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18話 お洒落なお店

暫く道なりに真っ直ぐ進んでいたが…

「そうだ!そろそろ人も見えるだろうしウルフくんから降りないと!」

「うん、知らない人がウルファグーン見たらびっくりするもんね!」

「だよね!じゃあウルフくん、この辺で停止して!」


プップー!


私の指示に従い、ウルフくんはその場で停止してくれた。

「じゃあ、ウルファグーンとは一旦此処でお別れだね。ありがとうウルファグーン!」

「ありがとうウルフくん!また用があったら呼ぶからね!」

私達は降車しながらウルフくんにお礼を言った。


プッププップー!


ウルフくんは私達の別れの挨拶にクラクションで返すと、その場でUターンして遊園地がある方に向かって走り去った。

「じゃあロイワさん、目の前にある街、ロイヤルタウンの中を案内するね!」

「へぇ〜、この街の名前はロイヤルタウンって言うんだ!センチさん、ロイヤルタウンの案内宜しく!」

「了解!」

私達は目の前に見える「ロイヤルタウン」に向かってゆっくりと歩き出した。


町の出入り口らしき道には一応警備の人が居たが、特に何も言われる事無く町の中に入る事が出来た。


「うわぁ…凄い…!」

辺りには現代風のビルから城のようなビル、見た事無い形のビルまで、とにかく沢山の個性豊かなビルが立ち並んでいた。

周りは何処を見ても色んな種族の頭だらけで、みんなセンチさんが着ているような変わった服を身に付けていた。

道路の上を馬車と人力車が忙しなく走っている。その馬車の横をタイヤの無い細いバイクのようなものに跨った若者が通り抜けている。


「いつの間にこんなに建物が…!?」

「うん!あの建物作ってくれる虫達が居たから此処まで早く建物が完成したんだよ!勿論魔族と虫達で一緒に作ったんだよ!」

「いやぁ…正直な話、此処まで発展してるとは思って無かった…何処から覗いたらいいか分かんないね」

「なら私が決めるね!ヘルはまだ仕事中だから…まずは目の前にあるマリのお店に行こっか!」

センチさんは目の前にある白くてお洒落なビルのお店を指差した。お店の看板にはお洒落な書体で「ロイヤルキモノ・服屋」と書かれていた。

見た事無い文字だけどすんなり読めた。

「えっ!?この大きなビルがマリさんのお店!?」

「そうだよ!このお店、ロイヤル…ケ…モノ?でマリが作り出した服はこの街で大流行してるんだよ!ちなみに私が着てる服もマリさんのお店で買ったやつだよ!」

センチさんがあの文字をしっかり読めてないって事は、この文字それなりに読み辛いんだろうね…

「へぇ〜、センチさんが着ている服もマリさんが作ったやつなんだ!不思議な感じだけどお洒落って感じがするね!」

「でしょ?さあロイワさん、お店入ろっか!」

私はセンチさんに手を引かれてお洒落なガラス扉の先に見えるお洒落な服屋に…ん?

「あれ?このガラス扉、取っ手が無いよ?」

「ふふふ…ロイワさん、見てて!」

心配する私を気にせず、センチさんは開いていないガラス扉に向かって真っ直ぐ突き進んだ。


スッ……


「…えっ?」

今、扉をすり抜けた?

「凄いでしょ!?これはね、最新技術が使われてる超凄い扉なんだよ!」

「最新技術…?」

「そう!どうなってるのかはよく分からないけど、取っ手が無いガラス製の扉は基本的に通り抜ける事が出来るんだよ!」

「凄いね…」

私はセンチさんの話を聞きながら店内を見回す。

白で統一されたシンプルなデザインに、少し和の雰囲気を感じるような…とにかくお洒落な店内だ。

よく見ると店内に居る店員もお客さんもお洒落…

あっ!そういや私、服とか一切着てない…何か恥ずかしくなってきた…

「あっ、すいませーん!」

私があれこれ考えてる間にセンチさんはお洒落なレジカウンターに近付き、店員さんらしき人物に声を掛けた。

「いらっしゃいませ…」

「あのね…ヒソヒソ…」

手が6本あり、不思議な眼鏡を掛けた綺麗な女性店員に内緒話をするセンチさん。女性店員さんはセンチさんの内緒話を聞き終えると急いで私に向き直り

「ロイワ様…!お待ちしておりました…さあ、此方へどうぞ…」

私達は丁寧な対応をされながら、お店の奥にあるお洒落な客室のような部屋に案内された。

駄目だ…もう何もかもがお洒落に見える…

「此方でお待ち下さい…」

シンプルでお洒落なテーブルの前に置かれたお洒落な椅子に恐る恐る座り、センチさんと共にしばらく待っていると…

「あらぁ、センチ…にロイワさん!待ってたわぁ!」

私達が通って来た扉とは別の扉から現れたマリさんは、朱色のシンプルな和服に、首元には布製の不思議なネックレスを身に付けていた。右手には大きめの白い鞄を持っていた。

「マリ久しぶり!あの最新技術のガラス扉、もう導入したんだね!」

「久しぶりねぇセンチ。そうよぉ、新しいものは直ぐに取り入れないと時代に置いてかれちゃうからねぇ!でもねぇ、あの扉の仕組みがまだ広く知られていないせいかしらねぇ…出入り口をあの扉に変更してからお客様の入りが悪くなったのよぉ…」

マリさんは鞄をテーブルに置き、目の前の空いている椅子にゆっくり座った。

「あー…マリのお店、扉に「そのまま通り抜けて下さい」って書かれて無かったよね」

「やっぱりデザイン優先にして説明文を取ったのは良く無かったかしらぁ…」

「確か他のお店では扉の間にオブジェ設置してるのを見かけるよ、振り子とか植物とか…マリのお店もやってみたら?」

「そうねぇ、少し見た目は悪くなるけど仕方ないわねぇ。それはそうと…ロイワさん!久しぶりねぇ!」

マリさんはセンチさんから顔を逸らし、私に笑顔を向けた。

「マリさん久しぶり!お店繁盛してるみたいで良かったよ!衣装お洒落だね!」

「うふふ、ありがとう!ロイワさんが下さった建物と魔王様からの援助金のお陰で無事にお店は開店、しかも大成功よぉ!ロイワさん、建物のお礼にこれ受け取って頂戴!」

マリさんはテーブルに置いていた白い鞄を私に手渡した。

「この中にはロイワさんをイメージして作成した衣装を全て入れてあるのよぉ」

白い鞄の中を覗くと、タンス並みに広い中身に色取り取りの衣類が沢山収納されているのが見えた。

「えっ!?お礼にこれ全部って多くない!?」

「いいのよぉ。それに、私の服を着て街を歩き回ってくれたら私のお店の宣伝になるでしょ?」

「成る程…ありがとうマリさん!」

私は素直に衣装が入った白い鞄を受け取った。

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