」

そんなに凄いの?

確かに物凄い動きで球の動きを止めたり、空中で一回転しながら味方に向かって球を投げたりするのは凄いしカッコいいけど…このスポーツは何をしたら得点になるの?

ルールを聞きたいけど3人は興奮しすぎて一切説明してくれないし…いや、試合と言うか動き自体は中々凄いんだけどね…


これ、何やってるのか全く分からない!!


そもそも私、サッカーや野球のルールとか一切知らないからなぁ…簡単なスポーツ系のゲームとかやっとけば良かったかな…

まあこの試合、ただ眺めているだけでも楽しいからいいけどさ。



ん?

私達が居る場所の向こう側に何やらデカい謎の物体が2つ設置されており、その物体の近くに人が複数集まっている。アレ何だろう…

「ロイワさん、アレが気になるのか?」

私が向こう側にある謎の道具をじーっと見ているのが分かったのか、カガさんがわざわざ私に声をかけてくれた。

「あっ、カガさん!アレ何なの?」

「アレはな、景色を撮る道具と…動画?ってやつを撮る道具らしいぜ?」

えぇ!?まさか…あれカメラなの!?

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