15話 異世界建設
「一軒…建物一軒!?お家建ててそれをプレゼントしてくれるって…ええ!?」
ヘルは驚き戸惑いながら私に何度も確認をしている。
「ロイワさんそれホント!?マジで!?」
センチは尻尾と猫耳をピンと立てて、目を輝かせながら私を見ている。
「そう!この世界に好きな建物建てて、出来上がった建物をそのままプレゼントするって事だよ!」
私がこの場に居る魔族達に改めてプレゼントの内容を説明すると…
「やった!憧れの一軒家だ!!」
「ついに私のお店が持てるのねぇ!」
両手を上げて喜ぶセンチとマリに
「俺デカイ家!デカイ家に住みたい!!」
私に早速要望を伝えてくるカガ
「え、ええぇ…急に言われても…」
頭の耳が少し横に傾き、戸惑った表情を見せるヘル
そんな騒ぎの中アリアは…
「少し宜しいでしょうか?」
「何かな?」
「失礼を承知で申し上げます…何故、こんな空間を作ってまで我々を助けて下さるのですか?一体我々に何を求めているのですか…?」
どうやらアリアさんは私の過保護過ぎる援助に対して疑問を抱いているようだ。
まあ、初対面の相手に対するプレゼントとしては少し渡し過ぎたかな?とは思っているけども…
「う〜ん…何て言うか…発展の為かな?」
「発展…ですか?」
「うん、君達をこの場所に住まわせて技術が進化していく過程を………えーと……」
「……?どうしましたか?」
「ごめん、特に深く考えずに与えてた。
私はただみんなに平和に暮らして欲しいな〜って気持ちだけで作ったし、私以外の大精霊のみんなも軽い気持ちでこの世界を作るのを手伝ってくれたし……自分で世界を作るとか神みたいで楽しそうとか、暇だったから手伝うとか…」
「ロイワさん…」
「そんな私達が遊び半分で作ったような世界に、今を必死に生きる魔族達を何も考えずに招き入れちゃったんだよ…つまり、まあ…そう言う事。みんなごめんね」
説明をしている内に私は何だか申し訳無い気持ちになり、目の前に集まっている魔族達に謝った。
「ロイワさん…ありがとうございます。
そして、ロイワさんを悩ませるような発言をしてしまい誠に申し訳ございません…大精霊様のご厚意、喜んで受け取らせて頂きます」
アリアは優しい表情でお礼と謝罪をしながら私に頭を下げた。
「ロイワさんの気持ちも知らず慌ててしま…じゃないな。
この世界を作ってくれてありがとう、私は大精霊様方が作って下さったこの世界と共に生きて見せる。大精霊様のご厚意を絶対に無駄にはしない」
さっきまで気が動転していたヘルは真剣な表情で私に向き合い、この世界で生きると約束してくれた。
「ロイワさん、私もヘルと同じだよ。
この世界をアイツらの居る大陸より発展させて、誰よりも幸せになって見せるから!」
センチは笑顔を見せながら、この世界の発展に貢献すると言ってくれた。
「折角この世界にご招待された上にお店を下さるのよぉ?こんな好条件を無下にするなんて勿体無い真似はできないわぁ」
「この世界の事はまだよく分からないけど…俺はこの場所気に入ったぞ!早速此処にデカイ家建てようぜ!」
マリとカガもこの世界に住む事を決めてくれたようだ。
「みんなありがとう!」
私は改めてみんなにお礼を述べた。
「じゃあ…今から建物建ててくれる子を呼ぶね、おいで!!」
私が地面に向かって呼びかけると…
ボコッ!!
地面に開いた穴から大型犬サイズの鎧蟻、鎧蜘蛛、鎧蜂が複数飛び出して来た。
「なっ…デカい!!」
ヘルは頭の犬耳をピンと立てながら驚いた。
「この子達はね、頑丈な建物を直ぐに建ててくれる凄い虫なんだよ!今目の前にある立派な駅を建てるのを手伝ってくれたのもこの子達なんだよ!」
私は後ろにある大きな駅を指差しながら説明をした。
「この虫達はそんな凄い技術を…!」
この場に居る魔族達は皆感心しながら虫達を眺めている。
「そう!この子達に建てたい建物を説明すれば、虫達は直ぐに作業に取り掛かってくれるからね!」
私が説明をし終えると、早速センチが虫達に歩み寄り
「じゃあ…沢山のお店がくっついたような…そんな感じの建物建ててくれない?」
「お店…?」
「うん!服屋さんとかアクセサリー屋さんとか料理屋さんとか…沢山のお店が一つになった建物!そこに住めばいつでも買い物ができるし、毎日美味しい料理が食べれるし…こんな建物できるかな?」
ああ、デパートみたいな奴だね!
「やめろセンチ、そんな無茶苦茶な建物建てられる訳無いだろ…」
ヘルはセンチの肩を掴んで注意をするが…
「出来るよ!この駅の近くでいいかな?」
「なっ!?」
「うん!大丈夫だよ!」
目の前の虫達はセンチに向かって前脚で大きな丸を作ってOKのサインをすると、虫達の一部が群れから離れ、センチが所望する建物を建築できる場所に向かって歩き始めた。
「やったー!ロイワさんありがとう!」
センチは私にお礼を言うと、歩き去った虫達の後を追ってこの場から離れていった。
「信じられない…そんな無茶な要求まであっさりと…」
「はいはい!!次は俺!自由に暴れ回れる大きな建物が欲しい!!」
「私は洋服を売る為の施設が欲しいわぁ」
呆然とするヘルに目もくれずに、カガとマリは興奮しながら建てたい建物を虫達に伝えていた。
虫達は又丸サインを作ると、大群から離れた2組の虫達が別々の場所に向かって歩き出した。
「これどっちがどっちなのかしらぁ…まあいいわ、こっちに付いて行くわぁ」
「じゃあ俺はこっち!」
マリとカガは別々に歩き出した虫達の後を追ってこの場所から歩き去った。
みんな何故か虫達の後に付いて行くね…虫達が建物を建築する様子を見てみたいのかな?
「では私は…とりあえず普通の家をお願いできますか?」
アリアさんも虫達にお願いし、建設の為に動き出した虫達の後を付いて行った。
「さて後はヘルさんだけ…ん?」
ドドドドドドドド…
洞窟の出口方向から走って来た大きな電車百足が駅に到着した。
「待たせたな、プレゼントを受け取りに来たぞ」
「この大量に居る虫達は一体…」
「おお〜この虫達スゲェな、やたらデケェ上に立派な鎧着てやがる」
大きな荷物を背負ったダン、ブラッシュ、スミスが駅からゆっくり出て来た。
「あっ、3人共!プレゼントはね…」
私は3人にプレゼントについて説明をした。
「何っ!建物一軒プレゼントだと!?」
あっ…また揉め事の予感が…
と思っていたら
「ならこの世界の治安を守る為の大きな施設を作る」
「何っ!?それならアロー開発の為の施設を…!!」
「いよっしゃあ!!それじゃあ俺だけの新しい鍛冶場を作って貰うぞぉ!ロイワさん、ありがとな!!」
ダン、ブラッシュ、スミスの3人は急いで私と虫達に建物の要望を伝えると、3手に分かれて走り出した虫達と共にこの場から走り去ってしまった…
あのおじさん達足速っ!!




