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17話 技術の進歩!?

私はウルフくんに乗って、綺麗な草原の中に伸びる長い道路の上を快適に進んでいた。

「見てウルフくん!うっすらと沢山建ってるビルが見えるよ!」


プップー!


「センチさんやヘルさんは元気かな?会うのが楽しみ


プップップー!


ウルフくんが何かを見つけたのか、突然会話(?)を遮ってクラクションを鳴らし、ゆっくり減速して道路の隅に寄り停止した。

「ん?あれって…センチさん?」

長い道路の向こう側から物凄い速さで近付いてくる人が…速っ!センチさん脚速っ!

センチさんは体をくの字に曲げ、足でキキーッと音を立てながらウルフくんの横に急停止した。


「ロイワさん久しぶり!元気そうで良かった〜!」

センチさんは黒と白の生地が混ざった不思議な模様付きのTシャツ、腰に巻き付けた緑のジャケット、黒いポーチ、深緑の少し変わった短パン、足元にはゴツくてカッコいい黒のブーツを身に付けていた。もしかしてこれはセンチさんの私服なのかな?

「センチさん久しぶり!数週間ぶりかな?こんな所に何しに来たの?」

私は急に現れたセンチさんに顔を向けながらウルフくんから降りた。

「いや数週間ぶりとかじゃなくてもう何ヶ月ぶりだよロイワさん!」

あれ?マジで?私達そんな長い間遊園地で遊んでたの?

「そうそう私はね、セレセルさんから「ロイワさんがこの町に向かってる」って話を聞いたからロイワさんを迎えに来たんだよ!」

「そうだったんだ!じゃあセンチさんもウルフくんに乗る?」

「乗る乗る!またウルファグーンに乗れるのを楽しみにしてたんだ!」

センチさんは大喜びでウルフくんに近付き、ウルフくんが開けてくれた扉から助手席に座った。

私も運転席に座ると

「それでは、町に向かって出発進行!」

「進行!」


プップー!


私達の合図と共に再びウルフくんは走り出した。


「センチさん、今町はどんな感じになってるの?」

「凄いよ!辺りには大きな建物が沢山建っててね、魔族の人達も沢山来て住み始めたり商売始めたり…とにかく元気な人で溢れかえってるよ!」

「もうそんなに沢山魔族が来たんだ!」

「うん!更にね、光水晶が此処で沢山取れたおかげで技術がすごく進歩したって言ってたよ!」

「光水晶で?」

「うん、光水晶はね、周りの魔力吸収するだけじゃなくて魔法…呪文だったかな?…まあ、そんな感じのやつも書き込む事が出来るんだって!

魔法を書き込んだ光水晶はね、魔力を流せばその書き込まれた魔法をそのまま使う事が出来る…みたいな事言ってたよ!」

それってまさか…プログラム的なやつなのでは…?もしそれが本当ならこの世界とんでもない程に文明が進歩するんじゃない?いや、それどころかこの世界でゲーム出来る日が来るかもしれない!

そうだ、私はゲームしている最中にあのやな奴に無理矢理この世界に呼び出されて…

「全部ヘルから聞いた話だから詳しくは知らないんだけどね…もっと詳しい話はヘルに聞いてね!

……聞いてるロイワさん?」

「えっ!?あ、ああ!聞いてたよセンチさん!後でヘルさんから聞いとくね!」

危ない…もう少しで長い回想が始まる所だったよ…

「そうだ!今此処で音楽聴いてもいい?」

センチさんは腰に提げている黒いポーチから、ポーチより大きな黒い箱と一枚のカードを取り出した。

何それ?

「これはね…音楽が入っているカード、つまりミュージックカードって言うんだよ!そしてこの箱はミュージックカードに入っている音楽を再生する為の装置!」

「えっ!?それで音楽聴けるの!?」

まさかこの世界で音楽再生機器を見れるとは…

「そう!こんな小さな装置一つとカードさえあれば簡単に音楽が聴けるんだよ!凄いでしょ!」

私の世界ではまだ大きい方だけどこれは凄い!

私達がジェットコースター乗ってる間にこんなに技術が進んでいたなんて…!

「ねえ、そのミュージックカード触ってみてもいい?」

「いいよ!はい!」

センチさんは私にミュージックカードを渡してくれた。

保健証やクレジットカードより大き目のカードで、表面には「塔が並ぶ町ーマーシャル」という文章が刻まれていた。これは多分、曲名と曲を作った作者だよね?

「へぇ〜この文章刻む技術凄いね!これ…


ぐわん


ん?何今の違和感。

「ロイワさんどうしたの?」

いや、大丈夫だよ!とセンチさんに伝える為に口を開いた瞬間


『ぁさ日が登り塔の間に〜』


!?!?!?


『眩しい光が差し込んで〜』

何これ!?私の顔からゆったりした音楽が流れてる!?


「ロイワさん!?大丈夫!?」

センチさんが私からミュージックカードを急いで奪い取った。

『たぁ〜……ょうぶ、大丈夫、私は平気だよ!」

「良かった…はぁ、びっくりしたぁ〜…ロイワさんが無事で良かった!」

「うん、無事で良かった…」

「「……」」


「……ねえ、もう一回ミュージックカード持ってみてもいい?」

「…」

センチさんは無言でミュージックカードを差し出してくれた。

私は無言でミュージックカードに触ると…

『ゃさしく包まれ〜』

私はセンチさんを見つめたまま口を開いて曲を流した。

「ぷっ…あはははははは!!」

しばらく真剣な表情で見つめていたセンチさんだったが、耐え切れなかったのか突然大きな声で笑いだした。

『また聳え立つ塔の中へとぉ〜』

「やめて〜!それやめて〜!!」

センチさんは曲を流し続ける私を見ながら笑い続けている。


車内はセンチさんの笑い声で随分と賑やかになった。

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