20話 久しぶりのヘルさん
郵便屋さんから大量の大きな蜂が飛び出してはあちこちに散らばっていく光景を見た私は…
「ひぃ…あれ大丈夫なの…?」
「ロイワさん、あれは大丈夫なやつだよ!あれは迅速蜂って言ってね、手紙や軽い荷物を運ぶ超カッコいい蜂なんだよ!」
まあ、街を飛び回っているにも関わらず悲鳴が一切無い時点で安全な奴って分かるんだけどね…
あれ、超デカイスズメバチじゃん!!
いや、あの迅速蜂のデザインはスズメバチよりもっとカッコいいし凄く速そうな感じはするんだけどね、
何か…前世で見た超危険な生物そっくりであまり好きになれない…迅速蜂、ごめんね!
…ん?あの蜂、よく見ると大きな鞄以外に何か…
「あっ!ゴブリンが乗ってる!」
郵便屋さんの制服に身を包んだゴブリンが蜂の背中に跨ってる!
「あれは郵便屋さんの従業員だよ!
あの蜂に乗りたいが為に郵便屋さんになりたがる魔族が沢山居るって噂があったりするくらいに人気がある職業らしいよ。見て!あの蜂の上にはスライムが乗ってるよ!」
「ホントだ!」
スライムは緑色の身体をプルプル揺らしながら、器用に蜂を乗りこなしていた。
「ほら見て!鎧蜂も飛んでるよ!」
迅速蜂より少し遅れて、私が作った生き物である鎧蜂が郵便屋さんから飛び出して来た。
「鎧蜂はね、迅速蜂よりは遅いけど物凄く頑丈で精密な飛行が出来るからね、大切な荷物を運ぶのは鎧蜂担当なんだって!」
「カッコいい〜!あの鎧蜂にも仕事があって良かった…てかスライムも出来る仕事があるんだね!凄く安心したよ!」
「いや、むしろスライム人は一部の企業にとっては物凄く優秀な人材である為仕事には困らないらしいぞ」
突然横からヘルさんが現れ、私達の会話に参加してきた。
まあ洋服屋さんを出た辺りから、ヘルさんが遠くから私達をこっそり見ていたのも、話しかけるタイミングを伺っていたのも分かってたけどね!多分センチさんも分かってたよね!
「そうなの?相変わらずヘルは物知りだね!」
「まあな、ある程度の知識位はあるさ」
ヘルさんは白と黒を基調としたシンプルなコートにお洒落な帽子を被っていた。相変わらず尻尾は外に出していなかった。
「ヘルさん久しぶり!」
「ロイワさん、久しぶりだな。元気だったか?」
「うん!ヘルさんは元気だった?」
「ああ、元気だ!所で…ロイワさん達はこれから何処へ行くんだ?」
「私は今ロイワさんに街を案内してる所でね、これからロイヤルスタジアムに行くんだよ!
折角だからヘルも一緒においでよ!ロイワさんもいいよね?」
「勿論!ヘルさん、一緒にロイヤルタウンを観光しない?」
「ああ!是非ご一緒させて頂きたい!」
こうしてヘルさんと合流した私達は、3人で次の目的地であるロイヤルスタジアムに向かって歩き始めた。
「ヘル、学校の方はもう終わったの?てかよく私達が此処に居る事が分かったね!」
「ああ、今日は早めに学校が終わったんだ。センチやロイワさんが此処に居るのが分かったのはな…まあそんな事、どうでもいいじゃないか!」
ヘルさんなんか怪しい…
「ん?ヘルさん今学校通ってるの?」
「いや、生徒では無くて仮の魔法の教師をしているんだ。今、この街は魔法を教える先生が不足しているのでな…」
「不足…?」
「ああ。このロイヤルタウンは今、深刻な人手不足に悩まされているんだ。特に魔導師不足が深刻でな…」
「魔導師不足…?」
「そうだ。今このロイヤルタウンには呪文を書き込める光水晶のカード、つまりマジックカードがあちこちで活躍していてな…
ロイワさんはあの通り抜けが出来るガラス扉の技術を見たか?」
「見たよ!あれ凄いよね!もしかしてあのガラス扉にそのマジックカードが使われているの?」
「ああ、そうだ。特定の物質を通り抜けられる呪文を書き込んだマジックカードをガラス扉に埋め込んだ結果、あのように通り抜けが出来るガラス扉が出来上がったんだ」
「へぇ…凄い技術だね…」
「この技術は前からあったのだが…昔は自由に使える程に光水晶が無かったからな。
だが、主に光水晶の妖精のおかげで光水晶が大量に取れるようになってからマジックカードの本格的な運用が始まってな…この世をもっと便利にする為、又は金を儲ける為に、このロイヤルタウンにはマジックカード専門の会社が多数立ち上げられたんだ。
だから呪文を書き込む技術を持った魔導師が今物凄く不足しているんだ」
「えぇ…今そんな事が…」
これは…このまま技術が発展すればこの異世界にゲームが生まれるのも時間の問題なのでは?
いつか異世界でのんびりとゲーム生活出来る未来が来るかも!?
「まあ悪い意味での人材不足では無いからな…
とにかく、少しでも魔導師の知識を持っている奴なら直ぐに入社出来る上に物凄い量の給料が貰えるのでな、魔導師見習いの奴も一人前の魔導師も皆、このロイヤルタウンにやって来るんだ」
「この街に急に人が集まったからね〜、このロイヤルタウンには集合住宅、つまりマンションが多数立ち並んでいるんだよ!仮設置されたアパートも結構あるんだってさ!」
そんなに人が来たの!?
「それでも魔導師の数は足りないんだ…だから今学校では将来の仕事の為に魔法を…特に呪文を中心に教えている所なんだ」
「ああ!需要が増えたおかげで呪文を教える教師も不足してるから、ヘルさんも教師の代わりをしてるって事?」
「その通りだ。魔法を知らない大人も仕事の為に呪文を知りたがっているのでな、大人の分も含めると今の教師の数では圧倒的に足りないんだ…」
「まじか…」
私が遊園地作っている間にそんな大変な事が…もっとみんなの為になる施設作った方が良かったかな?
「ほら2人とも、カガが居る場所「ロイヤルスタジアム」が見えてきたよ!」
「おーっ、あれがロイヤルスタジアム…デカい!!」
センチさんが指差した施設「ロイヤルスタジアム」は見た目が物凄くカッコいい上に立派で、想像以上に巨大だった。
これはいつか、「ロイヤルスタジアム◯個分」とか言う単語が生まれるかもしれないね…




